どこか遠くのまちへ行きたい、と言うあなたが
果てのない空を見上げるものだから
すこし心配になってしまう
柔らかな風が吹いて髪がゆれ、
陽の光があなたのまつげを照らす
遠くを見据えたその瞳に
わたしの姿はあるのだろうか
あの日々のことを、
君はまだ覚えているのでしょうか。
駅から離れた住宅街、
その一角に小さな公園をみつけた。
申し訳程度に輝く月の下で
ブランコはひっそりと佇んでいた。
錆びて赤茶けた鎖、
ペンキが剥げた木材。
そんなものに何故か、惹かれてしまう。
およそ子供の遊ぶものではないほど朽ちているが、
どうやら私のような人間を待っていたように感じる。
キィ、と音をたててブランコを漕いでみる。
就活用のリクルートスーツではすこし窮屈だ。
大人げないことだと分かっているけれど
やめられない。ブランコとはそういうものなのだ。
数分ほど漕いだのち、急にばからしくなってきた。
パンプスのつま先に土がついている。
あーあ、帰ったら手入れしなきゃ。
そう思って立ち上がる。
見上げた先には、
歩いていた時には見つけられなかったスピカがあった。
地上からの反射で妙に赤く色付いた空の上で、
スピカだけがただ、月と同様そこにあった。
なんだか私みたいだ、と感じた。
たった1人で就活をして
疲れ切っていたのかもしれない。
ブランコに乗って幼心を思い出したのかもしれない。
明日はまた面接。
今日とさして変わりないスケジュール。
でも一つだけ言えることがある。
明日はきっといい日になるよね。
どこまでも藍い空といつまでも続く路
その上をローファーで歩もう
踏みしめるたびに音を立てる砂
遥か遠くに見えるアルタイル
あの星にたどり着くまで歩こうと決めた
わたしの行く先にあるのは砂埃だけ
地平線の向こうまで続く一点透視
たどり着くことは出来なくても
そこへ向かって歩みを進めることなら
きっとできるはずだ
この旅が終わる頃にはきっと
あの星もいまより近くなっているはずだよね
君へ
毎日勉強を頑張れているのは君のおかげです。
君が頑張っているなら私も頑張ろうと、
そう思えます。
どうにか頑張って君と同じ学校に行きたいけれど
今の私の学力では難しいかもしれません。
でも待っていてください。
だんだん成績が上がってきていて
授業内容の理解も以前よりスムーズになりました。
これからも努力を怠らずにやっていきたいと思います。
せめて君の同僚になれる日までは
ひとまず頑張ってみます。
きっと、いえ、必ず。
君のとなりを歩いてみせます。