ロスが大きかったんです。
私があれから離れた時間が、今でも自分の足に重い枷として縛り付いてる。もう、皆と同じ土俵には立てないんじゃないか。皆が翼を生やして次々と飛び立つ中、私は何時までも地上から羨ましそうに眺めるのだろうか。そんな考えが、何度も頭をよぎりましたね。
「ミカちゃんさあ、足手まといだし、もう辞めてくれないかね?」
放課後、仲間達がそう言っているのを聞いてしまってから、私は更に飛べなくなってしまいまった。何度も大会に出ているこの部活の中で、チームワークが大事なこの部活の中で、私が足手まといになっている事くらい分かっていたんです。それでも、私はバスケを辞めたくは無かった。
おかしいですよね。私はあの時、自分からバスケを辞めたのに、今度は仲間の足を引っ張ってまで辞めたくないだなんて。まあ、それには理由があるのであって。私、目標が出来たんです。
順を追って説明しましょうか。では、まず私がバスケを辞めた理由について。バスケを辞めたのは、別にバスケが嫌いになったからではありません。ただ...、トラウマで出来なくなって。中二の時、中三の先輩の、引退前の最後の試合があって。その試合の最中、私、足首を捻ってしまったんです。それで凄く痛かったんですけど、その時の私には、絶対に勝たせてあげたい大好きな先輩が居て。エースの私が欠けたら勝てないから、誰にも怪我した事を言わずに決勝に出たんです。だけど思うようにプレイ出来なくてどんどん点差が開いて行って、遂に仲間に気付かれてメンバーから外されたんです。本当に、私のせいだったんです。うちが負けたのは。私がメンバーから外され、ベンチに行った後、うちのチームは順調に点差を減らしていきました。ただ、最初に開いた点差が大き過ぎて。私のせいだったんです。私がエースとしての自分の実力を過信していて、仲間の事を信じていなかったから。足を引っ張って居たのは自分だったんです。私のせいで負けた。そう思った私は、仲間に顔を合わせずに、コーチの車で家に帰りました。余りにも無責任だというのは分かっていても、合わせる顔が無くて。そのまま、私は部活に行かなくなりました。それで更に仲間に会いづらくなって、不登校になり、引き篭るようになりました。母には心配を掛けたし、仲間にも気を使わせましたね。本当は私のせいで負けたと思っているでしょうに、私のせいじゃ無いよ、とメッセージカードを送ってくれる子も居ました。
すみません、諸事情により中断します。
題材【手放した瞬間】より
輝いていた ラメ付きシールの様に
否それなら 煌めいていた、だろう
どちらにしても
あの頃の私達は
今よりもずっと
煌めいていた。
落ちた椿を 戻すことは出来ない。
そんな事は 当然なのでせうけれど
知っていてなお
もう一度だけと
咲かせたかつた
あの頃の落椿。
一面銀世界 塗りつぶされた地面に
ぼとり、と 落ちた紅い椿の一輪は
無垢な白さの中
とても鮮やかに
あの頃の記憶を
際立たせていた
題材【紅の記憶】より
①
目の前の 高い高い壁に
割れた夢の 断片が散るので
それを拾つた 私の指先を切つた
行き過ぎた夢は 自分の未来を滅ぼす
小さく開いた傷口 滴つた血が壁を塗つて
透明だつた壁の先が まつたく見えなくなつた
泣きながら断片達を 指を切りながら集めても
細かく砕けた夢が 戻る兆しは見え無くて
私の後ろからは 格子戸が迫つて来る
こんな夢など 目指さなければ...
後悔しても 今更手遅れだ
あの頃の 輝きは無い
ーーー
赤く染つた高い壁に 赤く染まつた目が映つた
格子戸の向こうには 夢に笑つている私が居る
もう過去だよ
②
頬を伝つた一筋の宝石
泣く君はとても綺麗で
笑う君は、妖精の様で
まるで夢の住人だつた
...夢?
懐かしい思いが湧いた
何処かで見た様な場面
この瞬間を、夢で見た
何度目だろうかこれは
...またか
よく正夢を見るものだ
私は夢の中と同じ様に
指で君の宝石を掬つた
妖精は夢よりも輝いて
この時を夢で見たのでせう
この場面を私は望んでいた
懐かしさで涙が出そうです
題材【夢の断片】より
一歩踏み出そうとしたけれど
目の前の階段の余りの暗さに
私は口を閉ぢる
目を凝らして先を見ようとも
漂ふ空気の余りの不透明さに
私は目を閉ぢる
平衡感覚さへも失つた
光を捕えないこの目で
貴方は進めと言ふのか...
一歩間違えれば落ちる
この迷路の様な未来に
何を求めろと言ふのか...
もう止まつても良いですか?
題材【見えない未来へ】より
一陣の強い風が吹き抜け、私の髪を洗つた。
前から枯葉が飛んで来て、私の頬を切つた。
ーこの風は、何処から来たのか。ー
涼風を含んだ髪一房掬ひ、そつと口付ける。
徐に風上を向いて見つめ、遠地の彼を思ふ。
ーこの風は、何を乗せて来たか。ー
どうか笑わないで欲しい、考えてしまう事。
この風の空気や酸素窒素、更に粒子達まで。
ーこの風は、彼にも吹いたのか。ー
どうしても願つてしまう、彼と私の繋がり。
私に吹いたのと同じ風が、彼にも吹く事を。
ーこの風よ、ずつと吹いて行け。ー
降って来た紅葉の欠片に、沢山の想ひ込めて
私は吹き抜ける風に乗せて飛ばした。
題材【吹き抜ける風】より