味醂風調味料

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7/30/2023, 4:20:01 PM


みゃあみゃあ
みぃみぃ
猫用ソファーに寝転がる小さな命たち

「可愛いねぇ、かぁわぁいいぃ~」

私の飼い猫が仔猫を産んだ。
三匹の仔猫たちは父親要素はどこに忘れたらしく、母猫によく似ていた。
あまりにも可愛いものだから、近しい人たちに天使と称して親馬鹿よろしく自慢していたところ、仔猫たちを見てみたい、と駄々こねまくられてしまったため連れて来た友人だが。
すっかり目の前の小さな命にメロメロ、通り越してデロデロだ。
弱々しい小さな身体、ふわふわの体毛、無垢なピンク色の口元。
幼いながらに魅惑のボディを持つ天使たちはつるりとした真ん丸な目で不思議な物を見つけたと言わんばかりにじっと友人を見ている。警戒心は無いのかな君たち。

「あぁ~、ホントに天使。何コレ尊い、見てるだけで清らかになるわマジ天使」

発言が相変わらず可笑しなことになっているが、いつものことだし気にしない。
語彙が乏しくなっているのは、私も一緒だしね。

「見てよ見てよ、この円らな瞳、澄みきってて見てる私が汚物みたいでマジごめんって感じ。はぁ尊い」

分からないこともない。ホントに無垢、純粋な感じ。穢れを知らないって言うのか、見えるもの全てが初めましてだからか好奇心も見えるけど、やっぱり澄んでるっていうのは分かる。
分かるけど、

「ママはどんな感じ? やっぱり美猫? この仔たちみたいに綺麗な顔なんだろうな」

言うべきか言わざるべきか、後ろからこちらを見ている母猫の冷やかな表情。
大人になってしまった彼女の胡乱げな眼差し、かつての澄んだ瞳など最早過去のものでしかないのだ。
この天使たちもいずれ無垢を忘れ、母と同じように世界を知り、大人になってしまうのだろうな。

「はあああ、1日の時間が足りない。この命たち永遠に見てられるわ」

誠に時の流れとは残酷である。

7/29/2023, 4:24:52 PM

あの山羊と狼のようになれとは言いませんが、同じ人間同士なのですから。
馴れ合えとは言いません、相性の問題もありますから。
渡せなんて言いません、貴方の命も守るべきです。

でも、やって良いことと悪いことはあるのです。
攻撃してはいけません、反撃されても仕方ないです。
排除してはいけません、皆のための場所なのです。
強奪してはいけません、奪われるのは嫌でしょう。

「こんな非常事態でも、変わんないねあの人」
「そうだね」
「雨にも負けず、風にも負けずの精神か」
「悪い意味でね。あ、連れてかれた」
「まぁ、限度ってものがあるからね」

助け合えとは言いません、最低限のモラルは守りましょう。
命の危機に見捨てられるのは、嫌でしょう?











(なんか中途半端で不穏なので、もしかしたら消すかも)

7/28/2023, 4:46:50 PM


「良かったら一緒に行かない? 神社のお祭り」

学校が夏休みに入ってから全く接触もなかったクラスの男子。
課題のために久しぶりに来た図書館で会うとは思ってもいなかった。
さらにお誘いを受けるなんて、青天の霹靂ってやつ?
正面の席に着いた彼は、どこか気恥ずかしそうに私の返事を待つ。

去年と一昨年のお祭りは親友と行ったから、今年もそうなるかな連絡来るかな、なんて考えていた所だ。
まさか、まさかのデートのお誘い。

今まで恋愛とか乗り気になれなかったのもあって、彼氏の一人もいない私。
親友には、男の影が一切ないのもどうなのよ、なんて小馬鹿にされたのもつい最近。
見返してやるべきか、私だってその気になれば!

「悪いけど、友達と一緒に行く予定なの」
「そっか分かった、じゃあね」

残念そうに立ち去る背中を見ながらスマホを取り出し、メッセージアプリを開く。
いつも通り、一緒に遊ぶ予定が立っているはずだ。ついでに話題のネタにしてやろう。

--ねぇ、今年のお祭りさ、待ち合わせどうする?
--ゴメンね、言ってなかった
--何が? まさか行けない?
--最近付き合った人と行くことになった

乱暴に席を立ち、荷物をまとめて彼の姿を追った。
外に出て、目の前の横断歩道の渡った先に見つけるも、何と呼べばいいか分からない。
そういえば名前、何て言うんだったか。

「ちょっと待って!!」

距離があったので叫んでしまったが、幸い周りには人はいない。
立ち止まりこちらを見る彼に勢いのまま叫び続けた。

「予定が変わったの、お祭り一緒に行こう!」

はっきり言って、理由は不純だ。自分のプライドのために彼を利用しようとしている。我ながらなんて奴だ。
親友に見せつけてやろうと、私だってすぐに男を捕まえられることを分からせてやると。

なのに、

「ありがとう!!」

向こうの歩道で頬を赤らめ嬉しそうに笑う姿に強い衝撃を受けた。
心臓の鼓動が早い、顔がやけに熱い、胸が締め付けられるような感覚、一体どうした私!?

ああ、なんて約束したの私。
当日は何を着れば良いの、可愛い浴衣なんて持ってない、髪とかめっちゃ痛んでるし、メイクはまだしもアクセサリーとかバッグとかお祭り向けの良いのあったっけ??
いやいや何考えてるのさ。そもそも名前も連絡先も分からない、顔見知り程度の相手なのに、めっちゃデート楽しみにしてるみたいじゃない!
ああああ、こっちに戻ってくる、めっちゃ嬉しそう可愛い、可愛いじゃない違うそうじゃなくて!!
笑われるの覚悟で相談するしかない??
私より経験値高いんだから乗ってくれるよね!?

親友教えて! こんな時どうすれば良いの!!??

7/27/2023, 4:47:14 PM


――初めまして、神様です。私の願いを叶えてください――


「は?」
部屋で寛ぐオレの目の前に突然現れた知らない誰か。
見た目は普通のサラリーマンみたいだ。スーツを着ている男性、営業で見かけるような、ホントに普通の。
その人物の第一声に思考停止、からの再起動まで数十秒。
そして発言に対する自分の返答はたったの一文字。

――私の願いを叶えてください――

「いや、何で?」
意志疎通が出来ない、そもそもするつもりはあるのかコイツ。
自分のことを神とか言ったけど、頭ヤバい奴?
その前にどうやって部屋に入ってきた?

――私の願いを叶えてください――

別に神の存在を否定するつもりは無いが、こんな野暮ったい神がいてたまるか。何者だコイツ。
扉には鍵が掛かっているし、窓も閉めてる。
そんな部屋のど真ん中に、全く気配なく音も立てずに現れた。
おまけにコイツの口は動いていない、なのに声は聞こえる。
今も繰り返しオレに願い続けてくる。

――私の願いを叶えてください――

あれか、エスパーってやつか。神様よりまだ信じられる。

「いや信じられねぇ」
神やエスパーの存在を信じてない、という話ではない。仮にホントに神だとしても、神を自称するエスパーだとしても、平々凡々な一般市民のオレより出来ることは多くあるはずだ。何でオレに請うんだよ神様エスパー様が、可笑しいだろ。
何か裏がある、そういう意味での信じられねぇ、だ。

いや待てよ、逆だよな。普通だったらオレの願いを聞いて叶えて、その対価か代償が法外に、って流れなら裏があると言える。
だが相手は願いを叶えてくれと言っている、どういうことだ?
意味分からん、何なんだコレ夢か。そういえば寝転がってたなオレ、なるほど夢か。
しかし夢なら意味不明なのも納得だな、もういいや。

「ああもう、何だよ願いって」

開き直って聞いてみれば、視線があちこちに、何だかもじもじし始めた。

――……しと………を…………に………さい――

「? 何て言った、聞こえねぇ」
さっきみたいにはっきり言ってくれ、急に何だよボソボソと。
泣きそうだし、顔も赤くな、いや待て嫌な予感がする。

――……私と、結婚を前提に、付き合ってください――

「はぁ!?」

予想外にも程がある内容に思わず声が裏返る。
いくら夢でも意味不明が過ぎる、オレの頭どうなってるの??
真っ赤な顔でソワソワとしながら、オレの返事を待っている自称神様。
恋する乙女みたいな顔で見ないで、いやトキメキとかじゃなくて困ってるの!
やめてオレはノーマルなの! 女の子が良いの!!
ちょっと待って寄ってくるな、近づくな!
開き直ってる場合じゃない、夢なら早く醒めて!!

――私の願いを叶えてください――

最初の台詞を言いながら、近づいてくる自称神様。
神様から助けてくれる奴っている??
混乱と困惑と、少しの恐怖からみっともないが思わず叫ぶ。


「だ、誰か助けてぇー!!」

――助けましょうか?――



お前からだよ、ばか野郎!!!

7/26/2023, 4:23:38 PM


「いいな、それ」
「ズルいな、私も欲しい」
「アンタには似合わないよ」

これをあげる、それもあげる、どれが欲しい?
周りに請われるだけ与えてきた。
貴方たちの喜ぶ顔で私は充分なの。
嬉しいでしょう、楽しいでしょう。

「やっぱり要らない、要らないってば」

あらあら、遠慮しなくていいのに。

「あんな人だと思わなかったの」

ちょっと違った? 別の人を用意しましょう。

「御免なさい、許して」

泣くほど嬉しかった? 盗もうとするくらい欲しがってたからね。
私は気にしてないのよ、貴方がこんなに喜んでいるのだから。

嬉しいでしょう? 楽しいでしょう? そうでしょう?

私に満たされる貴方の人生が更に豊かになるように、これからも与え続けましょう。
幸せでしょう?
貴方たちのためにこれからも尽くすわ。
幸せでしょう?






幸せって言え

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