柔らかい雨
「天気予報じゃ一日中晴れだったのに〜!」
そう独り言を言う。
私は今日傘を持ってきていなかった。学校で雨宿りをして弱くなったら帰ろう、と思っていた。
けれどその時、彼が私の独り言を聞いたのか
「傘...入る?」
と言った。
彼は私の好きな人だった。
嬉しさと同時に罪悪感もあり一瞬迷ったが、風邪をひいて彼に会えなくなることが嫌だったし、相合傘が出来る機会は今回しかないと思ったので入れてもらうことにした。
「じゃあお言葉に甘えて...ごめんね。ありがとう」
そう言い彼の傘に入らせてもらった。
帰っていると、彼が突然私に
「聞きたいことがあるんだけど。いいかな...?」
と言った。
好きな人からのお願いだし、聞かないとね
「うん、いいよ」
「あのさ...××ちゃんって好きなタイプなんだと
思う?あと彼氏とかいるのかなって思って...」
「明日、全部聞いとく!」
「ごめん!ありがとう!」
ああ、私じゃないんだ。期待した私が馬鹿みたい。
「あ!私の家すぐそこだから、またね!傘ありがとう」
彼の口から言葉が出る前に私はその場から去った。
その時、ちょうど雨が弱くなった。
私は、柔らかい雨に打たれながら涙を流した。
───────フィクション───────
11/6/2023, 12:35:33 PM