「イルミネーション」
イルミネーションといえば、カップルの祭典である。暗い夜に色とりどりのライトが輝いて、ロマンチックな雰囲気の中をたくさんの恋人たちが歩いていく。手を繋いで、幸せそうに肩を寄せあって、にこにことしゃべりながら歩いていく。
いいな、私にも一緒にイルミネーションに行けるような恋人がいればいいのに。でも残念なことに、私には恋人のこの字も無い。
しょうがないから、同じく恋人がいない友達3人と一緒にイルミネーションに行くことにした。
友達同士きゃあきゃあ騒いで、4人でハートの撮影スポットで写真を撮ったり、のびーるチーズがかかったおいもを食べてどこまでのびるか試してみたり。ロマンチックの欠けらも無いけど、これはこれですっごく楽しい。
アイドル好きな友達が推しのアクスタを持ってきていたので、はやしたてながらデートっぽい写真を撮ったりもした。
恋愛が全てじゃない。友達とこうして過ごすのも、きっと大切な時間だから。
子猫はふわふわしててかわいくて好き
元気いっぱいで弾かれたボールのように部屋を駆け回り、こてんと寝てしまう。
エネルギーに溢れた子猫はとってもかわいい。
クリスマスには家族でパーティーをする。必ずケーキとチキンとミートソーススパゲティを食べる。それから家族でプレゼントを送り合う。前から欲しいと言っていたものを送ったり、サプライズにしたり。贈り物は選ぶのも貰うのも楽しい。
私にとってクリスマスとは、美味しくて楽しい家族行事なのだ。
「命が燃え尽きるまで」
俺はこの国の姫君を守る騎士だ。自分の仕事に誇りを持ち、命に代えても姫をお守りすることを誓っている。
姫は少々おてんばだが、優しく美しい素晴らしいお方だ。俺はそんな姫を守れることが心の底から嬉しい。
危険な任務で大怪我をした時、姫はわざわざお見舞いに来てくださった。整った顔を心配そうに歪めていて、姫にそんな顔をさせてしまったのがふがいなかった。本当は体中に激痛が走っていたが、俺は強がって笑って見せた。
「心配しないでください、姫。姫を守れて良かったです」
「でも、酷い怪我だわ。もうこんな無茶なことしないでよ」
「気をつけますが、私は姫を守ることが仕事なのです。自分の命を気にしていたら、姫の命を守ることなどできません」
俺がそう告げると、姫は一瞬ひどく悲しそうな顔をした。姫は優しい。俺の命も大切にしてくれる。でも、そんな人だから俺は姫になら命をかけてもいいと思えるんだ。
俺はこの命が燃え尽きるまで、俺の全てを姫に捧げよう。姫が笑っていることが俺の幸せなのだから。
だがこの忙しくも幸せな日々は、長くは続かなかった。小さなこの国は大臣の裏切りにあい、今にも滅びようとしていた。城は占拠された。王と王妃は暗殺された。俺は姫だけは必ずお守りしようとこっそりと城から連れ出した。敵にバレないように地味な服を身にまとった姫は青い顔をしていたが、気丈に歩いていた。
もう少しで城下町を出るという時、俺と姫は敵に囲まれてしまった。その数は数十人。普通に戦えばまず勝ち目は無い。俺も姫も殺されてしまうだろう。なぜバレてしまったのか。もっと気をつけていればバレることは無かったかもしれない。後悔がおそってくるが、俺は唇を強くかみしめて気持ちを切り替える。大切なのは姫をお守りすること。姫に生きていてもらうこと。
「姫、私が奴らをひきつけます。その隙にどうかお逃げ下さい」
そういいながら剣を構える。死んでも姫を守る。それが俺の使命なのだ。
「だめよ……そんなことしたらいくら貴方でも殺されるわ!」
今にも涙がこぼれおちそうに瞳をふるわせる姫に、俺は安心させるように微笑んだ。
「逃げてください、姫。俺はこの命にかえても姫をお守りしたいんです。逃げて、生き延びて、そして笑顔で暮らしてください」
姫への言葉を敵は嘲り笑う。
「ハハハ、そんなことさせないぜ。お前もお姫さまも、まとめて地獄に送ってやるよ!」
「地獄に行くのは貴様らだ」
俺は目線を姫から敵に移した。
「お願いです姫、逃げてください。俺がその道を開きます!」
言うや敵に斬りかかった。斬れると思った時、敵が違う剣によって斬られて倒れる。
俺は信じられない気持ちで剣の持ち主を見た。
「ひ、姫……?」
剣を持っていたのは姫だった。おてんば姫で時々剣の練習をしていることは知っていたが、まさかこんな危険な時に剣を握るだなんて。俺は構わず姫を逃がそうとしたが、出来なかった。俺を真っ直ぐに見つめる姫の瞳は涙に濡れていたが、絶対に一人では逃げないという強い意志が宿っていたのだ。
「命をかけて守るだなんて言わないで。貴方が私の命を大切に思ってくれるように、私も貴方の命を大切に思っているの。二人で生きて逃げ延びるのよ」
そんな夢みたいなこと、出来るのだろうか。だが隙なく剣を構える姫を見ていると、勇気が湧いてきてできる気がしてきた。
「ええ、きっと二人で生き延びましょう」
俺は覚悟を決めて、姫の前で守る姿勢から姫と背中合わせに位置を変えた。
「敵は20人程。腕がたつ者もいるようですが、殆どは新人レベルです。冷静でいれば勝てない相手ではありません」
「了解。さあ、行くわよ!」
姫の号令で敵に向かって駆け出した。また姫と共に暮らせる日を夢みて。
「貝殻」
マコは海のある町に住む小学四年生の女の子です。マコは海が大好きで、毎日海岸を散歩しています。
ある日、いつものように散歩していると、みたことのないきれいな色をした貝殻を見つけました。マコが知っているより一回り大きなホタテの貝殻です。一見真っ白に見えますが、日にあたって虹色に輝いていました。マコは貝殻の輝きに目を奪われて、砂浜から貝殻を拾い上げました。貝殻はずっしりと重く、マコはとり落としそうになって慌てて両手で持ちました。近くで見てみるとますますきれいに見えます。少し角度を変えると色が変わるのが楽しくて、マコは貝殻をくるくる回して眺めました。しばらくそうしていると、貝殻の中から小さな声が聞こえました。
「ううう、もうまわさないでぇ……」
マコは悲鳴をあげました。貝殻がぱかりと開いて、なかから小さな小さな女の子が涙を流しながら姿を現したのです。
「あ、あなたはだあれ?どうしてそんなに小さいの?」
尋ねてみると、女の子はべそをかきながら答えました。
「私は海の国から来たの。陸に行ってみたくて泳いでいたら、迷ってしまったの。おうちに帰りたいよぅ……」
「あなたのおうちはどこにあるの?」
「海の底にあるわ」
「うーん、それだけだとわからないな。とりあえず、わたしの家に来ない?わたしのお父さんは漁師なの。何か知ってるかもしれないよ」
こうしてマコは小さな女の子を家に連れていくことにしました。
お母さんは手のひらに乗るくらい小さな女の子を見てびっくりしましたが、事情を話すと優しい手つきで女の子をなでました。
「大丈夫よ。きっと家に戻してあげるからね」
お父さんは夜にならないと帰ってこないので、それまで待たなくてはいけません。マコは女の子の不安を紛らわすために、女の子とおしゃべりすることにしました。
「おなまえはなんていうの?」
「名前はないわ。海では名前を呼ばないの」
「じゃあわたしがつけてあげる。えーっと、貝殻姫とかどうかな?」
まるでおやゆびひめみたいだと思って言うと、女の子は初めてにっこり笑いました。
「かわいい名前。私、名前って初めてよ」
それからマコと貝殻姫はいろんな話をしました。マコが陸の話をして、貝殻姫が海の話をしました。貝殻姫はマコの話を聞いて喜んでくれたし、貝殻姫の話は聞いたことないような話ばかりで楽しいものでした。おしゃべりははずみ、外はあっという間に暗くなって、お父さんが帰ってくる時間になりました。
お父さんは貝殻姫の事を聞くと冷静にうなずきました。
「なるほど、海の底から来たんだね。僕はほたてが多くいるところを知っているよ。そこでかえせばいいのかな」
貝殻姫はこくんとうなずきました。お父さんは、明日漁をするついでに貝殻姫を送ってくれるといいます。拍子抜けするほど簡単に、貝殻姫は家に帰れることになりました。すっかり友達になったマコと貝殻姫は、ハイタッチして喜びました。
「よかった、帰れるんだね」
マコが言うと、貝殻姫は嬉しそうに笑いました。その笑顔を見た時、一瞬マコの胸がずきんと痛みました。せっかく友達になれたのに、貝殻姫とお別れしないといけないのです。
時間はすぐにたち、貝殻姫が出発する時間になりました。見送りに来たマコは、貝殻姫にビーズで作ったネックレスを渡しました。
「海に行っても、私たちは友達だよ。忘れないでね」
貝殻姫はおどろいたようにネックレスを見て、そして大切に握りしめました。
「こんなのもらったの、初めて。海にはこんなにきれいなものはないわ。大切にする」
貝殻姫はマコの人差し指をそっと握りました。
「ありがとう、マコ。私の初めてのおともだち。きっとわすれないわ」
そうして貝殻姫は帰っていきました。それを見送るマコの指には、貝殻姫とおそろいのビーズの指輪がはまっていました。マコはきっと、この不思議な出会いのことを忘れることはないでしょう。