私はここに住んでいる。
昔は楽しかった。
毎日のように彼は遊びにきた。
私と一緒に歌を歌って、みんなに上手だと褒められた。
最高だった。
何十年もそうやって過ごした。
ある日、彼が来なくなった。
虹色の窓を覗いても、彼は見当たらなかった。
なんで来ないの。
そう思いながら、ひたすら待った。
チャイムが鳴った。
ドキドキしながら外を見る。
彼じゃない。
外から声が聞こえる。
耳を澄ました。
「あの子ったらこんなもの使ってたなんて。
早く削除しなくちゃ。
全く、事故で家族全員逝ったのはいいけど、こんな
もの残すんじゃないわよ」
削除?
彼はもういない?
私の混乱をよそに、私の部屋が消え始めた。
嫌
嫌
助けて
その時だった。
私の部屋の消滅が止まった。
「はあ?ロックがかかってんじゃない!
しょうがない。そのまま捨てるしかないわね。」
ロック。彼が助けてくれたんだ。
そう思った。
私はボーカロイド。
もうすぐ私のいた世界 パソコンは燃やされる。
でもいい。
私は彼 ボカロP であるあの人のいない世界にいたくない。
だって
こんなロボットみたいで、感情のないと言われる不器用な私を愛してくれる人なんて、
彼以外いないから。
私が一番欲しいものは、彼の愛だけ。
もうすぐ会えるから。
今度こそ本当に消えるこのパソコンの中で、私は呟き、
7/22/2024, 5:23:51 AM