箱庭メリィ

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6/27/2025, 8:52:31 AM

「ゆうちゃん」

私を呼ぶ声は柔らかく、春の風のようだった。
それはいつの日か木枯らしになりすっかり枯れてしまった。

「ゆうこ」

いつからか、彼は私のことを下の名前で呼び捨てで呼ぶようになった。

彼とはクラスが変わり、そして彼の声も変わった。
彼は声変わりを迎えたのだった。

「ゆうちゃん」と呼んでくれたあの日は、私の14歳の誕生日だった。


/6/27『最後の声』

6/26/2025, 9:54:42 AM

たとえば、手をつなぐこと。
たとえば、一緒にごはんを食べること。
たとえば、車道を歩いてくれること。
たとえば、ドライブ中に飴を袋から出して渡してくれること。

どれも些細なこと。

いっしょに過ごしてくれることに、
「ありがとう」と小さな返愛を。


/6/26『小さな愛』

6/25/2025, 9:35:21 AM

空はこんなにも黒く曇っているが

私の心はもうすぐ晴れる

雨が上がって

虹が出る

空は

ずっと晴れてもいないし

いつか雨だって止む


/6/25『空はこんなにも』

6/23/2025, 6:02:02 PM

私の子どもの頃の夢。
それはお人形になること。

可愛い服を着飾ってもらって、
おしゃれな靴を履かせてもらって、
髪もアレンジしてもらったりして。

持ち主によって大事にされ方は変わってくるけれど、
子どもの手に渡ったって、その子なりの大事の仕方で
大切に、愛してくれると思うの。

私は、愛されるお人形になりたかった。

こんなに殴られたり、
髪を引っ張られたりするんじゃなくて。
同じ引っ張るにしたって、髪を結んでくれるような、
愛のある行動がよかった。


今は、半分夢が叶ったかな?

誰にでも愛してもらえるようになったの。
毎晩毎晩。
いや、夜だけでなく昼も。
呼ばれればいつだって、愛されに飛んでいくよ。
いつか愛してくれると信じていた母の代わりに
愛をくれる人たちの元へ。


/6/24『子供の頃の夢』

6/23/2025, 9:17:52 AM

朝。目が覚めたら、まだまどろみの中だった。
まどろみの中で知る、私は夢を見ていたのだと。

(誰かと手を繋いでいた。温かい――)

まどろみが浮かび上がっていく。

(隣にいたのは、青い瞳をした、大事な人――)

意識が、覚醒していく。

(その大事な人は、私にとても大事なことを言っていた――)

目が、覚めていく――。

(私の名前を呼んで、呼んで……。「大事なことだからね」って……。なんだっけ?思い出せない)

先程まで覚えていたはずの、大切だったはずの言葉が、朝の光に霧散した。

(とても大事なことだったのに。どうして。さっきまで覚えてたのに。あの人の顔も、もうおぼろげ……)

どこにもいかないでほしかった夢の記憶は覚醒とともに消え去り、昼には夢を見たことしか思い出せなくなっていた。


/6/23『どこにも行かないで』

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