今、私は人生の分かれ道にいる。
私の想い人のあの人の記憶に残れるか、否か。
パッとしなくて冴えなくて、鈍臭い人生だった。
けれど掃いて捨てられる教室の隅のホコリみたいな私に、暖かく微笑みかけてくれたあの人の、記憶に残りたくて沢山努力をしてきた。
化粧水の付け方に、ヘアオイルやヘアムスクの使い方、それから血色を良くするメイク方法も学んで……。手紙を書くために字の練習もした。
どうやらその努力は今実を結んだようで、下駄箱に入れた手紙のおかげであの人は呼び出した校舎裏へと来てくれた。
あぁ、嬉しい。
テストで満点を取った時のような高揚感が私を抱きしめる。けれどまだその時じゃない。これからなんだ。
あとは、勇気をだして1歩を踏み出すだけ。
大丈夫。私なんかでもここまで来たんだ。最後のひと押し、頑張れる。
勢いよく真冬の冷たい空気を肺にめいいっぱい取り込み、ぐっとお腹に力を入れて真っ直ぐ見つめ声を上げる。
「あなたの事がずっと、ずうっと好きです!」
そう言った直後にあの人がバッとこちらを見る。
あの人と私の目線が交わるその時、
私は1歩を踏み出し屋上を飛び降りた。
【お題:小さな勇気】
1/28/2025, 9:05:52 AM