箱庭メリィ

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6/26/2023, 6:59:01 PM

あなたと最後に会った日。

あなたはベランダでタバコを吸っていましたね。

「こんなとこで吸ってるとバレますよ」
「また校長に叱られますよ」

そんなことを言うとあなたは、いつものようにニヒルに笑って

「バレなきゃいいんだ」

と親指でタバコを弾いて灰を落としました。

どうしてか、その日に限って、その笑顔がとても寂しく見えました。
森の木々のおかげで陰る夕焼けが、よりそう見せたのかもしれません。

早く帰れと言われたので、教室を出ようとなんとはなしに扉に手をかけて振り向きました。
珍しく手を振って見送ってくれました。


あれが気のせいではなかったと気づいたのは、翌日の朝でした。
あなたはもうこの世にいないことが、朝礼で告げられました。


/6/26『君と最後に会った日』

6/25/2023, 9:46:09 AM

ただ心身ともに健康でありますように

迷いなく続けていられますように


/6/24『1年後』

6/24/2023, 6:59:47 AM

子どもの頃はただ信じるだけで良かった

疑うことなんて知らずに

騙されず騙さず
見聞きするものはすべて真実

だったのに――――


/6/23『子供の頃は』




これは夢だ。
わたしは今、夢の中にいる。

(これが明晰夢ってやつなのかな? だったら今すぐ覚めてほしい。なぜなら――)

何故なら今、わたしは何かに追われているから。
それが何なのかはわからない。
けど、とても怖い。

後ろを振り返って確認したいが、とてもそんな余裕はない。
もつれそうな足を懸命に動かして走る。走る。

(バス停のあるビルを曲がれば少しはまけるだろうか!?)

知らない場所のはずなのに、その先に何があるかを理解していたわたしは、まっすぐ行くと見せかけて角を曲がった。
追いかけてきた何かは目論見通りすごいスピードで直進していった。

(これで一安心)

路地の影から何かが通り過ぎるのを見て息を吐いた。
しかし頭の奥で警鐘が鳴っている。“わたし”ではないわたしが言っている。神視点のわたしが言っている。安心するのは早いと。

それを頭のどこかでわかっているのに、何かをまいて気を抜いた“わたし”は気づかなかった。

何かが過ぎた通りを背にし、路地を通り抜けようと前を向いた時。

“それ”は目の前にいた。
息を呑む。
形は同じだが先程と別の個体だと何故かわかった。
だが危機的状況は同じ。

(やばい!起きろ!起きろ!)

体が硬直する。動けない。
目の前の影のかたまりのような真っ黒い何かは、大きな口を開けてわたしを飲みこんだ。



夢から覚めたのは、飲み込まれる瞬間。
目覚めた私は、怖い夢を見た記憶しかない。
起こした体にパジャマが貼り付いている。

(私はなにから逃げていた――?)


/05/30『ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。』

6/20/2023, 9:34:11 AM

「あら、あなたも?」
「ええ。貴女もですか」

とある喫茶店の軒下で出会った。
二人は共に雨避けを探していた。

二人して軒先から滴る雫を眺めていると、背後に明かりがついた。
振り返ると、喫茶店のマスターらしき髭をたくわえた初老の男性がドアを開けて立っていた。

「こんばんは。雨宿りですか?」

マスターの言葉に二人は無断で軒下を借りたことを謝罪し、もう少し借りられないか尋ねた。

マスターは二人に少し待つよう言い、奥から傘を一本取ってきた。

「一本しか無くて申し訳ないが、こちらをお貸ししましょう。二人で差していきなさい」

二人は遠慮し合ったが、行き先が同じ駅なことが分かると、マスターの後押しもあり二人で傘を借りることにした。

二人を見送った後、喫茶店の明かりは静かに消えた。
駅までの道行で、二人が実は同じような悲しみを持った者同士だった話は、また今度。


哀合傘/6/19『相合傘』
  コーヒーをご馳走してもらうver.はいつか。

6/17/2023, 7:31:49 PM

あした、きょうよりも
じぶんを好きになることができたなら
それはすばらしいことだとおもう

あしたの好きのために
今日につながる未来を
悔いは残っても
引きずらないように

未来を信じられるのは自分だけ


/6/17『未来』




一年前は消えたいと思ってた
二年前は体が動かなかった
五年前はもう死にたいと思ってた

大丈夫
一歩ずつ
生き返ってきてる

人間になる

なるようになる
この体に慣れるまで
もうすこし

――とある病床に伏した少年の記録。


/6/16『一年前』

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