桜井呪理

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1/20/2026, 3:50:01 PM

「海の底」



あなたが悪いんだもん

あなたが他の女の子とキスしたのがいけないんだもん

あたしのこと愛してるんでしょ

あたしが一番なんでしょ

だってみーくんそう言ったもんね

君が一番好きだって

みーくんが言ったんだもんね

はぁ?ホストだったから?

知らないよそんなの、あたし言質取るって言ったもん

みーくん笑っていったもんね

嘘じゃないよって

だいじょーぶ!

あたしみーくん嫌いになったりしないから

あたし今日ね、いいもの持ってきたの

じゃーん!人魚になれるお薬!

これを二人で飲んで海に入るとね、

運命の糸で結ばれた二人の人魚になれるんだって

いいでしょ!

俺はそんなの飲んでない?

みーくん気づかないの?

ほんっとに鈍いねぇ

さっきカフェで飲んだジュース

ちょっと苦かったでしょ

え?その瓶のラベルに何か書いてある?

それはただの猛毒だ?

そんなわけないじゃん!

ほら、私たちこれでツインレイになれるんだよ?

おこんないでってばぁ

ね。

一緒に逝こう

みーくんの腕を掴む

私たちは、崖から飛び降りた



体に力が入らない

沈む

苦しい

でも、そんなのちっとも気になんないの

やっと結ばれるね、みーくん

体が海の底にたどり着く

これでもう大丈夫

私は意識を手放した




1/19/2026, 3:25:34 PM

「君にあいたくて」

どうして死んじゃったの。

来月出るパフェの新作、

一緒に食べに行こうって話してたのに。

なんでもう会えないの。

お話ししたいことがいっぱいあったのに。

一緒にゲームセンターに行こうって言ったのに。

誕生日プレゼントを買ってあったのに。

どうして私を庇ったの。

あなたといる世界が好きだったのに。

一緒じゃないならここにもいたくないのに。

どうしてあの日の記憶が頭から消えないの。

あの日の血の温もりの気持ち悪さも

少しずつ浅くなる息遣いを

冷たくなったあなたの体も

いっそ忘れてしまえたら楽だったのに。

ごめんね

ごめんね、美玲

お姉ちゃん、もうダメみたい。

せっかく助けてくれた命なのにごめんね。

お空にひとりぼっちで寂しいよね。

お姉ちゃんすぐいくから。


お空で会えたら、一緒にパフェを食べようね。

いきたかったとこに行こうね。

やりたかったことをやろうね。

来世は幸せに長生きしようね。

「今いくよ、美玲」

私は、踏み台から足を離した





1/18/2026, 3:32:39 PM

「閉ざされた日記」


暗い、暗い部屋の奥。
俺は一人で座っていた。
「やっちまった〜〜!!」
部屋の隅々まで響くほどの声で叫ぶ。
(研究員の人ぶん殴っちまったのは不味かったかなぁ)
ところどころ骨が軋んで痛む体で、ぼんやり考える。
俺たちは実験台。
異能を持った子供の人体改造とか、自我を欠落させることによる兵器化だとか、おぞましいったらありゃしない。
(さぁーて、これからどうすっかなぁ
 抜け出してえけど、、、、。   )
どうしようかと頭を悩ませる。
その時。
部屋の角で、物音がした。
「誰だ?」
物音がした方を見る。
「、、、お前かよ」
拍子抜けしてしまった。
「はっ、悪かったねぇ僕で」
「本当だよ」
「それよりさ」
レウの声が、少し強張った。
「ここから抜け出さない?」
「、、、はぁ!?
 無理に決まってんだろ!
 あいつらの力のことわかってんのか?」
「つれないなあ〜
 でも、いつかはできると思わない?」
どきり、とした。
こいつとならできるかもしれない。
いつか。
いつかここから逃げられるのかもしれない。
「いつかな」
できるだけ平然という。
「はいはい、楽しみにしてるよーん」
本当に、いつかそんな日が来るんだと思った。
そしてその隣には、お前がいると思っていた。
当たり前のように。
笑顔で笑ってくれるんだと思っていた。
保証なんて、どこにもなかったのに。


それからしばらくして、レウが死んだ。
実験の拒否反応で、あっけなく。
俺は、全く泣けなかった。
そのすぐ後ぐらいに、俺は警察に助け出された。
抜け出せなんてしない。
俺は無力な子供で、夢なんてそんなもんだった。
警察の人が、レウの遺品だと言って一冊の日記帳を渡してくれた。
古ぼけた日記帳。
記憶が、蘇った。
『レウ、なんだよこれ〜』
『あー!それは見ちゃダメ!』
『え〜ケチじゃん!』
『じゃあ、いつか僕が見ていいって言ったら見せてあげる。それまで待ってて!』
涙が溢れた。
なんで忘れていたんだろう。
なんでもっといろんなことを話さなかったんだろう。
なんで、なんで、なんで。
「なあ、日記、見ていいって言われてねーぞ
 何書いたか知りてーのに、これじゃ見れねえじゃん
 返事しろよ、レウ、、、」
気づけば、写真に向かってそう言っていた。
日記の裏表紙を見る。
『ここを出たらやりたいこと!
 ①零といっぱい遊ぶ
 ②普通になる
 ③零のしたいことをする!』
レウがやりたかったこと。
全部、俺がしたいと言ったことだった。
「レウ、俺、ここに書いてあることのうち二つはもう
 できねぇけどさ、この普通になるってやつ、やって    
 みるよ。
 そしたら、この日記、見てもいいかな、?」
涙を拭って美しい立ち上がる。
普通になって見せるんだ、精一杯。
レウが心配しないくらい。
その為に。
今はまだ、閉ざされたままにしておこう。
テーブルの上に置かれた日記が、涙と共に輝いた。

1/17/2026, 3:03:47 PM

「木枯らし」

木枯らしが響く

街の間を縫って

人々の間をすり抜けて

体温を

温もりを

奪っていく

手がほんのりピンク色になっている

その冷たい手を

かじかんだ手を

繋いで温めた日

その淡い温もりをくれたあなたは

あの暖かい笑顔をくれたあなたは

もうどこにもいないのですね

「あいたいなぁ」

そっと、小さな声で呟く

白い息が、漂っていた

1/16/2026, 3:22:31 PM

「美しい」

なんて美しいんだろう

笑う時に口元に添えられる華奢な手

少し長めのまつ毛

丁寧にアイロンがかけられた黒髪

全部

全部

美しくて

愛しくてたまらない

だから

だからさ

君のことはなんでも知ってる

好きな食べ物

好きな教科

いつも使っている制汗剤

家の住所と部屋の間取り

起きる時間だって

全部

全部知ってるの

これも全て、君が好きだから

どうしようもないくらいに君が美しいから

こんなに知ってるのに

君を愛せる自信があるのに

君が答えてくれないから

「ごめんなさい」

なんていうから

いくらそれが照れ隠しなのだとしても

僕以外のものを見るから

僕だけを愛してくれないから

こうするしかないんだよ




「ただいま!いい子にしてた?」

僕の部屋の中

いつも

いつも

君がいる僕の家

僕しか見てくれないから目をつぶして

逃げようとするから手錠で縛って

もう僕を頼るしかない

「新しい服を買ってきたよ
 さあ、着替えようか」

美しい

美しい

僕だけのもの

震える手をそっと掬い上げる

首筋を撫でる

涙と血で濡れた目隠しを外して、そっと抱きしめる

やっと僕のことを愛してくれたんだろう

彼女の体から力が抜ける

ああ

なんて美しい

耳元でキスをしながら、僕は呟いた

「あいしてるよ」







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