涙の理由
「ごめん、」
この言葉を聞いた途端、目尻が熱くなった
やばい、
「あ、ありがとう、またねっ…」
わたしにはこれで精一杯だった
すぐにわたしはその場を離れた
静寂に満ちた、校内
外からは部活の声が聞こえてくる
その瞬間、わたしの涙は溢れた
ずっと、ずっと、ずっと、好きだった
あなたの太陽みたいな笑顔も
さりげなく優しいところも
全部、全部、全部っ…
好きだったなぁ…、
わたしの初恋は、呆気なく、
だけど確実に、幕を閉じた
コーヒーが冷めないうちに
「さあ、召し上がれ」
目の前に出されたカップに入ったこげ茶色の液体
湯気がふわりと浮いている
「あら?コーヒーは嫌いだったかしら?」
目の前にいる、可愛らしい女の人が
不安そうに尋ねてくる
「い、いいえ…」
せっかく出してくれたんだ
冷めないうちに飲まなきゃ
でも…、
飲む前に、ちゃんと話しておかなきゃいけないことが
ある
"わたしの……罪を…、"
『コーヒーが冷めないうちに』
時計の針が重なって
約束の時刻になる
二人きりの教室
夕焼けに照らされている放課後の教室
今から…、わたしはこの3年間の想いを伝える
きっと、叶わないだろう
なにせ彼は、"ずっと想い人がいる"そういう噂があるのだから
でも…、それでも、初めてのこの感情を
なかったことにはしたくない
鳴り止め、この心臓
大きく息を吸う
「…、あの…、今日は、
言いたいことがあって…、わたし、ずっとね、」
「待って」
「え、?」
「続きは、僕から言わせてよ」
いたずらっ子みたいな顔
こんな少女漫画みたいなことがあってもいいのかな…?
『時計の針が重なって、わたしたちの人生は重なった』
「僕と一緒に、未来を歩いていってくれませんか?」
突然のプロポーズ
別に彼とは恋人関係でもない
ただのクラスメイトだ
こんなの、驚かないはずがない
「え、あ、え、えっと…」
頭も舌も回らない
そんなわたしを見て、彼はふふっと笑った
「突然でごめんね。でも、本気だから…。本当はもっと仲を深めてから言うつもりだったんだけど。他のヤツにとられたくはないから、」
他のヤツ…
もしかして、最近学年で流行ってる噂だろうか
"わたしが他校の生徒に告白された"っていう…
だとしたら、ものすごく気まずい…
「あ、あの…、それ、実はちょっと尾ひれが付いてるっていうか…」
「え?」
申し訳なさで声が小さくなる
「それ、わたしのお兄ちゃんで…。たまたま道で話してるところ見かけた人が、たぶん勘違いして…」
なんて、恥ずかしいんだろう…
沈黙が痛い
「そっ、か。……なんだ、よかったぁー」
「え?」
戸惑うわたしに、彼は、いつもとは違う、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべた
「君の良いところは、僕1人が知ってれば充分だからね」
胸がドキっとした
こんなの、意識する…、
「じゃあ改めて、僕と一緒に、これから先もずっと、笑い合ってくれませんか?」
虹の架け橋
久しぶりに虹を見た
小さい頃は
「わぁ〜きれい…!」
なんて無邪気に喜んでいた
でも、今はただ
虹が架け橋となって、わたしをどこかに連れていってくれるんじゃないかって
ありもしないことを考える