白銀に音を吸い込まれてしまったような静寂。
シーンという音すらない、真っ白な世界。
「はぁ……」
吐く息が白く溶けて消えていく。
白の中に見える青い影が、唯一僕の存在を示していた。
(これから、君を殺しにいく。出来るのかな?僕に)
腰に携えた剣は、ずっしりと今から捕らえに行く命の重みを表しているように重かった。
(でも、僕がやらなきゃ。……僕にしか出来ないことだから)
柄を握り直して、雪の中を進んでいった。
僕の親に似た存在の人に言われた使命。
この国を、世界を救うため、誰かが犠牲にならなくてはいけない。
(それが彼なのが納得いかないけれど)
雪に取られた足が、この先を進むのを引き止めるかのように重かった。
(でも、誰かに使命を譲るくらいなら、僕がこの手で彼を終わらせる。)
僕はその重みを振り払うように足を上げて、一歩また一歩と歩んだ。
(待っててね。必ず僕がこの手で君を終わらせるから)
声にならない願いは、雪原に飲み込まれる。
12/17『雪の静寂』
12/18/2025, 9:46:48 AM