「はー、今日も寒いわね」
手袋をする前に両手に息をかける。
これだけで温まるとは思えないが、しないよりマシだ。
厚手の手袋に手を入れて、しっかりとほうきの柄を握る。
「よし、行ってくるね」
気合を入れてほうきにまたがった。
玄関先に私を見送りに来てくれていた飼い猫の頭を撫でて、口の中で詠唱をした。
ふわり、と足元が浮かぶ。
「今日は3件だけだから、昼には戻ってこれると思うよ。行ってきます」
飼い猫がにゃあと返事をした。
浮いた足で地面を蹴るように空を撫でると、ほうきは私の意思のまま飛んでいく。
私は魔女の配達人。
早朝や午前中に荷物を受け取りたい人のために始めた宅配サービスはそこそこ好調だ。
「さあ、今日もがんばるぞ」
雲のない星のきれいな夜空を駆けて、まずは荷物の受け取りに向かった。
12/11『夜空を越えて』
12/12/2025, 9:34:05 AM