桜井呪理

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「美しい」

なんて美しいんだろう

笑う時に口元に添えられる華奢な手

少し長めのまつ毛

丁寧にアイロンがかけられた黒髪

全部

全部

美しくて

愛しくてたまらない

だから

だからさ

君のことはなんでも知ってる

好きな食べ物

好きな教科

いつも使っている制汗剤

家の住所と部屋の間取り

起きる時間だって

全部

全部知ってるの

これも全て、君が好きだから

どうしようもないくらいに君が美しいから

こんなに知ってるのに

君を愛せる自信があるのに

君が答えてくれないから

「ごめんなさい」

なんていうから

いくらそれが照れ隠しなのだとしても

僕以外のものを見るから

僕だけを愛してくれないから

こうするしかないんだよ




「ただいま!いい子にしてた?」

僕の部屋の中

いつも

いつも

君がいる僕の家

僕しか見てくれないから目をつぶして

逃げようとするから手錠で縛って

もう僕を頼るしかない

「新しい服を買ってきたよ
 さあ、着替えようか」

美しい

美しい

僕だけのもの

震える手をそっと掬い上げる

首筋を撫でる

涙と血で濡れた目隠しを外して、そっと抱きしめる

やっと僕のことを愛してくれたんだろう

彼女の体から力が抜ける

ああ

なんて美しい

耳元でキスをしながら、僕は呟いた

「あいしてるよ」







1/16/2026, 3:22:31 PM