子どもの頃はただ信じるだけで良かった
疑うことなんて知らずに
騙されず騙さず
見聞きするものはすべて真実
だったのに――――
/6/23『子供の頃は』
これは夢だ。
わたしは今、夢の中にいる。
(これが明晰夢ってやつなのかな? だったら今すぐ覚めてほしい。なぜなら――)
何故なら今、わたしは何かに追われているから。
それが何なのかはわからない。
けど、とても怖い。
後ろを振り返って確認したいが、とてもそんな余裕はない。
もつれそうな足を懸命に動かして走る。走る。
(バス停のあるビルを曲がれば少しはまけるだろうか!?)
知らない場所のはずなのに、その先に何があるかを理解していたわたしは、まっすぐ行くと見せかけて角を曲がった。
追いかけてきた何かは目論見通りすごいスピードで直進していった。
(これで一安心)
路地の影から何かが通り過ぎるのを見て息を吐いた。
しかし頭の奥で警鐘が鳴っている。“わたし”ではないわたしが言っている。神視点のわたしが言っている。安心するのは早いと。
それを頭のどこかでわかっているのに、何かをまいて気を抜いた“わたし”は気づかなかった。
何かが過ぎた通りを背にし、路地を通り抜けようと前を向いた時。
“それ”は目の前にいた。
息を呑む。
形は同じだが先程と別の個体だと何故かわかった。
だが危機的状況は同じ。
(やばい!起きろ!起きろ!)
体が硬直する。動けない。
目の前の影のかたまりのような真っ黒い何かは、大きな口を開けてわたしを飲みこんだ。
夢から覚めたのは、飲み込まれる瞬間。
目覚めた私は、怖い夢を見た記憶しかない。
起こした体にパジャマが貼り付いている。
(私はなにから逃げていた――?)
/05/30『ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。』
6/24/2023, 6:59:47 AM