ミキミヤ

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12/17/2024, 3:48:41 AM

風邪に罹った。頭も痛いし喉も痛い、身体はだるくて重い。気持ちも重く沈む。なんだかすごく心細くなる。

こんなとき、家族と一緒に住んでてよかったって心から思う。もちろんそれぞれ仕事や学校があるから、ずっと一緒にいてくれるわけじゃない。それでも、『頼れる相手がいる』という事実が、私の不安を和らげてくれる。今はスマホで気軽にメッセージを飛ばせるから、家族がみんな出かけて私だけ家にいるってときでも、耐えきれず出てきた弱音を聞いて貰える。
私は独りじゃないんだなあって、実感する。

この実感をずっと忘れずにいたい。
他の家族に何かあったとき、私もなるべく優しくありたい。独りじゃないって思わせてくれる人達を、大事にしたい。

そんなふうに考える、布団の中。

12/16/2024, 8:15:21 AM

あの人は、雪が好きだと言った。
降り積もっていくさまや、降り止んで日が出た時にその光を反射して輝くさまが、美しくて好きなのだ、と。
私は雪は嫌いだ。だって寒いし歩きづらい。交通機関に影響が出ることもある。上京してきて、めったに雪が降らないのが、とてもいいなあと思ったくらいだ。

朝、外へ出ると、シンと冷たい空気。天気予報には雪マークがついていた。今日は雪が降るのだ。それも、積もると予想されていた。
雪が嫌いな私は、ただ憂うつな気分になるだけのはずだったのに、そうはならなかった。雪が好きだと語ったあの人の横顔が、しんしんと静かに降り積もる雪に似たあの静かな微笑みが、何故か思い出されて。
あの人が語った雪の美しさを、久しぶりに見てみたい、なんて、思ってしまった。
雪嫌いのはずなのに、なんで。自分でも自分の心がわからなかった。

職場に着いて、窓の外を眺めながら、あの白い一片が降りてくるのを待ちわびる。
雪嫌いの私は、何故か今、雪を待っていた。

12/15/2024, 9:22:41 AM

イルミネーション 後日書きます

12/14/2024, 10:07:23 AM

2年前に夫が亡くなって、3人家族だった私達は、娘と私の2人きりの家族になった。
はじめは私も娘も泣いてばかりだった。心の中で、夫の存在が大きすぎて、喪ってできた大きな穴を埋められずに、ただ泣いていた。だけど、しばらくしたら、この穴を無理に埋める必要はないのだと私は気づいた。ぽっかり空いた穴も抱えて、進んでもいいのだと思った。だけど、まだ7歳だった娘は、なかなかそれを受け入れられなかったようで、穴を抱えたまま日常に戻ろうとする私に、激しく反発した。何度も泣き叫んで、抵抗していた。私には娘の心を無理に変える力も権利もないから、ただ受け止めて、抱きしめて、背中を撫でることしかできなかった。
やがて娘は夫の死を受け入れて、その傷を抱えて立ち上がることができるようになった。

そこからが、本当の戦いだった。私の手1つで娘を育て、ひとり立ちさせなければいけない。なるべく娘と過ごせるように、がむしゃらに働いて定時で帰って、晩ご飯を作って、一緒に食べて、その日学校で起こったことを聞いて。お風呂を沸かして、次の日のお弁当を用意して。翌朝は朝ご飯を用意して、先に出かけた。娘のためにできることは何でもやった。周りには、全部抱え過ぎだと言われた。そんなに頑張らなくてもいい、他を頼れと言われた。でも、私は妥協したくなかった。娘に寂しい思いはさせたくなかったし、娘のことで少しでも手を抜いて、娘自身にそれを気づかれたらと思うと怖かった。私は娘に愛を注ぐ方法は、これしか思いつかなかった。
娘が中学生になった頃に「晩ご飯作るの、当番制にしない?私もやりたい」と言ってきたときは、すごく驚いた。試しに作ってもらったら、意外としっかりした手つきで普通に美味しいご飯を作ってくれて、それにも驚いた。
私が「すごいね」と言ったら、娘は「いつもお母さんが作るの見てたから。お母さんのおかげだよ」と言った。私はすこし泣きそうになった。私の背中を見てくれていたことが嬉しかった。
晩ご飯の分担をきっかけに、娘は家事の中で自分の力でできそうなものは「やりたい」と言ってくれるようになった。そのうち全て「やりたい」と言いかねない様子だったので、話し合って、きちんと分担することになった。任せた家事はどれも普通以上にできていて、娘の成長を感じた。

時は経ち、娘はもうすぐ社会人になる。就職祝いに何が欲しいか訊けば、「お母さんの時間、1日ちょうだい」と言われて、休日に1日一緒に過ごすことになった。
約束の日、娘はレンタカーを借りてきて、私をドライブに連れ出した。大学に入ったころに免許を取っていたのは知っていたが、思っていたより安定感のある運転だった。運転する横顔はすっかり大人になっているように見えた。
そうして連れて行ってくれたのは、私が密かに行きたかったカフェだった。テレビを見ながら私が呟いた言葉を覚えていたらしい。他にも、最近できて気になっていたショッピングモールにも連れて行ってくれた。

「何だか私ばっかりいい思いしてる気がするけど。あなたの就職祝いのはずだったのに」

私が言うと、娘は微笑んで、こう答えた。

「お母さんいつも、私が欲しいとかやりたいとか言ったこと、全部覚えてて、できる限り叶えてくれたじゃない。そういうの、嬉しかったから、お母さんにも返したいなって思ってたの。ちょっとした親孝行、やってみたかったんだよ。それが今叶ってるから、充分就職祝いになってるのよ」

今まで、娘に精いっぱいの愛を注いできた。返ってくるものになど期待しない、私がただ注ぐだけでいいと思ってやってきた。
でも、娘は私の注いだ愛をちゃんと受け止めてくれていて、同じように私に愛を注いで返してくれている。
その循環に、胸が熱くなった。愛を注がせてくれて、愛を返してくれる娘の存在は、奇跡的だと思った。

「ありがとう、大好きよ」

自然と言葉が溢れていた。

12/13/2024, 8:32:03 AM

「えーっ、そうなんだ」
「そうそう。それでさ、〇〇くんが……」
「なにそれやばくない!?」
「ヤバいでしょ!!」

日常の出来事や推しの話、楽しく会話してるけど、お互いに深いところには踏み入らない。踏み込んではいけないラインを、何となく察している。
この人のことは友人だと思っているけれど、これからどんなに長く付き合っても親友にはならないと思う。
きっと、2人同時に命の危機に遭ったら、自分の命を優先するんだろうな、と思っている。きっとこの人も同じ選択をするとも思うし、それで心が痛むこともない。表面的な友人関係なんて、そんなものだ。
心と心で触れ合って、もっと深いところまでお互いを知り合って、何かあったとき相手の命を優先できるような『親友』を作るには、私はもう臆病になりすぎてしまった。
そのことに寂しさを感じながらも、私は今日もラインを越えない安全圏で『友人』をする。

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