味醂風調味料

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「良かったら一緒に行かない? 神社のお祭り」

学校が夏休みに入ってから全く接触もなかったクラスの男子。
課題のために久しぶりに来た図書館で会うとは思ってもいなかった。
さらにお誘いを受けるなんて、青天の霹靂ってやつ?
正面の席に着いた彼は、どこか気恥ずかしそうに私の返事を待つ。

去年と一昨年のお祭りは親友と行ったから、今年もそうなるかな連絡来るかな、なんて考えていた所だ。
まさか、まさかのデートのお誘い。

今まで恋愛とか乗り気になれなかったのもあって、彼氏の一人もいない私。
親友には、男の影が一切ないのもどうなのよ、なんて小馬鹿にされたのもつい最近。
見返してやるべきか、私だってその気になれば!

「悪いけど、友達と一緒に行く予定なの」
「そっか分かった、じゃあね」

残念そうに立ち去る背中を見ながらスマホを取り出し、メッセージアプリを開く。
いつも通り、一緒に遊ぶ予定が立っているはずだ。ついでに話題のネタにしてやろう。

--ねぇ、今年のお祭りさ、待ち合わせどうする?
--ゴメンね、言ってなかった
--何が? まさか行けない?
--最近付き合った人と行くことになった

乱暴に席を立ち、荷物をまとめて彼の姿を追った。
外に出て、目の前の横断歩道の渡った先に見つけるも、何と呼べばいいか分からない。
そういえば名前、何て言うんだったか。

「ちょっと待って!!」

距離があったので叫んでしまったが、幸い周りには人はいない。
立ち止まりこちらを見る彼に勢いのまま叫び続けた。

「予定が変わったの、お祭り一緒に行こう!」

はっきり言って、理由は不純だ。自分のプライドのために彼を利用しようとしている。我ながらなんて奴だ。
親友に見せつけてやろうと、私だってすぐに男を捕まえられることを分からせてやると。

なのに、

「ありがとう!!」

向こうの歩道で頬を赤らめ嬉しそうに笑う姿に強い衝撃を受けた。
心臓の鼓動が早い、顔がやけに熱い、胸が締め付けられるような感覚、一体どうした私!?

ああ、なんて約束したの私。
当日は何を着れば良いの、可愛い浴衣なんて持ってない、髪とかめっちゃ痛んでるし、メイクはまだしもアクセサリーとかバッグとかお祭り向けの良いのあったっけ??
いやいや何考えてるのさ。そもそも名前も連絡先も分からない、顔見知り程度の相手なのに、めっちゃデート楽しみにしてるみたいじゃない!
ああああ、こっちに戻ってくる、めっちゃ嬉しそう可愛い、可愛いじゃない違うそうじゃなくて!!
笑われるの覚悟で相談するしかない??
私より経験値高いんだから乗ってくれるよね!?

親友教えて! こんな時どうすれば良いの!!??

7/28/2023, 4:46:50 PM