bye bye… 後日書きます
君と見た景色 後日書きます
手を繋いで 後日書きます
前回書けなかったので2日分投稿です
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大好き
むぎゅーーーっと、大きなクマのぬいぐるみを抱きしめる。ふわふわもふもふのボディは触り心地が良く、私のことを全部受け止めてくれるようで、ずっと触っていたくなる。
このぬいぐるみ、クマ太郎とはもう長い付き合いになる。私の友達だ。ふわふわもふもふ度は買った当初よりは下がってきてしまったし、一部へたってきているけれど、それさえも愛おしくて、大好きだ。
「クマ太郎、大好きだよー」
クマ太郎のクリクリの円らな瞳を見つめて、声をかける。ぬいぐるみのクマ太郎は声を出して返事をしてくれることはないけれど、その表情が、目のキラメキが、同じく「大好き」って言ってくれてるような気がして。もっともっと大好きな気持ちが込み上げて、またむぎゅーーーっとする。
私の喜びも悲しみも受け止めてくれる大事な友達。これからも大好きだよ。
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どこ?
今は、良い時代になった。極度の方向音痴の私でも、スマホのマップアプリがあれば、目的地にたどり着けるようになった。あれのありがたいところは、自分の現在地を地図上に丸い点で表してくれるところや、目的地までの経路を線で示してくれるところ。一度経路検索してしまえば、私は、その線の上を点が通るように道をたどれば、目的地に着くのだ。ありがたいことこの上ない。
そんな時代でも、まだ迷う場所がある。建物の中である。
大きなショッピングモールなんて、方向音痴の私にしてみれば迷路だ。館内地図を見つけたとしても、常に私の現在地を示して、目的地までの経路を教えてくれるわけではない。
「え、今私どこ?」「あの店に行くにはどこを通ればいいの?」「え?別の館?どこから行けんの?」
と、こんな感じに「どこ?」のオンパレード。
一度迷い出すと、かなり苦労する。
昔から方向音痴で苦労してきた私としては、どこでもドアがある世界が理想だ。しかし、それはかなり未来にならないとできそうもないので、せめて、建物の中でも迷わなくて済むナビゲーションアプリがほしい。どうにかならないものだろうか。
私は捨て子だった。雪の日の朝、道端で発見された。両親は分からなかった。
私は、施設で育った。施設の大人は優しかったけれど、家族とは違う気がした。家族を知らない私が言うのはおかしいかもしれないけれど。
私は、物語に出てくる『普通の家族』に憧れた。親がいて、子がいて、皆お互いを愛している。そんな『普通』に憧れた。
でも、私にとってその『普通』はひどく遠い存在だった。だって私は『親の居ない可哀想な子』なのだ。どんなに周りの大人が私を愛してくれたとしても、それは変わらないのだ。
私にとって、『普通』は叶わぬ夢だった。それが悔しくて、何度も泣いた。誰かに憐れまれるのが嫌なんじゃない。『普通じゃない』ことを突きつけられるのが苦しくて、悔しい。
叶わぬ夢を追って泣いていた私に転機が訪れたのは、施設を出て、働き始めた頃。
同期の彼は、私のことが好きだと言った。
私は『普通じゃない』私のどこがいいのか分からなくて、ひどく戸惑った。何度も私に根気強く好意を伝えてくる彼に、私は素直にその気持ちを話した。
そうしたら彼は言った。
「普通じゃなくていいよ。そんな君が俺は好きだよ」
普通じゃなくていい???そんな私が好き???私は余計に混乱した。
『普通』こそ、素晴らしいのだ。私は『普通』になって『普通の家族』の一員になりたかったのだ。
反論する私に、彼はまた言った。
「普通じゃなくても、普通の家族を作れるかもしれないよ。そりゃ、普通よりは苦労するかもしれないけど、望めばきっとできるよ。君が許してくれるなら、僕は一緒に普通の家族を作りたいと思ってる」
彼は微笑んでいたけれど、その眼差しは真剣だった。
私はやがて、彼の言葉を信じてみたくなって、彼とお付き合いを始めた。
『普通じゃない』私は彼を困らせることも多かったけれど、2人の日々は幸せだった。彼となら私も『普通の家族』の一員になれるかもしれないと、本気で思えるようになった。
かつて叶わぬ夢と諦めたものは、私の生きる先にあるかもしれない。そう信じられるようになった私の心は、希望で満ちていた。
泣いていた私は、もうどこにもいなかった。