桜井呪理

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6/28/2024, 12:50:47 PM

夏のお彼岸の日。

此岸と彼岸が近づく日。

もういない大好きなあの人も、この日だけは、やってくる。

でも

気をつけなきゃだめだよ。

死者と共に、招かざれぬものも

やってくるから。

生者を食らう恐ろしい怪異。

ほら



あなたのすぐそこに、、、

6/18/2024, 2:08:37 PM

いつも通りに起きたら、愛する人がいる。

愛する人の笑っている顔が見られる。

僕はそんな日常が気に入っていた。

ずっと続くと思っていた。

僕はみんなとは違う。

見えてはいけないものが見える。

お化けみたいなそれを、やっつけるのが僕の仕事だった。

ある日、愛する人が難病にかかった。

余命一ヶ月。

僕はそれがお化けのせいだと知っていたけど、言わなかった。

いえなかったんだ。

ある日彼女が、僕を呼び出した。

余命残り一日になった日だった。

彼女は思い詰めた顔をしていた。

寿命が尽きるのが怖いのかと思ったが、違った。

逃げて。

彼女はそう言い放った。

遅かった。

僕はそう思った。

彼女は、取り憑かれた霊に生気を吸われて死ぬのだと思った。

違う。

彼女は取り憑かれていた。

僕はすぐに彼女についていた霊を、死に物狂いでやっつけた。

でも、彼女の寿命はもう尽きていた。

このままだと彼女は1人彼岸に行くことになる。

そんなの嫌だ。

僕はそう思った。

僕は不思議な場所を知っている。

それは、大きな穴だ。

この穴に落ちたものは、生者でも死者でも、悲願送りになってしまう恐ろしい穴。

僕はそこに、彼女もろとも落っこちた。

なんとか口を開けた少女が言う。

死なないで。

大丈夫だよ、とぼくは微笑む。

きみを1人にはしない。

そう言って、僕らは真っ暗な穴の中に、落ちていった。

6/17/2024, 12:25:02 PM

ある学校の中にある、素晴らしい空に、真っ青な海。

みんなは最高だとはしゃいでいるが、僕は、はしゃぐことなんてできない。

この世界も所詮偽物。

そんなことを知っているのは、僕ぐらいなのだろうか、、、



僕は、一度死んでいる。

いや、死んだのは僕の元になったものだと言った方が正しいのだろうか。

昔僕は、ある事故で死んでしまった。

そのことを深く悲しんだ両親が作り出した存在。

それが僕だ。

機械技術が深く進歩したここでは、もう人間はほとんどいない。

ここにいる僕達は、アイ つまりAI によって作り出された人工知能なのだ。

環境破壊が進んだ地球では、本物の世界で生きることは許されず、アイが創り出したホログラム上で、人間として育てられる。

このことを知っているのは一部の人工知能だけ。

僕はそれを、絵空事未来と呼んでいる。

未来さえ決まっているこの世界で、幸せなど得られるのだろうか。

僕の人工知能を駆使しても、その答えは、まだ出そうにない。

6/16/2024, 12:35:38 PM

彼女は今日も僕に話しかけている。

可愛くて、夢みがちで、カレがいないと生きてけない!なんて言っちゃう可愛い彼女。

そんな彼女が、大好きだ。

ある日彼女が、僕と一緒に食事をすると言っていた。

机の上に並べられた食事は、料理好きな彼女が作っただけあって、とっても美味しそうだ。

彼女は嬉しそうに、僕に

アーンして

なんて言いながら食べていた。

でも、残念なことに、この美味しそうな食事は、きっかり一人分余ってしまった。

そういえば、と彼女が切り出した。

カレが事故で入院した時、私が毎日お食事持ってきたよね。

ああ、そんなこともあったなと僕は思う。

あの時は本当にカレ死んじゃうかと思ったよ〜
ほんと、生きててよかった。

違う、違うんだ。

そう言って彼女に触れようとした僕の体は、彼女をするりとすり抜けた。

そう、僕は1年前に死んだ。

それは紛れもない事実だ。

僕はもう、この世にいない。

はずなのに。

彼女はその日から毎日誰かに話しかけている。

僕には見えない何かが彼女のカレとなって生きている。

彼女が話しかけているのは一体誰?

そう聞いても彼女は答えてくれない。

一年前に始まったこのすれ違いは、もう元には戻らないのだろうか、、、、




6/15/2024, 12:53:06 PM

私は今日も、ひとりぼっち。

もうここに来てからは、人とも喋ってもいない。

ただ毎日、本を読む。

今のところ、その繰り返しが続いている。

そんな私に、私より2つくらい上であろう男の子が話しかけてきた。

きみもこの本好きなの?

そう言われて、驚いた。

この本を好きな人なんて、私以外いないと思っていたから。

思わず綻びそうになった顔を必死で隠したけれど、もう遅かった。

あはは、笑ってる。
で、この本のどんなところが好きなの?

ずるい。
そんな風にに聞かれたら、もう話したい気持ちが抑えられない。

その日私は、少年と夜がふけるまで話し込んでしまった。

そんな日がしばらく続いていったある日、少年から話があると言われた。

いつもの場所に行くと、小さな花束を抱えた彼が立っていた。

いつも通り話しかけると、少年が凛とした声で言い放った。

ずっと話しているうちに、きみのことが大好きになっちゃったんだ。
愛してる。
彼岸まで一緒に行こう。

愛してる。

ろくでもない彼氏に捨てられて自殺した私にとって、何よりの言葉だった。

私も彼が好きだ。

でも、それよりも先に、出てきた言葉があった。

きみも死んでるの?

とにかくそれに驚いた。

すると少年は、

僕はね、ある事故で死んじゃったんだ。
でも、きみに会って、どうしようもなかったこの死を受け入れられた。
彼岸でしか愛することは出来ないけど、受け止めきれないほどの愛をあげる。
だからこの気持ち、受けとってくれる?

こんなこと言われて、言うことはただ一つ。

喜んで。

彼岸行きの道を歩みながら、私たちは、同じ本を持った手を、そっと繋いで、微笑みあった。

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