「また明日」
明日、いやこの後、いまこの瞬間に生きていることが奇跡なこの世界で人はその言葉を発する。
しかし人は「それ」をほぼ流れ作業のように話す。
だが「それ」は知っている。
彼らが心の奥の彼らでさえ気づかぬ場所で、また明日も生きてあえるように、また明日、笑顔で会えるようにと相手、そして自分への願いとして発していることを。
だから「それ」は口からふっと出てくるその音に合わせて、そっとまじないをかける。
彼らがまた明日も会えるように。そして、笑顔で会えるように。
久しぶりに朝がきた。
「おはよう!わたしちゃん!」
たくさんの懐かしい顔がわたしに話しかける。
ここは誰でも自由になれる世界。
髪型も顔も性格も、もちろん好きなようになれるし、どんなように過ごしたって自由。
みんなにとってもそれが普通で、それが壊れるなんて思ってもいない。
だけど朝がきたと思ったその世界は、突然真っ暗になった。
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気づけば夜になっていた。
外と部屋の境がわからないほどの暗闇のなかで、私はPCを開いた。
あてもなく画面をみていると、ふいに昔プレイしていたゲームを思い出した。
久しぶりにやってみようか。
そう思い起動すると、懐かしい優しい音楽が流れた。
このゲームでは自分のアバターを作って町の中を探検するのだ。
理想の自分をかたどったそれは、私にとって今でも理想の私だ。
もうずいぶんと前から起動させるのが億劫になっていたけれど。
『ゲームにログインしています……』
久しぶりに何をしようかなぁ、あのキャラは元気かな?なんて考えていた、その時。
『平素より「○○」をご利用いただき、誠にありがとうございます。このゲームは2022年11月をもちまして、サービスを終了いたしました。詳細についてはこちらをご覧ください。』
理想のあなた
『刹那』
大嫌いだと言った
そう言った刹那、あなたの声が響いた
まっすぐとした声だった
弾かれたようにあなたの目を見ると、あなたの目からは涙が溢れていた、でも強さを感じる目だった
でもやっぱり、優しさを隠せない目だった
あなたは私とは真逆だった
あなたの強い、大きな声
私の細い、小さな声
あなたのまっすぐと相手を見つめる目
私のなにもとらえられない目
なにもかも、あなたは私の欲しいものを持っていた
私はあなたが嫌いだった
でもそれ以上にあなたが大好きだった
大嫌いだと言った
ああ、こんなの本心じゃないのに
あなたが私になにか言っている
睨んでいるような目で私はあなたを見ていた
ちがう、こんな目を向けたいんじゃない
分かってる、私があなたを嫌いなのは自分のことが嫌いで嫌いで仕方ないから
そしてあなたが悪いところなんてひとつもないことも
それでもあなたは私を見捨てたりしなかった
私はいつまであなたを困らせるのだろう
大嫌いで、大好きなあなたを
刹那って言われてがーっと書いたから刹那要素が全然ない
なにか今までできなかったことをやって、いっぱい成長すること