今、推し活が流行っているらしい。もちろん、私にも推しがいる。
私の推しは「太陽」だ。
そう告げると、いつも怪訝な顔をされる。
「でもね、太陽が存在しなければ、私たちは存在しない。そう考えると、とても尊い存在じゃない?」
前にサチにこう力説したら、 余計に困惑されたので、それ以来言葉で説明することはやめた。
お気に入りの太陽モチーフのキーホルダーを見せると、大抵は「ああ、そういう感じね」と納得してくれる。
朝、目が覚めてカーテンを開けたとき、空には雲一つなく、眩しすぎるくらいに太陽がさんさんと降り注いでくれたら、それだけでもうその日は一日中幸せな気持ちでいられる。
私はこれからも「太陽」が最推しだ。
「これで、やっと自由の身ね」
裁判所の扉を開け放つと、女は空を仰いで大きく伸びをした。三か月にわたる離婚調停の末、今日をもって晴れて独身の身となれたのだ。もう夫の面倒をみなくて済むと思うと、開放感で胸がいっぱいになった。
その瞬間、裁判所の隣にある教会の鐘が鳴った。鐘の音は、まるで女の新しい人生の始まりを祝福するかのように、高らかに鳴り響いたのだった。
「ねえ、明日、もし晴れたらアイス奢ってあげる!だから、もし雨が降ったら私にアイスを奢ってよ~!」
突然、彼女が笑いながら謎の提案を持ち掛けてくる。
「お前、明日雨が降るってわかってて言ってるだろ」
「え、何のこと?」
彼女は、俺には目を合わせず、そんなの知らないわ、とでも言いたげな表情をしている。あくまでも白を切るつもりらしい。
「・・・・・・まあ、いいけど」
俺がこの賭けに勝つ確率は、さっきみた天気予報によると、おそらく0%だ。それでも、彼女の笑顔に逆らうことはできなかった。
「約束だからね!」と彼女は嬉しそうに笑った。
翌日、しとしとと降りしきる雨の中、俺たちは彼女のお気に入りのアイス屋へ向かった。
道すがら、「雨の日は、トッピングが無料なの」と彼女が説明してくれた。だから、雨の日にわざわざアイスを食べたかったのか。とようやく合点がいった。
「おいしい!ありがとうね。」
満面の笑みを浮かべながら、トッピングを載せたアイスを食べる彼女を見て、案外悪くない取引だったかもなと思った。
運命だとか
赤い糸だとか
そんなのは
どうだっていい
俺は
君が好きだから
一緒にいたい
ただ
それだけなんだ
もう
僕の未来には
君はいなくなってしまった
でも
会いたいんだ
せめて
夢の中でいいから
会いたいよ