箱庭メリィ

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朝。目が覚めたら、まだまどろみの中だった。
まどろみの中で知る、私は夢を見ていたのだと。

(誰かと手を繋いでいた。温かい――)

まどろみが浮かび上がっていく。

(隣にいたのは、青い瞳をした、大事な人――)

意識が、覚醒していく。

(その大事な人は、私にとても大事なことを言っていた――)

目が、覚めていく――。

(私の名前を呼んで、呼んで……。「大事なことだからね」って……。なんだっけ?思い出せない)

先程まで覚えていたはずの、大切だったはずの言葉が、朝の光に霧散した。

(とても大事なことだったのに。どうして。さっきまで覚えてたのに。あの人の顔も、もうおぼろげ……)

どこにもいかないでほしかった夢の記憶は覚醒とともに消え去り、昼には夢を見たことしか思い出せなくなっていた。


/6/23『どこにも行かないで』

6/23/2025, 9:17:52 AM