「ところで」
「ところで?」
「糸といえば蜘蛛の糸、赤い糸のような糸とセットのイメージがある言葉もあれば、故事成句やことわざの『陰で糸を引く』や『糸目を付けない」、『一糸乱れず』、『一糸纏わず』なんかもあるね」
「なんかいろいろあるね」
「糸というのは人間の歴史と長く付き合いがありそうだね、言葉の多さからも。すごい多い方というわけでもない。犬や猫のほうが多いかな?」
「あー、犬や猫、男と女とかの方が多そう」
「そうだね。しかし、今後は減っていきそうでもある。比喩的な言葉も多いけどね」
「あー、身の回りすぎても糸の出番は少なそう」
「蜘蛛の糸はよく聞くといえば聞くけど、芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』が小説が有名だから有名な面もあるね。丈夫さと脆さ。蜘蛛の糸自体はスパイダーシルクとも言われていて、かなり丈夫なようで、構造が研究されていたりするようだけどね」
「あー、赤い糸は伝承だったっけ。なんか世界中にあるって聞いた」
「そう。これはなんか世界中にあるね。中国の伝承からみたいだけど。それと蜘蛛の糸は、以前は蜘蛛の巣に囚われるようなイメージがあったかもしれないが、芥川の作品以降、救いと因果応報も意味するようになったとも言えるね。芥川龍之介を教えなくなったら共通認識が失われてまた意味が変わるかもしれないね」
「赤い糸は逆にずっと赤い糸の運命の人のイメージがあるのと逆みたい」
「そうだね。だから運命の赤い糸をモチーフにしたり、使った物語はたくさんあるけど、蜘蛛の方は蜘蛛の糸より、まだ蜘蛛の巣がイメージされているんだろうね」
「蜘蛛の巣に囚われた蝶の赤い糸」
「ん?」
「混ぜてみた」
「まさかのホスト純愛もの?もしくはオレ様恋愛ものみたいな」
「いや、ハーレクイン・ロマンス」
「あー」
「ありそうでしょ?」
お題『糸』
「ところで」
「ところで?」
「今回のようなお題いは物理的に届くもの、つまり手紙のようなもの。そして物理的ではなく心理的なもの、つまり心が届く届かないといったものに別れるね」
「またメタな話をしてる。というかメタな話しかしてないような」
「まあ考えるだけでは相手に伝わらない、届かないということだね。思ったことは外に出す。これは好みの問題かもしれないけどね」
「まあね。でも外への出しかたは人によるんじゃない?」
「自分不器用ですから言葉にしないと分からない」
「そう?いつもペラペラ話してるんじゃない?」
「ココロトドカナイ、オデハナス」
「またなんかやってる」
お題『届かないのに』
「ところで」
「ところで?」
「今回は抽象的なお題だが、これは隠喩(メタファー)なのか抽象(アブストラクト)なのか難しいところだ」
「なにが?」
「おそらくだが、自身の記憶を脳内の何処にマッピングしていると考えている人は極々少数派だろう」
「よく分からないけど、いなそう」
「まあ、専門家の一部かな?ということだから、このお題の対象ではない」
「んー、そうかも」
「そして次に『地図の記憶』順番を逆にしたようなものだが主述も同じ意味としても使える。逆になっていることは地図から記憶を引き出せるという意味だね」
「逆引きみたいな?」
「そうだね。そして文字通りの解釈も二つは考えられる。記憶が空間化した「記憶の地図』と記憶にある地図の意味の『記憶の地図』、さらにいえばこれらの要素が複数あるもの」
「へー、いろいろと解釈ができるっていうことね」
「まあ、そうだね。小さなときに見た地図や写真がいろいろなものを思い起こさせるようにだね。だとするとこの地図は写真かもしれない」
「おー、なんか繋がった」
「ここで飲んでいるコーヒーが君との時間を結びつけるようにね」
「あー、食べられたお菓子があなたと結びついてるようにか」
「え?」
「え?」
お題『記憶の地図』
「ところで」
「ところで?」
「わたしのお気に入りのものが見つからないのだが」
「あー、マグカップなら割っちゃった」
「え?」
「それはもう、パリーン!と」
「あああ」
「そんなにショック?思い入れでもあった?」
「いいい」
「おんなじの買ってくるから」
「君がくれたマグカップだったのに」
「そうだっけ?でもまた私が買うなら同じじゃない?」
「う?そう言われれば」
「じゃあ、問題なしね」
「おおお、そうだ!一緒に買いに行こ。すぐに、今すぐ」
「まあ良いけど」
「ところで破片はどこかな?取っておきたいんだけど」
「キモっ」
お題『マグカップ』
「ところで?」
「ところで」
「もしも、というテーマはあれだね。不安を表しているね。
幸せならそう考えにくいわけの裏返しだね」
「なるほど」
「しかし雨が続くと鬱屈した気分になる。それもこういったお題を選ぶ要因かもしれない
そのお題から明るい話か暗い話かを創作するのはまた別の話だけどね」
「難しいぞ」
「しかし、このお題はあれだね。もし故人に対してならifの歴史ものだし、生きている人に対してならその人のことを無視した失礼極まりない考えともいえる」
「なるほどー、勝手に内面に触れるなってやつかな」
「それもあるね。まあ実在しない我々みたいな創作上の人物ならそれは作品次第というわけだけどね。あまりにも身勝手に思えるような話はそれはそれで人気がないというか、感情移入がしにくく、そのために理解しがたいというのはある」
「試しに入れ替われたらわかるのかな?」
「そうだね。だからこそ入れ替わりもののお話がそれなりにあるのだろうね。思考実験の一種といえる」
「やっぱり難しいぞ」
お題『もしも君が』