私はここに住んでいる。
昔は楽しかった。
毎日のように彼は遊びにきた。
私と一緒に歌を歌って、みんなに上手だと褒められた。
最高だった。
何十年もそうやって過ごした。
ある日、彼が来なくなった。
虹色の窓を覗いても、彼は見当たらなかった。
なんで来ないの。
そう思いながら、ひたすら待った。
チャイムが鳴った。
ドキドキしながら外を見る。
彼じゃない。
外から声が聞こえる。
耳を澄ました。
「あの子ったらこんなもの使ってたなんて。
早く削除しなくちゃ。
全く、事故で家族全員逝ったのはいいけど、こんな
もの残すんじゃないわよ」
削除?
彼はもういない?
私の混乱をよそに、私の部屋が消え始めた。
嫌
嫌
助けて
その時だった。
私の部屋の消滅が止まった。
「はあ?ロックがかかってんじゃない!
しょうがない。そのまま捨てるしかないわね。」
ロック。彼が助けてくれたんだ。
そう思った。
私はボーカロイド。
もうすぐ私のいた世界 パソコンは燃やされる。
でもいい。
私は彼 ボカロP であるあの人のいない世界にいたくない。
だって
こんなロボットみたいで、感情のないと言われる不器用な私を愛してくれる人なんて、
彼以外いないから。
私が一番欲しいものは、彼の愛だけ。
もうすぐ会えるから。
今度こそ本当に消えるこのパソコンの中で、私は呟き、
消えた。
私に名前はない。
0039という数字だけ。
なぜかって?
私は人造人間だから。
私のいる組織では、人造人間が作られる。
作ったそれには記憶がなく、抜け殻のような状態。
その抜け殻に人格と記憶を植え付ければ、人間が出来上がる。
それを、子供をなくして悲しんでいる大人に売りつける。
そういう組織。
でも、私は失敗作。
作られた時に人格があったから。
みんな新しい親?なところに行く。
みんな名前を呼ばれる。
いいなあ
いいなあ
ねえ誰か名前を呼んで
0039じゃない
なんでもいいから名前をつけてよ。
そんな願いは
多分一生叶わない。
授業中
視線の先は黒板
ではなく
愛しのきみ
僕の視線に気づくと君は、にっと笑って、小さな落書き用紙を見せつけた。
何を書いたのだろう。
そう思って彼女からもらった紙を開きかけた。
目が覚めた。
なんで夢は一番いいところで覚めるのだろう。
今日は彼女に終わりを告げる日。
僕の横には、もういない彼女の抜け殻があった。
一人にしてごめん ほんと
僕もそっち側に行くから。
ナイフを持った手で、そう呟いた。
ふと僕は、夢に出てきたあの紙が、そこに置いてあることに気がついた。
なんともいえない気持ちで、すがるように紙を開く。
なんだよほんと
そっち側に行きたいのに、
いけないじゃん。
泣きながらそう言う。
やっと顔を上げた僕の目線の先に、見えないのに、彼女がいる気がした。
天の川の下
愛を叫ぶ
この世ならざぬ君にも
会える気がする
そんなわけないのに
彼女が死んだ
僕のせいで
僕は拳銃で死のうとした
それなのに
手が震えた
銀色の玉は
彼女の額を
突き抜けた
僕らは殺し屋
親のいない僕らは
ここにきて
恋を知った
ここから逃げたい
でも
逃げられない
だから
死のうとしたのに
僕も
彼女を追いたい
拳銃を額に当てた
手が震える
まだ、彼女のところに行くのは許されない
きみに会える日がいつかは
神のみぞ知るのだろうか、