「ぬくぬくだねぇ〜。お蜜柑食べる?」
「やった!食べる!やっぱりコタツ最高だねお姉ちゃん。」
今隣で蜜柑を向いてくれているのはステリア。最初に、自分のことをお姉ちゃんと呼んで欲しいと言われた時はそれはもうすごく驚いた。それに、恥ずかしさが勝って呼べなかったし、甘えることもなかった。それが今はどうだろうか?普通にお姉ちゃんと呼ぶし子供のように蜜柑を剥いてもらっている。それだけ彼女と過した3年間が如何に濃かったのかがわかる。
「剥けたよ〜。はい、あ〜ん。」
あれこれ考えているうちに剥けたようだ。このお姉ちゃんはどうやら世話を焼くのが好きらしく、隙あらば甘やかしてくる。
「も〜。流石に自分で食べれ」
「えっ…」
しかし、この歳になって食べさせてもらうのはさすがに恥ずかしいので断ろうとした。その瞬間、今までご機嫌に蜜柑の皮を剥いていたのに、捨てられた子犬みたいにしゅんとして見ていて可哀想な雰囲気になってしまった。
「そうだよね。ちゃんと自分で食べられるよねごめんね。」
まるで自分が悪いみたいな空気が出ているが、蜜柑を食べさせてもらうのを断っただけである。なんともいたたまれなくなってしまったので自分は、
「…。やっぱり食べさせて欲しい…な?」
と言ってしまった。すると刹那にして顔が晴れやかに、元気になった様子でこちらに丁寧に剥かれた蜜柑を差し出してきた。
「はい、あ〜ん。」
「あ〜…」
自分に蜜柑を食べさせることが出来てご満悦といった様子だった。伊達に初手でお姉ちゃんと呼ばせてくるだけあって、この1回だけでなく次も食べさせる気満々で蜜柑を構えている。流石だ。
蜜柑を咀嚼しているとぽつりとステリアが言葉をこぼした。
「私ね、こうやって、穏やかに過ごせるのがね、すごーく嬉しいんだ。」
「初めて出会った時から、君はたくさん頑張っていたよね。だからこそ沢山おねえさんは甘やかしたくなっちゃうの。」
「だからね、君と一緒に居たいから、君のこと守らせてくれないかな?」
真っ直ぐにこちらを見つめ、ステリアは優しく微笑んだ。直後、「あらたまって言うと恥ずかしいね。」なんて吐露してから、また食べさせようとしてきた。自分はステリアから蜜柑を食べてからステリアに向き合って自分の気持ちを伝える。
「自分もステリアお姉ちゃんと一緒にいたい。だから、これからも強くなって守れるくらい強くなって、お姉ちゃんくらい大きくなる。その時はお祝いにぶどうジュース飲もうね。」
自分の気持ちを伝えるというのは想像以上に恥ずかしく、俯いて顔が発火しそうなくらい熱くなるのを感じた。ちら、と目線だけでステリアを見てみるとステリアは嬉しい様な感動している様ななんとも言えない表情だった。すると、不意に暖かく柔らかいものが当たった。ソレを理解するよりも先にステリアが言葉を発した。
「ありがとう。その気持ちがすごく、すごーっく嬉しいな。君と出会えて本当に良かった。」
「でも、無理するのはダメだからね?おねえさんと約束だよ?」
そう告げるとステリアは離れて小指を差し出してきた。それに答えるように自分の小指をステリアの小指と絡める。
「「ゆーびきーりげーんまーん。うーそついたら、はーりせーんぼんのーます。ゆーびきった!」」
君と一緒に
1/6/2025, 4:14:21 PM