会社が終わった帰り道。私は、上機嫌に夜道を歩いていた。周りから見たら完全に変人である。しかし今日の私がこんなに上機嫌なのは理由がある。何を隠そうッ!今日はッ!給料日だからだァッ!財布が潤沢になって嬉しくない人間などいないだろう。だから自分のこの、鼻歌を歌いながら歩いている行動は何らおかしいところは無いと謎に自分に言い訳しつつ目的地のコンビニへと着いた。コンビニ手数料は痛いが24時間いつでも引き出せる魅力的な機体からお金を引き出すと同時に、魔法のカードを買う。所謂、プリペイドカードだ。コンビニで買うものはカードだけだが会計中、ふとレジ横にあるおでんが目に入った。
「スミマセーン。ちくわと、玉子と、大根と、あとは…。」
などと、おでんを買っていたら合計金額はすっかり想定していた金額よりも倍になってしまっていた。物価が上がっている現実をひしひしと感じつつ、そんな嫌な現実を一刻も早く忘れるべく家へと急いだ。
家へ着くなりコートを脱ぎ捨て、カバンを放り投げる。レジ袋にはおでんが入っているのでそっと置く。そして素早くシャワーを浴び、先程買ったおでんと一緒に米を口の中へ勢いよくかき込む。あとは寝るだけとなった今は、私の私による私のための時間となったのだ。もう誰にも止められないぜ。
私は素早くスマホを起動し、先程買ってきたプリペイドカードを入金してからアプリを起動する。今私が1番ハマっているゲームだ。今日は丁度、月額制のサブスクシステムが切れる日なので更新するために課金する必要があるというわけだ。今月も無事に課金し終わったので、とりあえずゲーム内のお知らせを確認する。するとそこには新規コラボの告知があり、私の推しキャラクターの新コスチュームが表示されていた。なんと……、なんと素晴らしい……!今日も生きていてよかったと感情が高まり、ゔっ……ゔうっと私は汚い泣き声を上げた。これは絶対出さなくてはいけない、なぜなら推しだから推しな為ならいくらでも金を出す。いや、出させてください。貢がせてください!と私はカバンを拾い中から通帳を見る。運が良ければ素うどん生活withもやしをしなくても大丈夫そうだと胸を撫で下ろす。
あぁ尊い。今日も推しが生きている。そして私が生かされている。こうして誰かが、私がお金を入れ続ける限り一生終わらないでいてくれるのだろう。例えこの身が破産しようとも、借金をしてでも私はこのゲームにお金を入れ続けるだろう。このゲームを、推しの物語を終わらせないためにも。
【お題:終わらない物語】
1/26/2025, 7:48:11 AM