卵を割らなければ

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1/29/2025, 1:09:24 AM

帽子かぶって

●依頼

村外れの荒れた土地にお化けが出るから退治してほしい。
現場の状況は以下の通り。

┃━┃━┃━┃━┃━┃━┃
  化 化 化 化 化
   お化け お化け
   火ノ玉 火ノ玉
  化 化 化 化 化
┃━┃━┃━┃━┃━┃━┃


●村長の家

「イヒ、イヒ、という気味の悪い笑い声がして、火の玉が飛びかい、お化けが出現するのです。どうかこの村をお助けください」
俺はテーブルに広げられた現場の見取り図に見入った。
「この縦棒(┃)と横棒(━)は?」
「ああ、これは祈祷師が結界を張ると言って、張り巡らせた柵です」
失敗に終わりましたが。そう言って村長は、ため息をついた。
「ふうむ。……ここは〔帽子をかぶって〕もらうか」
「え?帽子ですか?」
俺のひとりごとに村長が反応した。〔帽子をかぶる〕は専門用語だ。素人相手に説明する気はない。
「いや、なんでもない。わかった。この依頼、引き受けよう」


●村外れの荒れた土地

俺は夕暮れの道をひとり歩いていた。誰ともすれ違わない。さみしい村外れへと続く道。
「ここか」
俺は夕闇に目をこらして目標を確認した。
気味の悪い声、火の玉、お化け。柵。
全て見取り図の通りだ。

さっそく仕事に取りかかろう。
俺はアイテムボックスの中から【シロツメクサの冠】を取り出した。
――昼間の野原でのことを思い出す。

「ままー、あのおじさん何してるの?」
小さな子どもの大きな声。俺は顔をあげた。母親とおぼしき婦人とモロに目が合う。不審者を見る目だ。
「見ちゃいけませんっ」
婦人はガキの手を引くと足早に去って行った。
なんだと。俺はシロツメクサを片っ端から摘み取り、編んで、冠を作っているだけだ。失礼な親子め。まわりを見てみろ。女のガキどもが、楽しげに草花で冠を編んでるだろ。同じじゃないか俺と。違うとすれば、俺のほうが仕上がりが美しく、完璧なところだな。まったくもって上出来だ。店で買うとそれなりにするんだからな。俺の手先の器用さに見とれろ。あと俺は若い。

――不愉快な記憶を振り払う。
化け物め、おとなしく〔帽子をかぶっ〕てもらうぜ!
俺は【化】に近づくと【シロツメクサの冠】を5つ、フリスビーのごとく投げつけた。【シロツメクサの冠】は、うまいこと【化】の頭部にかぶさった。【化】はイヒ、イヒと声にならない声でうめいた。まずは5体完了。
その先に待ち受けているのは【お化け】が2体。奴らがオロオロしている隙に、華麗なさばきで〔帽子をかぶ〕せ、その向こうでイヒ?イヒ?と戸惑う【化】5体も同様に始末した。

『【化(気味の悪い笑い声】は
 【花(きれい)】に変化した!』

『【お化け(怖い)】は
 【お花け(謎)】に変化した!』

つまり、こんなふうに変化アイテムを頭にのせてやることを〔帽子をかぶせる〕というんだ。
今かぶせたのは【シロツメクサの冠】なので草だが、変化アイテムには種類があって、他に竹、雨、ウ、なんかがある。って俺は誰に説明してるんだ。

俺は次に【火ノ玉】を〔ハサミで切〕って、3つにわけた。
『【火ノ玉(ゆらゆら)】は
 【火(四大元素)】と
 【ノ(なにこれ)】と
 【玉(まんまる)】にわかれた!』

それから柵を引っこ抜き、【┃】を横に3つ、その上に重ねて【━】を縦に3つ並べた。
『【┃(縦棒)】と
 【━(横棒)】は
 【田(図形)】に変化した!』

んで【火ノ玉】から取り出した【火】と今作った【田】を並べる。
『【火(四大元素)】と
 【田(図形)】は
 【畑(種をまこう)】に変化した!』

そんでもって、あれをこうして、それをそうして(以下略)。
『【お花け(謎)】は
 【お花畑け(とってもきれい)】に変化した!』

よし完了だ。俺は村の宿屋に戻って寝た。


●ミッションコンプリート!!

┃━┃━┃━┃━┃━┃━┃
  化 化 化 化 化
   お化け お化け
   火ノ玉 火ノ玉
  化 化 化 化 化
┃━┃━┃━┃━┃━┃━┃


↓↓↓


┃━┃
  花 花 花 花 花
  お花畑け お花畑け

  花 花 花 花 花
┃━┃


●エピローグ

翌朝。
「いやー、すばらしい!お化けを退治して頂いただけじゃなく、花まで植えてくださるとは」
村長は満面の笑みで花畑けを眺めている。
「しかし柵がなくなっているようですな」
「退治にするのに必要だったんだ。それに柵なんかもういらんだろ」
「それもそうですね」
俺はたっぷり礼金をもらい村を後にした。

村が見えなくなった頃、俺はアイテムボックスから、こっそり拝借してきた柵を取り出した。ここからが本番だ。

まず【┃】を2本横に並べて、その上に重ねて【━】を2本縦に並べる。
『【┃(縦棒)】と
 【━(横棒)】は
 【口(ハコ)】に変化した!』

次に【火ノ玉】から入手した【玉】を取り出す。そいつに〔帽子をかぶせる〕んだ。鍋のフタを細工して作った変化アイテム【鍋のフタでウ冠】を。
『【玉(まんまる)】は
 【宝(きらきら)】に変化した!』

そして【宝】を【口】の中に納める。

テレレッテレー♪
『【宝箱(虹色)】が出現した!』

よし。
【宝箱】には鍵がかかっている。だが心配ない。俺は【火ノ玉】から入手した【ノ】を鍵穴に差し込み、宝箱をあけた。
そして念願だったレアアイテム【南無阿弥陀仏(お経)】と、超レアアイテム【孑孒(難読漢字)】をゲットした。

1/27/2025, 10:26:12 AM

小さな勇気

ち 小さな勇気が
い いるときってあるよね
さ さあ 今だよ!
な 何もせずにすませるのかい?
ゆ 許せなくなるのは嫌だ 自分を
う 嘘はつきたくないんだ 自分に
き 君にもそんなときがあるのかな

1/27/2025, 5:54:24 AM

わぁ!

※※※
蒸し器で蒸すよ イモムシパン
あけたらだめだよ 15分
蒸してるあいだは 無視してて

お腹の音が グーグーグー
キッチンタイマー ピピピピピ

よしできた!
さあフタを あけてみよう
わぁ!ふくらんだ イモムシパン
わぁ!うれしいな イモムシパン
わぁ!おいしそう イモムシパン

イモ虫パンは おいしいね
てまひまかけると おいしいね
またイモ虫を つかまえよう
今度のおやつは なにつくる?
今度はこねて イモ虫まんじゅう


――S子著「小鳥の歌」p.64 小鳥の食卓より


※※※
【著者あとがきより抜粋】
"私はある朝、小鳥のさえずりが意味のある言葉に聞こえた。心をしずめ、耳をすます。すると鳥たちは、実にさまざまなことを歌っていた。これは、私が10年にわたり書きとめた小鳥たちの言葉の記録である。"


※※※
「小鳥の歌」好評発売中!

1/25/2025, 2:10:30 PM

終わらない物語

オムレツを作ろうと冷蔵庫にひとつだけ残っていた卵を割ったら、中からヒヨコがでてきた。
ヒヨコはみるみるうちに成長して鶏になってしまった。コケコッコーと元気よく鳴くと、卵を産み、窓から庭へと飛び出していった。
私は卵を拾った。しかたない。この産みたての卵を使うか。

私は気を取り直して、再びオムレツを作ろうと卵を割った。すると中からヒヨコがでてきた。またか!
ヒヨコはみるみるうちに成長して鶏になってしまった。コケコッコーと元気よく鳴くと、卵を産み、窓から庭へと飛び出していった。
私は卵を拾った。なんということか。他に卵はないし、この産みたて卵を使う以外、選択肢はない。

えいっ、三度目の正直だ。今度こそオムレツを作るべく卵を割ったら、またもや中からヒヨコがでてきた。ピヨピヨ!
ヒヨコはみるみるうちに成長して鶏になってしまった。コケコッコーと元気よく鳴くと、卵を産み、窓から庭へと飛び出していった。
私はあぜんとして卵を拾った。


それから何回卵を割ったことだろう。窓の外、庭は数えきれないほどの鶏でいっぱいだ。
もはやヒヨコしか出てこないのかもしれない。けれど次の1個はふつうの卵かもしれないし。そう思うと、ここで終わりにはできなかった。
いったい、私はいつになったらオムレツにありつけるのだろう。いいかげんお腹がすいた。

1/24/2025, 1:35:31 PM

やさしい嘘

スープには

や さ し い う そ

が溶けていて

や さ   い

をすくって

おいしいと言う

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