モノクロに映る世界を 君はカラフルだという
/9/30『モノクロ』
きらりと光る薬指。
ぽとりと落ちた雫。
彼は精算すると言った。
私は甘んじてそれを受け入れた。
きらりと光る指輪。
ぽたりと落ちる薬指。
永遠なんて、あるはずがない。
彼は私の永遠を断ち切った。
永遠を誓った指輪は、離れた約束についたまま。
私の裏切りで、永遠は永遠ではなくなった。
/9/29『永遠なんて、ないけれど』
「わっ!どうして泣いてるの!?」
部屋に帰ってきた時、彼女が口元に手を当てて泣いていた。
両の目から涙がポロポロとこぼれている。
僕の声に驚いたようにこちらを向いた彼女は、はっとして両手を外した。
「え?」
ぺろっと舌を出して、彼女が言う。
「泣いてないよ。あくびしてただけ」
それを聞いて僕は心配が安堵に変わり、玄関にへたり込んでしまった。
驚いたように見えたのは、僕にあくびをしてるところを見られたからだと思ったかららしい。
/9/28『涙の理由』
「ココア入ったよ、休憩しよう」
「はーい」
引っ越しの荷解きの最中、今はまだ彼氏の声がキッチンから聞こえた。
同棲するための引っ越し。
これから2人で住んでいく。ソファや棚なんかも2人で選んだりして、我ながらどう見ても浮かれている。
結婚を視野に入れたこれからの暮らしは、いったいどうなるのだろうと期待と緊張の半々だ。
普段は仲がいい私たち。今まで一度もしたことないケンカをすることもあるのだろうか。
ケンカをした日は2人別々の部屋で寝たりして。その時はどっちがソファで寝るのだろうか。
またある時は――。
「こーら」
そんなことを考えていたら彼氏に声をかけられた。
「また考え事してただろ。冷めちゃうよ?いったん休憩にしよう」
軽く肩を叩かれて、現実に意識が戻される。
苦笑する彼氏は私の手を引いて、ダンボールだらけの部屋を出た。
キッチンのある部屋では、まだ私のココアと彼のコーヒーの入ったマグカップが湯気を立てていた。
/9/27『コーヒーが冷めないうちに』
もしも、もうひとつの世界があるとするならば――。
もしも、もうひとつの世界の僕が、告白をしたならば――。
君の世界は闇に包まれて、二度と明るくなることはないだろう。
僕は君の笑顔が好きだ。
君の世界を暗くしたくない。
だから僕は、君に嘘をついた。
「かわいそうに。君のお父さん、殺されちゃったんだってね」
赤く汚れた手を背中に隠したまま、僕は君に笑いかける。
もしもこの世界の僕がこのまま嘘を吐き通したならば、君はこれからも僕に微笑んでくれるのだろうか。
/9/26『パラレルワールド』
針が逃走劇をやめた時、長身が短針に追いついた。
時計の針が重なって、時計塔の鐘が鳴った。
「私、もう帰らなくては」
「待って!せめて名前だけでも」
「ごめんなさい。もう行かなくては」
鐘が鳴っている時に繰り広げられた、新しい逃走劇の始まり。
シンデレラは、王子の手を振りほどき、カボチャの馬車へと急いだ。
靴が片方脱げているのに気づかずに。
/9/25『時計の針が重なって』
「手を出して」
言われるがまま手を伸ばした。
差し出した手は勢いよく引かれて、ふわりと窓の外へ体ごと飛び出した。
落ちる、と思った体は、しかし重力に負けることなく空中へ浮かんだ。
「妖精を信じたからさ。妖精の粉で空が飛べるんだ」
彼はそう言った。
「さぁ、ネバーランドへ行こう」
彼は手を繋いだまま空の果てを指差した。
9/24『僕と一緒に』
曇ったグラスと同じように
僕の心には靄がかかっている
磨いても取れることのない曇り
太陽が降り注ぐ日は来るのだろうか
9/23『cloudy』