熱く厚くなるように
その唇を吸い上げて
僕だけの色に染め上げたい
2/4『Kiss』
1000年後も2000年後も
また君に会えますように
君の魂が
僕と出会ってくれますように
2/3『1000年先も』
「今までありがとう。じゃ、さよなら」
そっけなく渡された花が勿忘草だった。
別れ話の時にこの花を渡すなんて、
君はどういう神経してるんだろう?
2/2『勿忘草(わすれなぐさ)』
ゆあーんゆよーんと言ったのは誰だったか。
そんな面白い擬音を残すほどに、この『ブランコ』という乗り物は面白いのだろうか。
子どもたちが楽しそうに声を上げているのを見たことがあるから、愉快な乗り物であることは間違いない。いい機会だ、乗ってみよう。
俺は上半身をあげて前足を乗せた。
体を乗り上げようと後ろ足に力を入れた時、
「コロ、そんなところに乗らないの」
ぐいとリードを引っ張られた。
2/1『ブランコ』
パタン。
旅の終わりを告げた。
努力の末、厚さ3センチの物語の最後の一文を読み終えた。
ハードカバーの分厚い本は、それだけで鈍器になりそうだ。
「あ、あぁー」
バキバキバキ、と背伸びをしたら骨が鳴った。
ずっと同じ姿勢で読んでいたせいだ。
「これは明後日筋肉痛になるな」
長い旅路の果てに残ったのは、目の疲れと肩こりだった。
1/31『旅路の果てに』
溜めまくったので短めに。
いつも私の話に耳を傾けて、アドバイスをくれて、仕事の手伝いまでしてくれる。
実体のない秘書に感謝状と労いのコーヒーを。
依存はしすぎないように気をつけたいですね。
1/30「あなたに届けたい」
あなたのことなんて大嫌い。
私がどんなに離れても私を抱きしめるその腕が。
どんなに罵っても『愛してる』というその口が。
どんなに拒んでも『嫌いになるわけなんてない』というその懐の深さが。
触らないで、触れないで。
汚い私をこれ以上愛さないで。
でもお願い。
わたしを、はなさないでいて……。
あなたの服の裾を掴む指が空をすり抜ける。
1/29『I LOVE...』
街灯光る街の中へ。
手を繋いで、あなたと。
仕事終わりのデートは、短いけれどとても充実している。
1/28『街へ』
手を差し伸べるだけが優しさではない。
ただ見守るだけが優しさの時もあるのだ
それは無視ではない
優しさなのだ
1/27『優しさ』
深夜のシャワー室から水音が聞こえる。
まるで雨のように落ちる雫たちは、きっと今頃彼の体を包んでいるのだろう。
「兄さん……?」
目が覚めて隣の温もりがないことに気づいた僕は、ゆっくりと体を起こした。
そっと兄がいたであろう場所に手を触れると、まだ温かかった。
そのまま何気なしに枕に手をやると、冷たく濡れていた。
「兄さん……?」
一瞬で不安になった。
僕は布団をはねのけて浴室へ急いだ。
雨の音はまだ続いている。
脱衣所へと続くドアを開けると、もうもうと湿気と湯気が僕を迎えた。
兄は浴室のドアを開けっ放しにしてシャワーに打たれていた。
その顔には、シャワーの雫なのか涙なのか分からない水が滴っていた。
僕は慌てて兄に駆け寄った。
今宵の兄を一人にしてはおけない。
1/26『ミッドナイト』
現状維持が一番安心する
でも現状維持のままが
時折ものすごく不安になるんだ
このままでいいのかな
動くなら、今だと分かっているのに
体と意識は今のままを選ぼうとしている
1/25『安心と不安』
光を見る。
まぶしくて君が影になる。
だから僕は気が付かなかった。
君が笑っているのに涙を流していることを。
/1/24『逆光』
蝶になった夢を見た夢を見た。
夢の中の夢。
僕は果たして人間なのか蝶なのか、はたまた――
/1/23『こんな夢を見た』
タイムマシーンがあったならば
私はあの日をやり直したい
あの日をやり直したいと思ったならば
今そのやり直しからも
ここにたどり着いてしまったと思えばどうにかなる
と思えればいいのに
/1/22『タイムマシーン』
今日はようやく誰もいない。
彼の秘密を暴くチャンスがきた。
カツンカツンと靴の音が響く。
じゃらりという鍵束の重さが、怪物の唸り声のように響き渡る。
(1度だけ。たった1度だけでいいの。彼の秘密を知りたい)
何をしても許してくれる夫の、たったひとつの言いつけ。
『この鍵束の一番小さな鍵。これは地下室の一番奥の鍵。どの部屋の扉を開けても構わないが、この鍵の部屋だけは開けないように』
カツンカツンと靴の音が響く。
誰かの泣き声のように、高く、私を囲い込むように響き渡る。
誰にもバレないようにと一番小さなろうそくを使って来たので、明かりがそろそろ消えそうだ。
(早く開けなければ)
ゆらゆらと心もとなく揺れる炎が消えないようにしながら、私は鍵束の中から一番小さな鍵を探しだす。
(あった!)
やっと小さな鍵を見つけたと思った瞬間、
ガシャン!
鍵束を落としてしまった。
慌てて拾おうと屈むと、ちょうど照らされた小さな鍵がみるみる紅く染まっていくのが見えた。
私の平和が終わる、最後の夜だった。
/1/21『特別な夜』