・時間管理能力
・寝なくてもいい体力
出来れば上記を補えるほどの時間とお金
7/21『今一番欲しいもの』
こういうお題は素直に書くと欲にまみれますね。
私の名前は、ただの識別番号だった。
私が「誰か」ではなく、私が「どれか」分かるためだけの「名前」。
番号で呼ばれることに何の疑問も持たなかった。
「それ」が私だったから。
けれどあなたは、腕に刻まれた私の「名前」を見て、別の読み方で呼んでくれた。
初めて呼ばれたけれど、違和感を覚えることはなかった。むしろしっくりきて、とても嬉しかったことを覚えている。
あなたに名前を呼ばれていると、これまで呼ばれてきた名前を思い出して苛立ちを覚えることが度々あった。
けれどその番号で、その並びだったおかげで、私はあなたにそう呼ばれることとなった。
それだけは、感謝してあげてもいいかな。
「 」
先を行くあなたに呼ばれた。
あなたが与えてくれた私の「名前」。
/7/20『私の名前』
とあるパロ。
遠い日の記憶。
昔々、お姉ちゃんと遊んだ記憶。
向こうでおかあさんが手を振っている。
大好きなふたり。
もう少し昔の記憶。
わたしは、鏡を覗いている。
一人で覗いているはずだったのに、時折わたしとよく似た顔の男の子と並んでいる。
おかしいな。わたしはずっと一人で遊んでいたはずのに。
――夢?
思い出そうとすると、ズキンと頭痛がした。
思い出してはいけない。
体がそう言っているように聞こえる。
でも、夢にしてはいやにハッキリとした痛みが、わたしを苛んでいる。
(あれは……夢の中のあなたは誰?)
優しい声の、あの人。
/7/17『遠い日の記憶』
復刻ゲームのとあるルートっぽく。
アカとアオをよろしく。
「ねぇ、もうこうやって会うの終わりにしない?」
男は飲んでいたワイングラスを置くと静かに言った。
「えっ?どういうこと?」
共に食事をしていた女は驚きのあまり顔を上げた。
今まで仲の良い恋人同士だったと思っていたところに、神妙な面持ちで言われた言葉に身構える。
右手のナイフにはたった今食べた肉のソースがついている。
「あのさ」
女は何を言われるのか緊張のあまり咀嚼もままならず、ほぼかたまりのまま肉片を飲み込んだ。
「結婚を前提に、一緒に棲みませんか?」
男は女の目を見て言った。その瞳は緊張に揺れている。
「えっ?」
女は想定外の言葉を言われて驚いている。
「あっ。あの、これ――」
男は慌ててジャケットのポケットから紺色の小箱を取り出した。その姿は女の見るいつもの少し情けない彼そのものだ。
「本当は一緒に選びたかったんだけど、びっくりもさせたくて――。結婚指輪は一緒に見に行こう」
差し出された小箱の中で光るシルバーが照明を反射して輝いている。
「僕と結婚を前提に、一緒に暮らしてください」
女の目か涙が一筋流れた。
今度は男が驚く番だった。
「あ、あんまり真剣な表情で何言うのかと思ったら……。別れ話かと思った……!」
女は泣きながら男に言った。この数分で感情をあちこちに揺さぶられたせいだ。
しばらく泣いて落ち着きを取り戻したところで、
「よろしくお願いします」
小箱を受け取り、男に指輪を通してもらった。
デザートのラズベリーソースがけのジェラートの酸味が、この数十分間の女の心模様を表しているようだった。
/7/15『終わりにしよう』
「おおきな、くりの、きのしたでー」
あなたとわたし、の歌詞で向かい合ったあなたと手をつなぐ。
「なかよく遊びましょ?」
そこにいるはずのない『あなた』の腕が伸びてきて、小さな少女の手は鏡の中に吸い込まれた。
おおきな くりの きのしたで
/7/14『手を取り合って』