貴女と僕。
心の響き。
交わす瞳。
揺れる水面。
鼓を叩いて赤らめる頬にそっと触れて、
ふと俯いた視線が起きるまで見つめる。
鼻先にかかる吐息が言葉に変わっても、
僕らの世界は時が止まったまま。
雑踏と灯りの賑やかな地上にできた、
僕らの世界は見えない壁で縁取られている。
暖かな人肌で寂しさを熱らせ、
寒夜と忘れそうな温もりに雑音も閉ざされた。
貴女と僕。
心の響き。
交わす唇。
二人の夜。
【heart to heart】
口伝や書物では味わえないものがある。
未知が既知になったとき、人はその黄金の瞬間に立ち会う。
夢見ていたこと、それはいつか辿り着きたいと願う場所。
一度の生ならばその目に照らしてみよ。
老いさらばえても、思い出とは味わい深くなるもの。
セピアに染まることなく、自分だけのアルバムは輝き続けるのだから。
人よ。旅をせよ。
世界は君の未知で満ちている。
求めて心を掴まれたまえ。
夢を抱いて進むのだ。
【まだ見ぬ景色】
焦がれるように惹かれ、
だが二度と叶うことはなく、
なおも貴方は思いを募らせる。
彼女に触れて溶けゆく心を、
いかに内に秘めようとしても、
かすかに綻んで手を取り合い、
奪われるがままついていくことを。
天藍の空が広がる草原で君たちは、
童心にかえって彼方へと舞い進む。
やがて額を合わせ、囁き合い、
日が眠るまでのひとときを長く思えたであろう。
一度も唇を重ねることはなく、
吸い込まれるがままに見つめ合う。
その狭間にできた、決して叶わないもの。
貴方は夢から覚めた頃には、
その答えをすでに知っている。
言葉にせずとも、その形がどのようなものかを知っている。
だからこそ貴方は密かに希う。
この身も心も沈んでも構わない。
彼女にまた会えるのなら、
何か一つ、手放してしまっても構わない。
どうかもう一度、もう一度あの時に戻しておくれ。
あの続きをどうか、私を二度と目覚めさせないようにしておくれ。
どうか、どうか。
私を夢の淵へと落としてくれ。
【あの夢のつづきを】
***
あけおめことよろ。
マイペースに書いてくヨ。
穂が揺れる。風で揺れる。
照る陽は穏やかに、空も晴れやかに。
朱も花もない地で実り、細波のようにこすり合う。
肌を撫でる寒空もすぐそこに。
縁側で煎茶を傍らに、眺めるひと時ももう暫し。
穂が揺れる。風で揺れる。
刹那の季節に、心も揺れる。
【ススキ】
僕たちは終わりを知っている。
それがどんな形かを知っている。
僕らにもいつかやってくる。
ない物ねだりに永遠を欲しがる心を持ったまま、
僕らは今日も生きてゆく。
その日まで、永遠にね。
【永遠に】