2023/2/16
ここの所毎日一通ずつ手紙が届く。
10年後の私(らしい人物)から届いた手紙をチラリと見た。宛名の筆跡は私のものと酷似している。だれかの悪戯というのが妥当な判断だ。消印まで10年後になっているのだから何とも手の込んだ悪戯である。封筒からハガキまで何通も。正直そろそろ鬱陶しい。捨てるのもなんなのでお焚き上げの依頼でもしようか。
2023/2/12
荒廃した地を前に唇を噛む。樹海とまで言われた広大な森は見る影もない。
遠きあの日、点けられた炎が舐めるように広がり毒を撒かれ、人はおろか全ての生き物が生きてはいけぬ土地にされた。
「いつかこの場所で再会しよう。」
「ああ。必ず。」
森から逃げる際そう友と約束を交わした。『いつか復興を』希望を胸に掲げ千年。
「もう千年だぞ」
ここは未だ雑草の1本さえ生えぬ不毛の地のままだ。
2023/2/10
定期的に花が届く。今日届いたのはジキタリスだ。前回は鈴蘭。遡るとスノードロップ、水仙、夾竹桃。全て有毒植物である。鳥兜やダチュラ、曼珠沙華と何とも分かりやすいラインナップの時もあった。
『死ね』
花束に明確な悪意を潜ませて。わざわざ一種の花でブーケになる量を用意するのにはいつもながら恐れ入る。仄暗い執念の塊をじっと見た。
(辺境の地に追いやるだけでは不十分らしい。)
しかし直接、間接問わず自分の手を汚したくないのだろう。だから花を送ってくるのだ。
2023/2/9
「笑って笑って~。スマ~イル。」
写真屋のお姉さんが人形や玩具を駆使し何とか私を笑わそうとしている。しかし元々へそ曲がりの私は頑として笑わない。というか面白くもないのに笑えない。それを見ている両親は頭や胃の辺りを押さえている。痛いのだろう。そんな私に対し職人魂というか商売魂という物に火が付いたお姉さんがあの手この手と繰り出してくる。何とも引き出しの多い人だ。プロ根性が凄まじい。
笑えない。笑えない。もうここまで来たら意地でも笑うつもりはない。更に口をへの字に曲げガンを飛ばす。最早5歳児とは思えない形相になってしまった。最終的にこの形相で七五三の記念撮影は終了した。勿論両親は平謝り。後に、
「あれは悪鬼のようだった。」
「天邪鬼ってあんな顔だろうな。」
と語り草になった。
2023/2/8
念入りにシミュレーションをして記憶する。
(どこにも書けないことだし)
概要さえも露見したらとてつもなくまずい。なので計画は細部にいたるまで頭の中にきっちり叩き込んでおくのだ。紙面にはメモ書き、走り書き程度すら残さない。まして殺人計画表なんて絶対作らない。