白銀に音を吸い込まれてしまったような静寂。
シーンという音すらない、真っ白な世界。
「はぁ……」
吐く息が白く溶けて消えていく。
白の中に見える青い影が、唯一僕の存在を示していた。
(これから、君を殺しにいく。出来るのかな?僕に)
腰に携えた剣は、ずっしりと今から捕らえに行く命の重みを表しているように重かった。
(でも、僕がやらなきゃ。……僕にしか出来ないことだから)
柄を握り直して、雪の中を進んでいった。
僕の親に似た存在の人に言われた使命。
この国を、世界を救うため、誰かが犠牲にならなくてはいけない。
(それが彼なのが納得いかないけれど)
雪に取られた足が、この先を進むのを引き止めるかのように重かった。
(でも、誰かに使命を譲るくらいなら、僕がこの手で彼を終わらせる。)
僕はその重みを振り払うように足を上げて、一歩また一歩と歩んだ。
(待っててね。必ず僕がこの手で君を終わらせるから)
声にならない願いは、雪原に飲み込まれる。
12/17『雪の静寂』
外に出たかった。
思う存分走ってみたかった。
大空の下で歌ってみたかった。
すべては君が見た夢。
病床で思い描いていた夢。
寝たきりで叶わなかった夢。
代わりに僕が叶えてあげる、なんてことは言わない。言えない。
だけど、もし来世というものがあるのなら、僕は来世でも君の隣にいると誓うよ。
そして君の夢が叶うところをそばで見ていたい。
12/16『君が見た夢』
まずは寝ること。
ゆっくり眠れれば、明日は過ごせる。
眠れないなら、こちらへおいで。
いっしょにホットミルクでも飲もう。
12/15『明日への光』
殴られた。
目から星が飛び出た。
僕の油断は星になった。
「ほら、のびてないで、次のラウンドいくよー」
スパルタのコーチの声が聞こえて、飛び出た星を探す間もなく、次の試合のゴングが聞こえた。
/12/14『星になる』
遠くで鐘の音が聞こえる。
夕方に3つは家の中に入る合図。
早く隠れないと、赤い服の男に攫われてしまうよ。
サンタが来れないこの村には、昔からそんな言い伝えがあった。
幸福がやってくるはずの彼がそんな言われ方をし始めたのは、一体いつからだったろろうか。
昔々、プレゼントも買えないほど貧乏な村の言い伝え。
/12/13『遠い鐘の音』
「このアプリ、スノーっていうの」
「なぜ雪なの?」
「見たくないものを覆い隠せるからじゃない?」
「隠しちゃ意味なくない?」
「隠したいところと隠したくないところがあるんだよ。複雑なオトメゴコロなの」
/12/12『スノー』
「はー、今日も寒いわね」
手袋をする前に両手に息をかける。
これだけで温まるとは思えないが、しないよりマシだ。
厚手の手袋に手を入れて、しっかりとほうきの柄を握る。
「よし、行ってくるね」
気合を入れてほうきにまたがった。
玄関先に私を見送りに来てくれていた飼い猫の頭を撫でて、口の中で詠唱をした。
ふわり、と足元が浮かぶ。
「今日は3件だけだから、昼には戻ってこれると思うよ。行ってきます」
飼い猫がにゃあと返事をした。
浮いた足で地面を蹴るように空を撫でると、ほうきは私の意思のまま飛んでいく。
私は魔女の配達人。
早朝や午前中に荷物を受け取りたい人のために始めた宅配サービスはそこそこ好調だ。
「さあ、今日もがんばるぞ」
雲のない星のきれいな夜空を駆けて、まずは荷物の受け取りに向かった。
12/11『夜空を越えて』