「今晩は生憎の雨。織姫と彦星の逢瀬を見ることは難しいでしょう」
お天気キャスターが残念そうに告げた。
本当に残念なのかな?
二人は、二人きりのデートを見られたくなくて、雨のカーテンを引いたんじゃなかろうか。
/7/7『七夕』
何かマイナスなことを言うと
必ずプラスに返してくれる彼は
自分のことだけは
プラスに出来ずにいた
ぼくはそのことを知らないまま
彼をなくしてしまった
ぼくはどうしたらよかったんだろう
彼の最後の笑顔を見たのはいつだったっけ――?
/7/6『友だちの思い出』
誰だろう?
雲の切れ間からのぞくそれを
『天使のはしご』と言ったのは
/7/2『日差し』
ビルの隙間からかすかに見える光点。
それを星だと理解するには、ここは眩しすぎる。
店々を飾るネオンライトや看板。それらを避けるように路地を一本入っても、同じように明かりが続く。
ふらり。
導かれるようにとある店の看板が目に入る。
小さなスポットライトに照らされる看板。脇に立つフライヤーラック。
周囲のお店と変わりないような店なのに、何故か気になった。
地下に続く階段は薄暗く、普段の自分ならとても入ろうとは思わない。
けれど足を一歩踏み進めた。靴音が鳴る。
重ための扉を開いた。音と光が漏れてくる。
「いらっしゃいませ」
男性が気付き、こちらを振り返った。
柔和な笑みをたたえ、歓迎される。
「ようこそ。ここは欲望渦巻く星のない店。どうぞひとときの夢を――」
エスコートされた先は、外よりもまばゆい歌と踊りと演劇が織りなす絢爛豪華なステージだった。
/7/5『星空』
せっかくなので推しゲーオマージュ。
神様だけが知っている
この世界のすべて
神様だけが知っている
はずだったけれど
見守ることは出来ても
手助け出来るかは別だから
会いに行った時に恥ずかしくないような
生き方をしないといけないな
もしも目が合った時に
助けてもらえるように
/7/4『神様だけが知っている』
この道の先が
光っているのか
闇が待っているのか
わからないけれど
この道の先に
素敵な何かを置いていけるのは
僕次第だ
虹の彼方に
行けるように
/7/3『この道の先に』
夏になると弟を思い出す
よくソフトクリームやなんかの形に例えられるが
私はそんな楽観的なもの 思い浮かべられない
その昔 夢に見た
双子の弟
置いてきてしまった弟
彼は赤い池のそばで石を積んでいた
ひとつ ひとつ 積んでは
またひとつ
ある程度の高さまで積み上げると
彼が積んだ石の塔は崩れる
泣きそうな顔の彼を見つめていると
彼が顔を上げ わたしに気づいた
それから話をして
彼が私の双子の弟だということ
彼は生まれてからすぐに死んでしまったこと
彼の命は 二人共が犠牲になってしまうはずだったものの
代わりになったということ
色々なことを教えてくれた
そして親より先に死んでしまったので
ここで石積みをしていることを教えてくれた
彼はここで わたしを待っているのだと言った
双子の片割れ
わたしは 彼と ふたりでひとり
すぐにわたしもここに来ると言ったが
彼は首を横に振った
私がここに来るまで
ずっとこんなつらい目にあわせるのは嫌だったけど
弟を泣かせるのはもっと嫌だったから
私は生きることを決めた
私が行くまで 待っててね
/6/29『入道雲』
湿気の強いじめじめする部屋
雨のカーテンを開けたら
まぶしい太陽の外に出た
夏が来る
/6/28『夏』
どこかへ行きたいんだよね。
ここではないどこかへ。
どこでも行けるドアがあれば、
開けて駆け出していきたいほど。
けれど、ぼくはそんな青い希望なんて持っていないから。
せめて、君が呼んだらすぐに駆けつけるよ。
/6/27『ここではないどこか』
触れたら壊れてしまいそう。
細くて白くて儚げで。
だから硝子ケェスに容れておくのさ。
誰にも汚されぬよう、誰の手にも触れられぬよう。
僕がきみを破瓜(たべ)るまで。
/6/25『繊細な花』