『おもてなし』
裏があるからおもてなしなんだよと誰かが言った。
それでいうと、私は裏なしかもしれない。
うらもおもてもない。正面から見たままだ。
心からの真心を、裏なしのおもてなしをいたします。
/10/29『おもてなし』
心に燻った焔が消えない
「どうしてそんなところにいるの」
「誰といるの」
「どうして私には言えないの」
「どうして私も連れて行ってくれないの」
一度点ってしまった焔は息を吹きかけるくらいでは消えてくれない。
ぼうぼうと細いろうそくの上で怒り狂ったように暴れながら、灯火が揺れている。
私の心の焔。
恋している彼に嫉妬して、勝手に点いて燃えている。
彼を好きになればなるほど伸びるろうそくは、恋と嫉妬の焔が絶えず灯っている。
/10/27『消えない焔』
なぜ「生きて」いるのか
「自分」とはなんなのか
手のひらを見つめているこの「意識」はなんなのか
考え始めると
ボーっとして「自意識」がどこか別のところにあるように思える
もしかしたらここにはないのかもしれない
「生きている」とはなんなのか。
ふとした時に終わらない問いが始まる
/10/26『終わらない問い』
ふうーと息を吹きかけると、その先端は僕の息に合わせて揺れた。
もうひとつ。ふーっ。
「それ、楽しい?」
羽根に息を吹きかけられている当人がつまらなさそうに尋ねた。
「うん、楽しい」
僕は表情は変えぬまま答えて、もう一度ふーっ。
かれこれ10分はやっているだろう。
天使の彼女は自分の羽先をひたすら吹き続けられるという苦行に耐えている。
「わたし、何かしてていいかな?」
「もう少し我慢して。少しでも動くと揺れ方が変わってしまう」
僕が答えると、彼女は呆れてため息をついた。
/10/25『揺れる羽根』
コンコン、とノックの音が聞こえる。
私はそれに応えず耳を塞いだ。
今は誰にも会いたくないの。
コンココン、とリズムを変えてノックをされた。
会わないって言ってるでしょう。どこか行って。
私はノックの音に応えなかった。
ノックと無視。
何度か繰り返すも、それでも私は応えなかった。
ここは私だけの空間。
私だけの心。
無闇に開けるものではないの。
ノックの音が遠ざかってしばらく。
そぉーっと私は、私の秘密の箱にガチャリと鍵をかけた。
/10/24『秘密の箱』
無人島に行くならば
あなたとさいごを迎えたい
/10/23『無人島に行くならば』
ピュウと冷たい風が吹いた。
つい先日まで太陽が「この地は我が物ぞ」と言わんばかりに主張していたのに、最近は穏やかに微笑んでいる。
街の並木も少しずつ色づいてきて、季節はすっかり秋模様。
「涼しくなるのはいいけどさ、朝晩の寒暖差はどうにかしてほしいよね」
「風邪引いちゃいそうだよね」
皆さま、どうぞご自愛を。
/10/22『秋風🍁』
私はエスパーだ。
いつもテストのヤマが外れたり、二択でハズレを選びがちな私だけれど。
この予感は、当たる気がする。
校舎裏で、私を呼び出した彼が恥ずかしそうに視線を合わせ逸らししている。
(これは告白だ!)
いくらモテない、鈍い、女っ気ない私でも、このシチュエーションはわかる。
(告白だ……!)
彼の緊張が伝わるかのように私も心拍数を高めながら、告白されるのを今か今かと待ち構えていた。
「あの――」
(きた!)
何分経っただろうか。彼がようやく口を開いた。
「あの、高見さん、言いたいことがあるんだけど――」
「な、なにかなっ?」
思わずどもってしまう。
「高見さん、ずっと迷ってたんだけど。今度、高見さんちのお店に行ってもいいかな!」
「はい!え――?」
告白よろしく勢いに任せて言い切った花野くんは、顔を真っ赤にしていた。その言葉はラーメン屋をしている「うちの店に来てもいいか」。
同じく告白がくると思って(『告白』には違いないが)勢いよく返事をした私は、思わず問い返していた。
「いいの!?やった!ありがとう!」
「え、え?どういうこと?」
「ぼく、ずっと君のとこの店が気になってたんだ。でも同級生が行くの嫌かなって気になって、なかなか行けなくて……。でも君の許しを得たから、これで堂々と行けるよ!ありがとう!」
「え?あ、うん。お待ちしてます」
真っ赤な顔をして嬉しそうに言った花野くんの勢いに飲まれた私は、店員モードで返事をするのがやっとだった。
「なに、よ……」
恋愛の告白だと思っていた自分が恥ずかしい。
いやそれより、告白だと思わせるような態度で尋ねる方も悪い。わざわざ校舎裏に呼び出して言うことがそれだったのかと甚だ疑問に残る。
「乙女の純情を返せ!」
ショートカット故に揺らめきもしない髪が私の叫びに震えた。
これで私の予感はまたハズれた。
/10/21『予感』
「ねぇ、『friend』の綴りってどうやって覚えた?」
「え?『フリエンド』?」
「あははっ、やっぱり?」
君もそう覚えてたんだね。
他にも親近感がわくこといっぱいだ。
だから、友達の『フリ』はもう『やめ』にして、
「これからは、恋人になりませんか?」
/10/20『friend』