目が覚めた。すると、
とても静かな夜だつた。
雪灯に目が覚めると言うが、それは本当にそうなのであろう。本当にそうなのだ。
自ら光を発せない、明日には溶けているやうな儚い雪が、光つている。
地に積もりて原となり、一斉に光源と化しているのだ。
だが一概に光源と云うものの、眩しい訳では無かつた。
その光は、月光の優しく冷たい光が更に冷たく優しい雪原にゆっくりと染み渡り、その美しさ故に震えた雪が、堪え切れずに漏らした白い溜め息のやうな光だつた。
穏やかに光つている。
この冷たい世界の季節の中で。
か細く光つているのだ。
この暗い世界の闇の渦の中で。
だから、良いんじゃないか。
暗闇の中での光はよく映える
だから私は目を覚ました。
世界に取り込まれた夢の中から
喧騒に満ち溢れた夢の中から、
静寂な優しい光に触れて開く。
疲れた目前に広がる白い雪灯、
大好きだよと言わせて下さい。
その光で目覚めた夜は幾分か、
穏やかな気持ちになれるから。
題材【雪の静寂】より
朝の冷たい空気で
ふと 目が覚める
粉雪が降っている
白い その息遣い
儚くて、只儚くて
今にも泣いてしまいそう
走馬灯の様に映る
君の 虹彩に走る
その淡いビデオは
君が 見たいのか
それとも過去のか
その黒さは拒絶の黒さで
私には言えない何かを
君は独りで抱えている
目から流れる雪解け水
の向こうに走るノイズ
苦しそうに悲しそうに
目の奥に何か走らせる
何かから追われる
常に 何か恐れる
目と同じノイズが
君の 体に見えて
君は急に目の前で
白いノイズとなり消えた
題材【君が見た夢】より
本日綺麗に咲きました
今日も沢山咲きました
その花々は色鮮やかに
爛漫に
今日という部屋を飾る
ここの
床中に咲いております
只見て見ぬふりをする
この花が今日限りでも
床の底を隠された私は
床から目を逸らすのだ
たとえ眩しいその花が
真つ黒な底床の薄い膜
でしか無かろうとも。
今日を生き延びること
今日に希望を持つこと
それがこの花々の意味
ピンクと黄色の花弁は
儚く淡いそよ風に乗り
夜の帳と共に降り行く
少しずつ散っていく。
明日の朝にはもう無い
今日綺麗に咲いた花々
明日咲くかは明日次第
もう種は各所に潜んで
貴方の来訪を待ち望む
さて、明日は何の花か
希望か絶望悲しみか。
明日どんな花が咲くか
種子を鷲掴み原に投げ
散る所を見る事はなく
私はすぐ眠りについた
題材【明日への光】より
①
何も分から無くなっていた。
僕が一体何をしたいのかも、
これからどうなるのかすら、
分からなくなって居たんだ。
心の中は、目の前に続く道は
色んな色を混ぜた黒によって
隙間なく厳重に塗りつぶされ
もう何も見えなくなっていた
苦しい辛い、寂しい悲しい、
暗いよ暗いよ暗いよ暗いの。
黒に先を見る全ての視界を、
未来への希望と言うものを、
奪われた私は一体何を見ろと
潰された私は一体何に縋れと
この私に生きろと云うのか?
生きる意味も無く生きろと?
叫ぶ私を見ている貴方の方が
本当は虚しいのではないのか
そう私は思うのでありますが
感情の無い貴方は無言でいる
非常に羨ましい限りなのです。
出来る物なら本当は私だって、
感情を無くしたいというのに。
こんな目に遭うくらいならば。
私は貴女方が羨ましいのですよ
どうせ死ぬ事が許されぬのなら
私は無感情で青く光っていたい
只何も感じずに浮かんでいたい
②
川縁に 幼子が座っていた
必死に 何か願う様である
綺麗なまだ若いその瞳は、
幼い故まだ濁ること無く。
ただ、 羨ましくなる程に
透明に 澄み切って見えた
思うに 一番残酷なことは
幼子が それを知らない事
ぼっとしている間にすぐ、
そんな時期は過ぎて行く。
過ぎた 時は戻らないのだ
だから それはとても貴重
たとえ 今だけだとしても
それが 貴重だからこそ、
君には今を生きて欲しい。
今は只その目に星を映し、
心から 願い事を沢山して
自身も 星になれば良いよ
一生の 汚れを溜め含めて
清潔な 物だけ集めたのだ
輝いた君の星光は綺麗に、
遠くまで届くのであろう。
どうか 出来るだけ長い間
輝いて 星になって欲しい
泣けるような星になって。
題材【星になる】より
※少しセンシティブな内容を含みます。
目の前に広がっている
青い空と青い海
私が大声でただ叫べば
霧のように消え
見上げる程大きな船は
私を避けて通る
不安定な海面に浮かび
ただ波に揺られ
太陽の陽を全身で浴び
昼暑く夜は寒い
私は太陽を恨んだのだ
生まれて初めて
ただ遠くに街が見える
攫われた私の街
遠くの鐘の音がやけに
澄んで聞こえる
私の絞るような叫びは
聞こえ無いのに
ああ、
私は帰れるのだろうか
それとも死ぬだろうか
私の街を攫って行った
この海に沈んで
題材【遠くの鐘の音】より315