そして、死ねなかった僕たちは
残念ながらまだ生きることになった。
希望は見いだせないけれど、
人生を諦めることを諦めた。
/10/31『そして、』
おはようと言うこと。
名前を呼ぶこと。
ごはんを一緒に食べること。
小さな愛はそこかしこに。
/10/30『tiny love』
『おもてなし』
裏があるからおもてなしなんだよと誰かが言った。
それでいうと、私は裏なしかもしれない。
うらもおもてもない。正面から見たままだ。
心からの真心を、裏なしのおもてなしをいたします。
/10/29『おもてなし』
心に燻った焔が消えない
「どうしてそんなところにいるの」
「誰といるの」
「どうして私には言えないの」
「どうして私も連れて行ってくれないの」
一度点ってしまった焔は息を吹きかけるくらいでは消えてくれない。
ぼうぼうと細いろうそくの上で怒り狂ったように暴れながら、灯火が揺れている。
私の心の焔。
恋している彼に嫉妬して、勝手に点いて燃えている。
彼を好きになればなるほど伸びるろうそくは、恋と嫉妬の焔が絶えず灯っている。
/10/27『消えない焔』
なぜ「生きて」いるのか
「自分」とはなんなのか
手のひらを見つめているこの「意識」はなんなのか
考え始めると
ボーっとして「自意識」がどこか別のところにあるように思える
もしかしたらここにはないのかもしれない
「生きている」とはなんなのか。
ふとした時に終わらない問いが始まる
/10/26『終わらない問い』
ふうーと息を吹きかけると、その先端は僕の息に合わせて揺れた。
もうひとつ。ふーっ。
「それ、楽しい?」
羽根に息を吹きかけられている当人がつまらなさそうに尋ねた。
「うん、楽しい」
僕は表情は変えぬまま答えて、もう一度ふーっ。
かれこれ10分はやっているだろう。
天使の彼女は自分の羽先をひたすら吹き続けられるという苦行に耐えている。
「わたし、何かしてていいかな?」
「もう少し我慢して。少しでも動くと揺れ方が変わってしまう」
僕が答えると、彼女は呆れてため息をついた。
/10/25『揺れる羽根』
コンコン、とノックの音が聞こえる。
私はそれに応えず耳を塞いだ。
今は誰にも会いたくないの。
コンココン、とリズムを変えてノックをされた。
会わないって言ってるでしょう。どこか行って。
私はノックの音に応えなかった。
ノックと無視。
何度か繰り返すも、それでも私は応えなかった。
ここは私だけの空間。
私だけの心。
無闇に開けるものではないの。
ノックの音が遠ざかってしばらく。
そぉーっと私は、私の秘密の箱にガチャリと鍵をかけた。
/10/24『秘密の箱』