飛べない翼
「お空が飛べる大きな翼がほしいです!」
初めて神社に行った6年前の私は、そう願った。
当然翼なんて貰えるわけないと思っていたが、願った次の日、私の背中に小さい翼が生えていたのだ。確かその日は私が学校で翼が生えたと自慢すると、
「どこ?生えてないじゃん!」
と言われた記憶がある。当時は、
「きっと他の人には見えていないんだ!」
と、特別な感じがして嬉しかった。
だけど、勇気が出なくて飛べなかった。
「落ちたらどうしよう?」「もし捕まったら?」
と考えてしまって。
今はその日から6年が経ち、当時10歳だった私は16歳になった。
勿論、成長するにつれて翼も大きくなっていった。
翼は大きく、立派になった。
しかし、まだ飛べたことはない。
どうしても、勇気が出ないのだ。
この翼は、飛べない翼だ。
私にとって、この翼は要らない翼だ。
───────フィクション───────
脳裏
最近、ストーカーに悩まされていて、今も後ろにいる。
どうしよう、この辺りにある家は、全校生徒からイケメンと言われている先輩の家しかない...
やましいことは考えずに、簡単に事情を説明して、今日は泊めてもらおう。
ピンポーン
私はスマホに書き込んでおいた文章を見せる。
すると先輩はすぐ家に入れてくれた。
お礼は明日の休みに何か買って渡すことにしよう。
先輩の家に入った途端、足音は聞こえなくなった。
彼氏と間違えたのだろうか?
そう考えた瞬間口角が上がってしまって、咄嗟に口を隠した。
先輩の家にいる間は一緒に課題をやったりゲームをしたり。
お風呂も貸してもらった。途中お風呂で鉢合わせるハプニングがあったが...気にしないでおこうかな。
ご飯も先輩が作ってくれた。すごく美味しかった。
後ろからついてくる人。まるで父親のようだった。
その恐ろしい記憶が、私の脳裏に浮かんで、私は涙が止まらなくなってしまった。
涙を止めなきゃいけないのにと思っていると、先輩が私を抱きしめた。
私は不安から安心に変わり、思わず抱き返してしまった。
ようやく落ち着いたところで、さっきの状況を思い出してしまい、顔が赤くなる。
何故抱きしめたのかを聞くと、先輩にはお姉さんと妹さんがいるようで、妹さんが泣いている時はいつもお姉さんがこうしているようで、お姉さんを真似して私を抱きしめてしまったそう。
「先輩の家族とか恋人だったら幸せだろうなあ...」
と、思わずこぼれてしまった。
私の発言に先輩はみるみるうちに顔が赤くなっていった。
意外な一面を見れて嬉しかった。
またストーカーされるのが怖かったので、土日も泊めてもらうことにした。
先輩とベッドの譲り合いになったけれど、
「先輩からのお願い!ね?」
と言われ負けてしまった。上下関係には逆らえない。
ベッドからは微かに先輩の匂いがする。
その匂いに包まれながら、私は眠りについた。
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朝起きると、リビングからいい匂いがした。
先輩が朝ご飯を作ってくれていたのだ。
「ご、ごめんなさい!つい安心して遅くまで
寝てしまいました...」
申し訳無くてそう言うと、先輩は
「あはは!いいのいいの!寝れてなかったでしょ?
クマ、すごかったから。良かった。」
と優しい言葉をかけてくれた。
そこで私の心は先輩に撃ち抜かれてしまった。
やましいつもりはなかったのに...!どうしよう?!なんて思い先輩に視線を向けると、先輩がテーブルから手招きしていることに気付いた。
「すみません気付かなかったです...
今行きます!!」
と返事をし、先輩とご飯を食べる。
先輩は私に気を使って量を少なくしてくれたようだった。おかげで完食することができた。
先輩が食べ終わった時、今しか誘うチャンスはないと思い、
「先輩。お礼がしたいので、今日どこかに
行きませんか?あと、家に部屋着を取りに行きた
くて。いいですか?」
心臓をバクバクさせながらも平静を装った。
先輩は
「えーお礼とかいいのに!でもまたストーカー
されたら大変だと思うし...行こっか!」
「やった!!!」
(ありがとうございます。買い物に行きたいんですけど...いいですか?)
やばい、心で言おうと思っていたことと反対になってしまった...!
「ええっと、その、心の声と反対になっちゃって...
ごめんなさい...!ありがとうございます。買い物
に行きたいんですけど...いいですか?」
「あはは!面白い!いいよいいよ!行こ行こ!」
「でも私今制服で...」
「姉ちゃんの部屋に服あるけど...着てく?」
「え、いいんですか?ありがとうございます。」
「じゃあ服取ってくるから待ってて!」
「え、いやいや私が行きますよ」
「じゃあ一緒に行こっか」
と言われ、一緒にお姉さんの部屋まで行くことになった。
先輩は誰かに連絡をとっている。連絡が終わって部屋の目の前まで着いたその時、扉が一気に開く。
こんな美しい人存在するのか疑うほどの美人さんだった。
「美人で綺麗...可愛い...!!」
「あら、ありがとう!あなたもすごく
可愛いじゃない!!!」
「へ...ありがとうございます...?」
「ちょっとこの子借りるわよ!!」
「え"っ?!ちょっ、え"っ?!」
私は美人さんに部屋まで連れていかれた。きっとこの部屋は先輩のお姉さんの部屋だ。
白で統一されていて、私の理想の部屋とすごく似ていた。
美人さんは一生懸命に服を選んでいる。
「素敵な部屋...先輩のお姉さんのお部屋、私の
理想の部屋にすごく似てます。」
と言ってみる。すると美人さんは
「あら、本当?私もう高校生じゃないから
一人暮らしでこの部屋もう使わないのよね...
使う?」
今の発言で分かった。この美人さんがお姉さんだ...
「え"っ、もしかしてお姉さん...??
よく見ると先輩に似てる...!美人すぎませんか?
罪です。現行犯逮捕案件です...」
「褒めても何も出ないわよ...」
なんて会話をしながら、お姉さんは服を選んでくれた。
「はい、OK!で、あと髪巻いて完成!」
「こんな感じのコーデしたことなくて...!
ありがとうございます!」
「いーえ!デート、楽しんでね!」
「でっ、でででで、でーと?!?!?!」
「あれ?デートじゃないの?でもまあいいかしら!
これであの子のこと落としてこーい!!」
と言われ、お姉さんに手を引っ張られリビングへ向かった。
お姉さんはどう?この子可愛いでしょ?と言わんばかりの顔で先輩を見る。
「...何そのドヤ顔。そんなこの子可愛いでしょ
アピールしなくてもいいから。」
よく考えてみると先輩はみんなに冷たいけれど、私には優しい時が多いな...
「辛辣〜ひどぉ〜い...さあ、行っておいで!」
「行ってきます!服はクリーニングしてお返し
します。」
「あ、いいわよ!それいらないからあげるわ!
上手く着こなしてみてね〜」
「え、!ありがとうございます!がんばります!」
「...行ってきます。」
「幸せにしてあげてね?絶対ね?約束ね?
分かった?」
「分かってるって!じゃあ!」
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大きいショッピングモールに着く。
お礼を買う目的で来たんだ。デートじゃないから...
「先輩、欲しいものありますか?」
「うーん...欲しいものかあ...ハンカチとか
欲しいかも?」
「ハンカチ...!!分かりました。ちょっと
待っててくれませんか?」
「え、うん?」
急いでハンカチを買いに行く。
学校に持っていくとしたらシンプルの方が良いかと思ったので、シンプルのを買った。
「すいませんお待たせしました...これ、お礼です。
どうぞ!」
「え...ハンカチ!ありがとう!毎日使う」
「毎日...?でも喜んでもらえて良かったです。」
その後はどんどん買い物をしていき、16時頃に先輩の家へ向かって私の家に部屋着を取りに行くという感じだった。
私はお風呂を借りて部屋着に着替える。
先輩の部屋に戻ると、 今日1日疲れてしまったのか着替えもせずに寝ていた。
寝顔がとても綺麗で、つい頬を触ってしまった。
先輩の体温が伝わってきて温かくて。
私はそこで寝落ちてしまった。
朝起きると先輩の顔が私の目の前にあった。
私の顔は火照ってしまって、手で顔を覆った。
先輩は私を起こそうとしたらしい。
キスかと考えてしまった私はきっとやばいやつだ...
ゲームをしたりしてあっという間に今日は日曜の夜だった。
「私もう行きますね。ありがとうございました。」
と言い、先輩の家から出ようとすると先輩に抱きしめられた。
「せ、せんぱい...?どうしました?」
「ごめん。このままで聞いて欲しいんだけど。
俺、一目惚れして。それからずっと好きなんだ。
俺が言いたいのは...その...
付き合ってくれませんか。」
「...」
「無理だったら全然いいか...」
「よろしくお願いします。」
「...え?」
「よろしくお願いします!!」
「...ありがとう!こちらこそ!」
この場面は、私の脳裏に焼きついた。
───────フィクション───────
今回のラブストーリーは頭に物語がどんどん浮かび上がってきて私もびっくりです...
どうか暖かい目で見てください。
By 匿名。
あなたとわたし
あなたと私は仕草も言動も考えることも全て違う。
けれどあなたといると落ち着くの。
あなたとわたしは正反対。
けれどあなたのおかげで強くなれたの。
柔らかい雨
「天気予報じゃ一日中晴れだったのに〜!」
そう独り言を言う。
私は今日傘を持ってきていなかった。学校で雨宿りをして弱くなったら帰ろう、と思っていた。
けれどその時、彼が私の独り言を聞いたのか
「傘...入る?」
と言った。
彼は私の好きな人だった。
嬉しさと同時に罪悪感もあり一瞬迷ったが、風邪をひいて彼に会えなくなることが嫌だったし、相合傘が出来る機会は今回しかないと思ったので入れてもらうことにした。
「じゃあお言葉に甘えて...ごめんね。ありがとう」
そう言い彼の傘に入らせてもらった。
帰っていると、彼が突然私に
「聞きたいことがあるんだけど。いいかな...?」
と言った。
好きな人からのお願いだし、聞かないとね
「うん、いいよ」
「あのさ...××ちゃんって好きなタイプなんだと
思う?あと彼氏とかいるのかなって思って...」
「明日、全部聞いとく!」
「ごめん!ありがとう!」
ああ、私じゃないんだ。期待した私が馬鹿みたい。
「あ!私の家すぐそこだから、またね!傘ありがとう」
彼の口から言葉が出る前に私はその場から去った。
その時、ちょうど雨が弱くなった。
私は、柔らかい雨に打たれながら涙を流した。
───────フィクション───────
一筋の光
何年前だろうか。私が夢などを持たなくなったのは。
私が夢を持たなくなったのには理由がある。
4年前、とある戦闘ゲームが流行っており、クラスの男子に一緒にやろうと誘われた。
学校で教えてもらったゲーム名を検索し、フレンドに追加する。
すると、いきなり対戦マップに友達を連れてきて、初心者の私に
「雑魚」「○ね」「黙れよ」「馬鹿」「ク○」
「デブ」
など。まあ本当だから仕方がないのだけれど...
勝っても
「チートだろ」「まぐれだからww」
などの言葉。
そこから私は保健室登校になった...が、運悪く担任はそういう生徒と向き合ったことが無いのか
「よし!行こう!」「なんで来ないわけ?」「○○さんがいないだけで話し合いとか延びるから来て」
などの言葉を向けられた。見えていない所で傷付いてる人もいるのになあ...なんて思った。
その数ヶ月後、私もそのゲームに慣れてきて相手にも勝てるようになったし、学校に行かない理由を担任にもきちんと話して男子に謝ってもらったが...反省をしていないのか教室でも
「馬鹿」「アホ」
などと言ってきた。
昔からの夢で「ゲーマーになる」と言う夢があったがその夢も無くし、そこから夢はもう作らないようにした。
けれど、カウンセラーさんにお話を聞いてもらってからは一筋の光が差した気がして。
勇気が貰えた。
「ゲーマー」という夢は諦めちゃったけど、今の私みたいな子に寄り添うことが出来る職業に就きたいな、と思った。
───────実話───────