夜景
瞬く星々と、
優しい、白の光で私に微笑む月、
光に溢れる街並み。
その全てが優しく、私たちを眠りの国に誘う。
目を閉じれば、
優しい夢の国へ誘われるだろう。
けれど、この美しい一時の風景を逃すのが惜しく
今もなお、眺め続けている。
もう少し、もう少しでいいから…
このまま、一瞬の中に全ての幸せがあるのだから。
だから、もう少しこのまま儚い夢とならないように、
この時間を切り取るかのように、
瞼の裏に焼き付けるように、
もう少しだけ、
消えないで…
花畑
少し冷たさが残る春の風に揺れる花々
その真ん中まで歩みを進めると、
空の上に登ったような錯覚を覚える。
優しい甘さを含んだ風が頬を掠め、
ポカポカと太陽が見つめている。
鼻から鼻へ蝶は飛び回り、蜂はせっせと花粉を集める
花々と空の境界線さえ曖昧になり、
時間の経過によって、
それらの同色と夕暮れの橙、
夜空の藍から黒へと、
そのコントラストもまた綺麗に映る。
寂しさも、幸せも、
全てを包み込み、優しく慰めるような景色が
瞳に映っている。
そんな場所、唯一の場所…
空が泣く
悲しいことがあった日。
嬉しいことがあった日。
狐の嫁入りの日。
強く、激しく、切なく、晴れ渡るように泣く。
時たまに、涙が溢れ私たちに届くまでに凍り
優しい雪となる。
全てを飲み込み、覆い隠してしまう雪に…
白に戻った世界は、春の優しい雨で色鮮やかになる
そんなことを雨の日に思う。
優しい雨音は眠気を誘い、
全てのものに休息を。
寒い日の雨は恋人たちや、家族の中をより近くに感じ
秋の雨は、恵みをもたらす。
雨はいつだって、いろんな感情を運んでくれた。
寄り添ってくれていた。
だから、私はそんな優しい空の涙が好きなのだ。
君からのライン
君からののラインを待っている。
朝の何気ない挨拶。
お昼の面白かったこと。
夜のお疲れ様。
その一つ一つが大切で、かけがえないものである。
人によっては、何がそうなのかと首を傾げられるだろう
しかし、その何気ない日常こそが大事なのだと
繰り返しの毎日こそが奇跡なのだと…
何もかもが簡単になくなる
そんな毎日を生きる内に気がついた。
大切にしよう。
その何気ない言葉を、
表情を、
その全てを…
命が尽きるまで
私は息をしよう。
大切な人たちに別れの挨拶をしよう。
月と太陽、星々に感謝を捧げよう。
何気ない日々を瞼の裏に焼き付けておこう。
身の回りの整理をしよう。
後悔が残らないように日々を過ごす、
それが最も簡単そうに見えて、割と難しい。
後悔も。懺悔も。幸福も。切なさも。
何をしようともここには何も残らない。
自分がいたという事実が徐々に消えていく。
わかっている。
できれば、皆の悲しみが一刻も早く終わりを迎えるよう願っている。
しかし、同時に相反する思いが私の中にある。
たとえわがままだと言われても、
自分は最後までその心に住みたいと…
そう思うんだ。我儘だとわかっているのに、ね?
せめて、少しだけ。
この命が燃え尽きるまでの間ほんの少しでいいんだ。
そこにいさせて。
あなたと明日を見ることが叶わないけれど、
せめてこの最後の夜だけはあなたの隣で…眠らせて