10年くらい前だったと思う。
高校からの友達で、大恋愛の末に結婚したYちゃんから、「仕事やめようかな…って、愚痴ったらダンナに髪の毛掴まれて台所まで引きずられて、『俺の稼ぎを当てにする気か!』って、振り回された」って、打ち明けられた。
二人に子供は居なくて、いつも恋人同士みたいだったのに、仕事がうまく行かなくなると暴言吐かれる事もたびたびあるみたいで、男って力の使い方を間違えると厄介だな…と、思った。
もっと厄介なのは、そんな男でもYちゃんは、旦那さんのことが大好き。だからわたしは、フンフンと話しを聴いてあげるだけ。大好きなはずなのに、Yちゃんには別のパートナーも居た。「身体の関係は?あるの?」と聞くと、「…ないょ」と、言ってたけど、あれはある、間違いない。
バランス取ってるんだろうなと思う。
高卒からずっと金融機関に務めていて、社内恋愛で大恋愛で年に何回も夫婦旅行しているのに、夫婦関係チグハグで、Yちゃんは窓口に来るお客さんにすぐ好かれて、普通は取れないような野球観戦チケットや、一見さんお断りの高級寿司店などに連れていってもらってる。本当はお客さんとのお付き合いは、会社外ではしてはいけないとの事らしいけどモテるんだから仕方ない。聞けば、年齢も風体も様々な男ども。
あれやこれやの恋愛沙汰に巻き込まれたりして、いつもメールやLINEが来る。特別に美人でもなく、目を引くほど可愛いって訳でもない。本人はあっけらかんとしてる。
『匂い』、かな。と思う。
高校の頃からそうだった、野良犬みたいな男に懐かれて、『何かあったら君を守る』って言ってる男が、多分少なくとも二人は居る。Yちゃんはどうでもいいって言ってるけど、それって凄い事だと思う。
わたしとYちゃんは真逆だから比べようがない。同じところがひとつもない、去年、東京に帰って会った時に、別れ際、Yちゃんは泣いた。あぁもぉ〜、こういう所が可愛いんだょなと思って、Yちゃんを抱きしめた。
何かあったら、いつもわたしに連絡くれる、高校の時もそうだった。Yちゃんから、東京駅で迷ったって電話来て慌てて探しに行ったっけ。
I 🖤 東京
先日から1度目の壁の塗装が始まっている。職人さんは1人で、30代中頃かな。無愛想でもなく、愛想良しでもなく、ちょうどいい。言葉が多すぎる人は不安にさせる。言葉が少なすぎる人は苛つかせる。この人は、松田龍平に似てる、なんだかウサギでも飼ってそう…。
男性が苦手というより、限りなく恐怖症に近い。ダメな人とは一切だめ。嫌いじゃないのに、緊張し過ぎてガクガクしてくる。震えるというか…。以前、四柱推命の先生にもそんなような事を言われた。たまに初対面なのに、よく知らないのに、近寄られると背を向けたくなる感じの男性が居る。それが辛いかな。
居ても立っても居られないくらいに、ゾワゾワしてくる。奥歯をキュッと噛んで我慢する時もある。そうしたくてそうしてるのではなくて、身体が硬直してどうしようもなくなってしまう。話せなくなってしまって、相手を困らせてしまう事もある。
若い頃は、『俺に気でもあるのか、何…この女…』と、かなり変な女と思われてたと思う。そう思うと余計に変になった。
相手の人間性がどうのこうのでは全くないので、そういう時は相手に申し訳なく思う。結局、カウンセリング受けても完全には治らなかったから、きっとわたしの血の中で何か避けられないものがあるんだろうと思う。
ま、とにかく、嫌な感じがする人が壁を塗り塗りしてるのではなくて、心底ホッとしてる。次は古い雨樋をワッと外されて、屋根の修繕に入ってから雨樋を新しくするんだろうけど、たくさん男性が来るとそれはそれで逃げたくなる。
もう、松田龍平似のウサギを飼ってそうなこの人が全部1人でやってくれれば安心なのに。。
でも雨が降ると、『今日は来ないな、』と思ってなんだか安心してしまう、なんだかそれはそれで申し訳ない。。
息子夫婦、玄米30キロ欲しいというので持たせた。
昨夜は、嫁がカレーを食べたいと言うので、いつもどおり肉の代わりに厚揚げを入れて、ルーは米粉を使った。食べ慣れないカレーだからどうかな、と思ったけれど、ごはんをモリモリ食べてた。嫁はマリネを作ってくれた。
たぶん、息子と自分の給料だけでは厳しいんだと思う。いろいろ計画しているみたいだから。父子家庭で育ったからなのか、考え方はしっかりしてる。
二人が帰るときに、「いつでも遊びにおいで」と言うと、息子が「ぉぅ」と応えた。お尻をポンと叩くと、「んぁ、やめて…」と嫌がられた。工夫して考えて暮らしてるようだから、きっと、良いはんぶんこになれる。
『いつでも遊びにおいで』
わたしたち、そう言える立場になれた。
だけど、帰っておいでじゃない、『遊びにおいで』だった。いつかはここも無くなる。帰る場所をふたりで、これから一生懸命作るだろう。
夫は、今も息子と屋根に上がって、ごちゃごちゃ喋ってる。嫁は買い物に行くと行って出かけた。もおー業者が直すんだから、直さなくてもいいんだよって言ってるのに、息子にどこをどう直すかを説明してる。
「足場があるうちに掃除したいから、」
どこの掃除よ……いいんだって屋根も雨樋も壁も全部工務店に依頼してるんだから、どこを掃除するって、いうんだろ…しかも、息子と。
怪我したらどうすんだか、ビーサンで。
わたしだけがヤキモキしてて、落ち着かない。なんで夫はじっとしてられないんだろぅ。
見たら、外側から2階の窓の枠を掃除したりテラスの上を拭いたりしてた。そんなのいいって……危ないから……普段やらないことしないでって言ってるのに、「普通だとできないから、足場があるうちにやりたい」
足場があったって、転げたら終わり。
もぉ、じゅうぶんやりたいことやらせてあげてるのに。
「屋根瓦がズレてたから、直してくる」
………いいって、もぉ、工務店にお願いしてるからそんなのやらなくて、いいんだって……と言うか、やらないでって。
「ぃゃ、少しでも職人の手間が省けた方がいいと思ってさ、」
…なんでゃ。
屋根がゴトンゴトン音すると、気が気じゃない。これ…、東京だったらご近所さんに嫌がられるょ。。
暇さえあれば屋根に上がって…。
大人しく大地の草取りか、盆栽いじりでもしてて欲しい。
昨日、早めに帰宅した夫は、この時を待ってましたとばかりに足場をするすると上がり屋根からの景色をスマホに収めてた。前職が現場職人だったからなのか、足場が立ち上がると、そわそわうずうずしているなーーって、感じがしてた。
で、昨日、夫が玄関からなかなか上がって来ないなーーと思ってたら、屋根がゴトゴト音がして、たまらず外へ出て見上げると、ビーサンの夫が屋根をあちこち歩き回ってた。
スニーカーよりビーサンの方が、屋根を歩き易いらしい。
大屋根からの夕焼けを撮ったら下りると言ってたのに、なかなか下りて来ず、わたしもサンダルでアルミの簡易階段を恐る恐る上がると、
「靴のほうがいいよ」と言われて、また恐る恐る下りて、履き替えて階段上がって、足場の手すりに捕まって、下見ないようにして、こわごわ自分ちの屋根を見た。
この景色を見たい!となったら多少の危険があるもの。
夫は、屋根のてっぺんに腰掛けてた。それが、恐ろしくて、早くこっちに来てほしかった。
「ねぇー!危ないって!ねー!」
声掛けるのも恐ろしい。振り向いてひっくり返られたら大変…
ぜんぜん言うことを聞かない夫を残して、すごすごと階段を下りた。
夫と同じ位置に立ち、一緒の景色を見ようとするには勇気が要る。しかも目の高さも違うし、右側か左側か、でも違う。10cm違えば風も違う。
わたしには、大屋根の上を歩く勇気はないから、いつもの夕焼けをちょっと違う角度から見た。ほぼ同じで良しとした。
高いところは苦手。
今、思い出すだけでもお股がヒュンヒュンする。