箱庭メリィ

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私はエスパーだ。
いつもテストのヤマが外れたり、二択でハズレを選びがちな私だけれど。
この予感は、当たる気がする。

校舎裏で、私を呼び出した彼が恥ずかしそうに視線を合わせ逸らししている。

(これは告白だ!)

いくらモテない、鈍い、女っ気ない私でも、このシチュエーションはわかる。

(告白だ……!)

彼の緊張が伝わるかのように私も心拍数を高めながら、告白されるのを今か今かと待ち構えていた。

「あの――」
(きた!)

何分経っただろうか。彼がようやく口を開いた。

「あの、高見さん、言いたいことがあるんだけど――」
「な、なにかなっ?」

思わずどもってしまう。

「高見さん、ずっと迷ってたんだけど。今度、高見さんちのお店に行ってもいいかな!」
「はい!え――?」

告白よろしく勢いに任せて言い切った花野くんは、顔を真っ赤にしていた。その言葉はラーメン屋をしている「うちの店に来てもいいか」。
同じく告白がくると思って(『告白』には違いないが)勢いよく返事をした私は、思わず問い返していた。

「いいの!?やった!ありがとう!」
「え、え?どういうこと?」
「ぼく、ずっと君のとこの店が気になってたんだ。でも同級生が行くの嫌かなって気になって、なかなか行けなくて……。でも君の許しを得たから、これで堂々と行けるよ!ありがとう!」
「え?あ、うん。お待ちしてます」

真っ赤な顔をして嬉しそうに言った花野くんの勢いに飲まれた私は、店員モードで返事をするのがやっとだった。

「なに、よ……」

恋愛の告白だと思っていた自分が恥ずかしい。
いやそれより、告白だと思わせるような態度で尋ねる方も悪い。わざわざ校舎裏に呼び出して言うことがそれだったのかと甚だ疑問に残る。

「乙女の純情を返せ!」

ショートカット故に揺らめきもしない髪が私の叫びに震えた。

これで私の予感はまたハズれた。


/10/21『予感』


「ねぇ、『friend』の綴りってどうやって覚えた?」
「え?『フリエンド』?」
「あははっ、やっぱり?」

君もそう覚えてたんだね。
他にも親近感がわくこといっぱいだ。
だから、友達の『フリ』はもう『やめ』にして、

「これからは、恋人になりませんか?」


/10/20『friend』

10/21/2025, 1:19:26 PM