エリンギ

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2/9/2025, 11:58:25 AM

【君の背中】
※微薔薇

「おはよう」
朝起きると、隣で君が笑っていた。
「は…?」
どうして。だって君は、
「死んだのにって思ってる?」
視線を写真に向けながら君は言う。仏壇なんて大層な物はうちにはないので、即席でそれっぽい場所を作った。白い百合と好きだったお菓子を前にして笑うその顔が、どんなに恋しかったか。
「会いに来ちゃったっ」
無邪気な声は、まるで不幸なことなどまるでなかったようだった。でも、
「あ」
その背中には、美しい羽が生えていた。よく見ると頭の上には、天使の輪らしき物が浮かんでいる。それらが確固たる証拠として、君が存在しないことを訴えてくる。
「ふふ、似合ってる?」
似合っているけども。何度天使と思ったか分からないけども。
「僕さ、幸せだったよ」
不意に遠い目をして、君が言った。
「一緒に過ごせただけで、本当に幸せだった」
「でも、俺のせいで、」
あの日の光景が思い出される。俺が横断歩道で落としたハンカチを拾ってくれていたとき、信号無視のトラックが突っ込んで来たのだ。
「違うよ、そんなことない。」
滲んだ視界の中で君は、強い眼差して言った。
「大好きな人と沢山の思い出を作れたから、感謝しかないよ。本当に、ありがとう」
あ、時間みたい。
半透明になった君の背中には、純白の翼が輝いていた。

fin

2/8/2025, 12:15:33 PM

【遠く…】

遠く、遠く離れた貴方を追いかけて、

私はここまで来たんです。

そう言えるように、

明日も頑張ろうと思う。

羨望と尊敬を込めた眼差しで、

ずっと見つめていたんです。

そう言うには、

まだ遠いけど。

いつか、隣に並びたい。

fin

2/7/2025, 10:52:38 AM

【誰も知らない秘密】
※エリンギ大好き【バイバイ】の2人です。【やさしくしないで】も合わせてお楽しみ下さい!

僕には、誰も知らない秘密がある。
否、“この国の”誰も知らない秘密である。
それは、両親が死んだ理由についてのことだ。
10歳の頃まで、僕は隣国に住んでいた。繰り返す戦争の相手国だ。両親は国家の重要機関に勤めていて、いわゆる「エリート」だった。
僕はその年頃にしては頭が良い方で、将来的には父と同じ役職かそれ以上に着けるんじゃないかと噂されていた。気づけば、最年少での機密情報部隊入りが現実味を帯びてきていた。
両親はきっと、それが気に入らなかったのだろう。
ある日僕は、新品の銃を買い与えられた。そして母はこう言ったのだ。
『それで私達を撃ちなさい』
驚いた僕は、そんなことできるわけがないと銃を捨てようとした。しかし父に平手打ちを食らう羽目になり、怖くてぼろぼろ泣いた。
『いいから撃て!それとも死にたいのか!』
父の怒号に責められるように、僕は引き金を2回引いた。
気付いた時には取り返しのつかないことになっていた。僕は両親殺しの罪で処刑されかけたが、幼いからと国外追放に留められた。それでも今までは優しかった人々から罵声を浴びさせられ、僕の心は荒んでいった。

時が経ち、僕はこの国の兵士として育成されることとなった。訓練場で見つけた彼は、周りから距離を置いているようだった。自分が傷つかないよう来るものを突っぱねる様子が、あまりにも少し前の自分に重なった。この瞬間僕は、この人の為にも優しくあろうと誓ったのだ。
「ねぇ、君何歳?」
暫くの沈黙の後返ってきたのは、僕の年齢と同じ数字だった。そのことに運命的なものを感じる。
「え、同い年だ!」
汚れた過去はしまっておこう。もしかしたらいつか話せるかも、なんて。
でもその相手は君がいいな。

fin

ああ、1話完結のつもりで始めた仇が…

2/7/2025, 8:00:03 AM

【静かな夜明け】

目を開けると、窓の外はまだ薄暗かった。
パイプ椅子に座ったまま寝てしまったらしい。体のあちこちが痛む。
半分程閉められたカーテンを開けると、乾いた音と共に微かな光が差し込んだ。無機質な部屋が照らされ、白いベットに横たわる人物がぼんやりと映し出された。
その目は、硬く閉じられている。
もう何ヶ月、兄の目を見ていないだろう。茶色がかった瞳は、涼し気な一重に良く映えていた。
「おはよう、お兄ちゃん」
呼びかけは応えられることもなく、重たい空気に溶けていく。兄の声が聞けないことに、今更ながら寂しさを覚える。
「あ」
ふと外を見ると、丁度太陽が昇ってくるところだった。
濃い藍色を切り裂くように、ゆっくりと光が溢れ出す。空は徐々に朝を取り戻していた。
「綺麗」
思わず呟いた…のは、僕では無かった。
「え?」
声がした方を振り返ると、兄の細い目に光が映っていた。
「嘘、え、お兄ちゃん、起きた?」
状況が飲み込めず慌てる僕に、兄は優しい笑みを浮かべて言った。
「おはよう」
その少し掠れた声は、間違いなく大好きな兄のもので。
僕らにも、静かな夜明けが訪れたようだった。

fin

2/5/2025, 10:49:31 AM

【heart to heart】

執筆中…

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