味醂風調味料

Open App


みゃあみゃあ
みぃみぃ
猫用ソファーに寝転がる小さな命たち

「可愛いねぇ、かぁわぁいいぃ~」

私の飼い猫が仔猫を産んだ。
三匹の仔猫たちは父親要素はどこに忘れたらしく、母猫によく似ていた。
あまりにも可愛いものだから、近しい人たちに天使と称して親馬鹿よろしく自慢していたところ、仔猫たちを見てみたい、と駄々こねまくられてしまったため連れて来た友人だが。
すっかり目の前の小さな命にメロメロ、通り越してデロデロだ。
弱々しい小さな身体、ふわふわの体毛、無垢なピンク色の口元。
幼いながらに魅惑のボディを持つ天使たちはつるりとした真ん丸な目で不思議な物を見つけたと言わんばかりにじっと友人を見ている。警戒心は無いのかな君たち。

「あぁ~、ホントに天使。何コレ尊い、見てるだけで清らかになるわマジ天使」

発言が相変わらず可笑しなことになっているが、いつものことだし気にしない。
語彙が乏しくなっているのは、私も一緒だしね。

「見てよ見てよ、この円らな瞳、澄みきってて見てる私が汚物みたいでマジごめんって感じ。はぁ尊い」

分からないこともない。ホントに無垢、純粋な感じ。穢れを知らないって言うのか、見えるもの全てが初めましてだからか好奇心も見えるけど、やっぱり澄んでるっていうのは分かる。
分かるけど、

「ママはどんな感じ? やっぱり美猫? この仔たちみたいに綺麗な顔なんだろうな」

言うべきか言わざるべきか、後ろからこちらを見ている母猫の冷やかな表情。
大人になってしまった彼女の胡乱げな眼差し、かつての澄んだ瞳など最早過去のものでしかないのだ。
この天使たちもいずれ無垢を忘れ、母と同じように世界を知り、大人になってしまうのだろうな。

「はあああ、1日の時間が足りない。この命たち永遠に見てられるわ」

誠に時の流れとは残酷である。

7/30/2023, 4:20:01 PM