駅から離れた住宅街、
その一角に小さな公園をみつけた。
申し訳程度に輝く月の下で
ブランコはひっそりと佇んでいた。
錆びて赤茶けた鎖、
ペンキが剥げた木材。
そんなものに何故か、惹かれてしまう。
およそ子供の遊ぶものではないほど朽ちているが、
どうやら私のような人間を待っていたように感じる。
キィ、と音をたててブランコを漕いでみる。
就活用のリクルートスーツではすこし窮屈だ。
大人げないことだと分かっているけれど
やめられない。ブランコとはそういうものなのだ。
数分ほど漕いだのち、急にばからしくなってきた。
パンプスのつま先に土がついている。
あーあ、帰ったら手入れしなきゃ。
そう思って立ち上がる。
見上げた先には、
歩いていた時には見つけられなかったスピカがあった。
地上からの反射で妙に赤く色付いた空の上で、
スピカだけがただ、月と同様そこにあった。
なんだか私みたいだ、と感じた。
たった1人で就活をして
疲れ切っていたのかもしれない。
ブランコに乗って幼心を思い出したのかもしれない。
明日はまた面接。
今日とさして変わりないスケジュール。
でも一つだけ言えることがある。
明日はきっといい日になるよね。
2/1/2022, 12:08:38 PM