るな鳥23

Open App
1/28/2025, 9:05:52 AM

今、私は人生の分かれ道にいる。
私の想い人のあの人の記憶に残れるか、否か。
パッとしなくて冴えなくて、鈍臭い人生だった。
けれど掃いて捨てられる教室の隅のホコリみたいな私に、暖かく微笑みかけてくれたあの人の、記憶に残りたくて沢山努力をしてきた。
化粧水の付け方に、ヘアオイルやヘアムスクの使い方、それから血色を良くするメイク方法も学んで……。手紙を書くために字の練習もした。
どうやらその努力は今実を結んだようで、下駄箱に入れた手紙のおかげであの人は呼び出した校舎裏へと来てくれた。
あぁ、嬉しい。
テストで満点を取った時のような高揚感が私を抱きしめる。けれどまだその時じゃない。これからなんだ。
あとは、勇気をだして1歩を踏み出すだけ。
大丈夫。私なんかでもここまで来たんだ。最後のひと押し、頑張れる。
勢いよく真冬の冷たい空気を肺にめいいっぱい取り込み、ぐっとお腹に力を入れて真っ直ぐ見つめ声を上げる。

「あなたの事がずっと、ずうっと好きです!」

そう言った直後にあの人がバッとこちらを見る。
あの人と私の目線が交わるその時、
私は1歩を踏み出し屋上を飛び降りた。





【お題:小さな勇気】

1/26/2025, 7:48:11 AM

会社が終わった帰り道。私は、上機嫌に夜道を歩いていた。周りから見たら完全に変人である。しかし今日の私がこんなに上機嫌なのは理由がある。何を隠そうッ!今日はッ!給料日だからだァッ!財布が潤沢になって嬉しくない人間などいないだろう。だから自分のこの、鼻歌を歌いながら歩いている行動は何らおかしいところは無いと謎に自分に言い訳しつつ目的地のコンビニへと着いた。コンビニ手数料は痛いが24時間いつでも引き出せる魅力的な機体からお金を引き出すと同時に、魔法のカードを買う。所謂、プリペイドカードだ。コンビニで買うものはカードだけだが会計中、ふとレジ横にあるおでんが目に入った。

「スミマセーン。ちくわと、玉子と、大根と、あとは…。」

などと、おでんを買っていたら合計金額はすっかり想定していた金額よりも倍になってしまっていた。物価が上がっている現実をひしひしと感じつつ、そんな嫌な現実を一刻も早く忘れるべく家へと急いだ。


家へ着くなりコートを脱ぎ捨て、カバンを放り投げる。レジ袋にはおでんが入っているのでそっと置く。そして素早くシャワーを浴び、先程買ったおでんと一緒に米を口の中へ勢いよくかき込む。あとは寝るだけとなった今は、私の私による私のための時間となったのだ。もう誰にも止められないぜ。
私は素早くスマホを起動し、先程買ってきたプリペイドカードを入金してからアプリを起動する。今私が1番ハマっているゲームだ。今日は丁度、月額制のサブスクシステムが切れる日なので更新するために課金する必要があるというわけだ。今月も無事に課金し終わったので、とりあえずゲーム内のお知らせを確認する。するとそこには新規コラボの告知があり、私の推しキャラクターの新コスチュームが表示されていた。なんと……、なんと素晴らしい……!今日も生きていてよかったと感情が高まり、ゔっ……ゔうっと私は汚い泣き声を上げた。これは絶対出さなくてはいけない、なぜなら推しだから推しな為ならいくらでも金を出す。いや、出させてください。貢がせてください!と私はカバンを拾い中から通帳を見る。運が良ければ素うどん生活withもやしをしなくても大丈夫そうだと胸を撫で下ろす。
あぁ尊い。今日も推しが生きている。そして私が生かされている。こうして誰かが、私がお金を入れ続ける限り一生終わらないでいてくれるのだろう。例えこの身が破産しようとも、借金をしてでも私はこのゲームにお金を入れ続けるだろう。このゲームを、推しの物語を終わらせないためにも。







【お題:終わらない物語】

1/19/2025, 2:48:34 AM

ねェ、チョット!そこの人!少しさァ、暇つぶしにでも自分の話聞いてくんない?


良かったァ〜。モウ、暇で暇で仕方なかったんだ。
自分、妄想癖があってよく大好きコンテンツの夢創作とかカップリングとかを妄想してたりするのね。だけどたまに現実のコトでも妄想するんだよ。
例をあげるとするなら、エ〜トね、今日の晩御飯は鮭が出てきて塩が浮くくらい沢山ふりかけられて塩気のあるシャケとご飯を一緒に食べて〜……みたいな感じね。

でもたまにその妄想が現実と区別つかなくなるコトってない?自分はたま〜にあるんだよね。
例えば……、そのシャケ食べた気になって晩御飯はもう食べたって勘違いしちゃうっていう……ボケ老人みたいなこと。

特に理由は無いけれど、何となくにこれはいけないかもって危機感を感じちゃって。だから最初は妄想する癖を直そうとしたんだ。だけど無理だった。暇な時にサァ、何考えればいいのかわからないんだよね。暇な時って、みんな普段何考えてるのかなァ?

1回で直せたら苦労ないよねってことでプランBだ!ということで妄想する内容を変えようと考えたんだ。現実じゃァ絶対有り得ないことを妄想しようと。それなら流石に現実との区別ぐらい着くでしょう?それでもやっぱり気を抜くと現実味のあることを妄想してしまっていたんだ。ダメだ〜、と思ったら尚更やっちゃう……、みたいな感じで。だからグンッとハードルを下げて大好きコンテンツのお気に入りのキャラクターがもしも現実にいたら……。という具合に妄想しようと思って。面白そうだし、ありえないでしょ?

けど次第に妄想が記憶に残るようになっていったの。何言ってんの?って言われそうだけど、現実に起きた事実に絶対にありえない妄想が、そのキャラがその事実の記憶にいるんだ。自分と友人で海鮮を食べに行った時にそのキャラがいるんだ。仲良さそうに会話なんてしててさ。エェ〜…。わからないって?フィーリングで何とかならない?……そっかァ。ダメか。マァ、でもね。最初のうちは気にしなかったよ。最初のボケ老人よりみたいなムーブよりはましかなって思ってさ。


ウン。やっぱりそうだよね?全部自分の妄想だよね?だからこれまで過ごした生活も妄想かもしれないなァって思ってさ……。そう思うと今までの自分って何だろう……。アァ、看護師さーん。病院のベッド硬いし、そろそろ家のベッドで寝たいナァって。ダメ?
ンー、もうねェ誰も彼も、ドコからドコまで、妄想と現実の区別なんてつかないのかもしれないよねェ……結局のところ。


お題無視

1/12/2025, 3:30:14 PM

ぱたぱた、ぱたぱたという誰かの足音で目を開く。いつの間にか共有スペースのソファで寝落ちしてしまっていたようだ。自分は吸血鬼の王だと言うのに、人目に付く場所で眠りこけるなど恥ずかしい……と考えていたら次第に足音が大きくなってきた。よく聞くと足音は3人分あるようだ。一体誰が来るのだろうか、もういっその事このまま寝たふりして驚かしてやろうかなと考えているうちにガチャリとドアノブを回す音が聞こえ、反射的に寝たフリをしてしまった。薄目で確認するとやはりというか、おにいさんとステリアともう1人いる。もう1人はおにいさんの影になって誰かわからないが、おにいさんやステリアに隠れられる位のヒーローと言ったらテスラやメグメグといった少年少女だろうか。驚かせるタイミングを図る為に様子を暫く伺う。しかし、3人の会話は全くと言っていいほど途切れないのだ。それに自分と話している時より楽しそうなのが気に食わない。さっさと突撃してしまおうと思ったその時、自分の名前が聞こえた。一体、おにいさん達は誰と話しているの?と驚きと困惑が胸を満たした時、もう1人が見えた。間違えるはずがない。自分と瓜二つの容姿と片眼鏡。あれは、あれは……!

「レヴィ!」

自分の声に驚いて目が覚める。いつの間にかリスポーン地点で眠っていたようだ。今の自分は吸血鬼の王だと言うのに人目に付く場所で眠りこけるなど恥ずかしい……と考えていたら足音が聞こえ、それは次第に大きくなってきた。これはまるで先程まで見ていた夢と同じではないか、まさか予知夢というものか?いや有り得ない、レヴィは……。しかし、この不思議なシステムならば起きてはおかしくない。そう思い期待に胸をふくらませながらおにいさんを待つ。寝たフリを続けているとやはりというか、おにいさんとステリアがいた。しかし自分が期待したもう1人の人物はいなかった。

「ラヴィ。お疲れ様、トマトジュース用意したから帰ろう。」

「ラヴィちゃん。お疲れ様、お姉さん特製ポーションもあるよ〜。疲れが取れるから絶対飲んでね。」

そう声をかけられ今まで自分は何を考えていたのだろうと自嘲する。レヴィはもう元の姿には戻らないけれどすぐそばにいるじゃないか。過ぎてしまったことはもう元には戻らない。だからこそ今を大切にしなくてはいけないのだ。レヴィを、ステリアを、そしておにいさんを、ずっと変わらず一緒にいるためには、ラヴィが最強だってことを周囲にわからせてあげなくちゃいけない。そうすればもう誰も自分たちを襲ってくることは無いからだ。けれど、けれども、願わくばあの夢の続きを──







あの夢の続きを

1/6/2025, 4:14:21 PM

「ぬくぬくだねぇ〜。お蜜柑食べる?」
「やった!食べる!やっぱりコタツ最高だねお姉ちゃん。」

今隣で蜜柑を向いてくれているのはステリア。最初に、自分のことをお姉ちゃんと呼んで欲しいと言われた時はそれはもうすごく驚いた。それに、恥ずかしさが勝って呼べなかったし、甘えることもなかった。それが今はどうだろうか?普通にお姉ちゃんと呼ぶし子供のように蜜柑を剥いてもらっている。それだけ彼女と過した3年間が如何に濃かったのかがわかる。

「剥けたよ〜。はい、あ〜ん。」

あれこれ考えているうちに剥けたようだ。このお姉ちゃんはどうやら世話を焼くのが好きらしく、隙あらば甘やかしてくる。

「も〜。流石に自分で食べれ」
「えっ…」

しかし、この歳になって食べさせてもらうのはさすがに恥ずかしいので断ろうとした。その瞬間、今までご機嫌に蜜柑の皮を剥いていたのに、捨てられた子犬みたいにしゅんとして見ていて可哀想な雰囲気になってしまった。

「そうだよね。ちゃんと自分で食べられるよねごめんね。」

まるで自分が悪いみたいな空気が出ているが、蜜柑を食べさせてもらうのを断っただけである。なんともいたたまれなくなってしまったので自分は、

「…。やっぱり食べさせて欲しい…な?」

と言ってしまった。すると刹那にして顔が晴れやかに、元気になった様子でこちらに丁寧に剥かれた蜜柑を差し出してきた。

「はい、あ〜ん。」
「あ〜…」

自分に蜜柑を食べさせることが出来てご満悦といった様子だった。伊達に初手でお姉ちゃんと呼ばせてくるだけあって、この1回だけでなく次も食べさせる気満々で蜜柑を構えている。流石だ。
蜜柑を咀嚼しているとぽつりとステリアが言葉をこぼした。

「私ね、こうやって、穏やかに過ごせるのがね、すごーく嬉しいんだ。」

「初めて出会った時から、君はたくさん頑張っていたよね。だからこそ沢山おねえさんは甘やかしたくなっちゃうの。」

「だからね、君と一緒に居たいから、君のこと守らせてくれないかな?」

真っ直ぐにこちらを見つめ、ステリアは優しく微笑んだ。直後、「あらたまって言うと恥ずかしいね。」なんて吐露してから、また食べさせようとしてきた。自分はステリアから蜜柑を食べてからステリアに向き合って自分の気持ちを伝える。

「自分もステリアお姉ちゃんと一緒にいたい。だから、これからも強くなって守れるくらい強くなって、お姉ちゃんくらい大きくなる。その時はお祝いにぶどうジュース飲もうね。」

自分の気持ちを伝えるというのは想像以上に恥ずかしく、俯いて顔が発火しそうなくらい熱くなるのを感じた。ちら、と目線だけでステリアを見てみるとステリアは嬉しい様な感動している様ななんとも言えない表情だった。すると、不意に暖かく柔らかいものが当たった。ソレを理解するよりも先にステリアが言葉を発した。

「ありがとう。その気持ちがすごく、すごーっく嬉しいな。君と出会えて本当に良かった。」

「でも、無理するのはダメだからね?おねえさんと約束だよ?」

そう告げるとステリアは離れて小指を差し出してきた。それに答えるように自分の小指をステリアの小指と絡める。

「「ゆーびきーりげーんまーん。うーそついたら、はーりせーんぼんのーます。ゆーびきった!」」





君と一緒に

Next