【誰も知らない秘密】
※エリンギ大好き【バイバイ】の2人です。【やさしくしないで】も合わせてお楽しみ下さい!
僕には、誰も知らない秘密がある。
否、“この国の”誰も知らない秘密である。
それは、両親が死んだ理由についてのことだ。
10歳の頃まで、僕は隣国に住んでいた。繰り返す戦争の相手国だ。両親は国家の重要機関に勤めていて、いわゆる「エリート」だった。
僕はその年頃にしては頭が良い方で、将来的には父と同じ役職かそれ以上に着けるんじゃないかと噂されていた。気づけば、最年少での機密情報部隊入りが現実味を帯びてきていた。
両親はきっと、それが気に入らなかったのだろう。
ある日僕は、新品の銃を買い与えられた。そして母はこう言ったのだ。
『それで私達を撃ちなさい』
驚いた僕は、そんなことできるわけがないと銃を捨てようとした。しかし父に平手打ちを食らう羽目になり、怖くてぼろぼろ泣いた。
『いいから撃て!それとも死にたいのか!』
父の怒号に責められるように、僕は引き金を2回引いた。
気付いた時には取り返しのつかないことになっていた。僕は両親殺しの罪で処刑されかけたが、幼いからと国外追放に留められた。それでも今までは優しかった人々から罵声を浴びさせられ、僕の心は荒んでいった。
時が経ち、僕はこの国の兵士として育成されることとなった。訓練場で見つけた彼は、周りから距離を置いているようだった。自分が傷つかないよう来るものを突っぱねる様子が、あまりにも少し前の自分に重なった。この瞬間僕は、この人の為にも優しくあろうと誓ったのだ。
「ねぇ、君何歳?」
暫くの沈黙の後返ってきたのは、僕の年齢と同じ数字だった。そのことに運命的なものを感じる。
「え、同い年だ!」
汚れた過去はしまっておこう。もしかしたらいつか話せるかも、なんて。
でもその相手は君がいいな。
fin
ああ、1話完結のつもりで始めた仇が…
2/7/2025, 10:52:38 AM