「ところで」
「ところで?」
「この時期になると燕をよく見かけるが、幸運が来るとかいろいろ言われたりしているね」
「見た目は幸運の要素はなさそうだけど。幸運……招き猫は開運だっけ?」
「幸運も開運も似たようなものと言うと怒る人がいそうだが、縁起物の理由なんて結構適当だからね」
「鰯の頭みたいな」
「それはメタ認知の部類だね。思い込みから生まれたものをうまく皮肉にしている」
「確かに鰯の頭ってなに?だもんね」
「鰯の頭といわれるとスターゲイジー・パイなんかを想像してしまうが、あれはあれで見た目のインパクトがすごいね。誰が始めたんだか」
「なにそれ?」
「ほら、検索すると出てくる。こんなやつだ」
「ん、げっ!」
「見た目のインパクトはあるだろう?」
「確かに。誰が作ったにしろ、その後もみんなが作ってるんでしょ?」
「そうだね。誰かが始めてもその後に誰も作らなかったら残らないわけだしね」
「ふーん。あ、幸運の話はどうなったの?」
「ああ、猫はネズミを取ったりするので実益から幸運というか開運のイメージになって、燕は人通りの多いところに巣を作るから商売繁盛のイメージになったという説があるね」
「ふーん。似てるようで似てない?」
「そうだね。猫は結果論で燕は因果が逆だね。人が多いから巣が作られる。つまり人がそれほどいなかったら、最初から巣は作られない」
「そうだね。でも幸せを呼ぶになっちゃうんだ」
「まあね。オスカー・ワイルドの『幸福な王子』なんか皮肉的と思ってしまうね」
「なにそれ」
「まあ、読んでみればわかるよ」
「ふーん。タイトルからは幸せそうなお話みたいだね」
「短いから読みやすいと思うよ。図書館にもあるだろうし」
「わかった」
お題『渡り鳥』
手に掬う。でも、そんなつもりもない。
お題『さらさら』
↓↓↓ふたつ目↓↓↓
「ところで」
「ところで?」
「この『ところで』から始まる冒頭もコンテクストの高さを明示する意図があるんだけど、それはわかりにくい」
「そうね。何がところで?なんて言われてもね」
「ということで、ちょっと説明を加えてみた」
「へー」
「メタ認知能力があると作者の意図みたいなものが見えてくるのでそれを目的にした文を書いたり書いてなかったりするので、もちろん読み手をかなり選んでいる対話文なわけだ」
「たまに出てくるメタ視点とかもそれなんでしょ」
「そう。自分たちの思考を外側から見ている感じだね。慣れるとそうでもないけととても疲れる」
「え、疲れる読みものを読ませてるの?」
「うーん、それが苦手な人はそもそも読めないから気にならないし」
「じゃあ、得意な人だったら疲れるってことじゃない?」
「あ、」
「もしかして、気づいてなかった?」
「いや、そんなことはない。と思う。多分。うん、多分」
「ふーん」
「でも変えるつもりはさらさら無いけどね」
「ふーん」
「あ、それで思い出した。今回のお題だけど、ダブルミーニングや場面で意味が異なったりする言葉も選んでいたりするね」
「今回のお題?」
「そう。今回のお題は『さらさら』だったからね」
「ふーん、あっ、さらさらか」
「君の髪の毛とかもね」
「急に褒め出した!」
お題『さらさら』
「ん?なんでそんなに怒ってるの?」
「ぷんすこ!って言いたくなるよ!」
「あれ、黙って最後の一個のプリンを食べちゃったこと?あれば消費期限だったからで捨てるより良くない?」
「!?、プリンじゃないよ!」
「じゃあ、この前のチョコレートケーキを二人で食べようとしてたやつ?あれも急用ができたとかじゃなかった?」
「チョコレートケーキの話でもないよ!」
「まあまあ、そんなに怒らず、この虎のマークの羊羹でも食べて落ち着きなよ。お茶入れてくるから」
「この羊羹はまさか……」
「はい、お待たせー」
「……ぷるぷる」
「ところで落ち着いた?」
「一緒に入っていたどら焼きは?」
「そうだっけ?それで最後だったと思うけど」
「これで最後?」
「そこに無いなら無いですね」
「ぷちん」
お題『これで最後』
「なるほど」
「なるほど?」
「いつものように今日のお題の分析だ」
「あー、お題の選び方とかメタな視点で見るやつね」
「そう。このお題には暗黙の要素が含まれていて、それは『初めて』というものだ」
「言われてみれば、初めてがないと物語性が少なくなりそう」
「もしくは『最後に』というのもあるが、どちらにしろ最初か最後の方がインパクトがあるからね。昨日も呼んだけど、明日も呼ぶとかはありだけど、その一瞬をという感じにはならないね」
「そうだね」
「ところで、君の名前を最初に呼んだのはいつだったっけ?」
「覚えてないのかー」
「いや、そのそういった興味はそんなになかったから」
「ふーん。わたしも覚えてないからおあいこだね!」
お題『君の名前を呼んだ日』
「ところで」
「ところで?」
「今日は雨が降っているが、お題も雨のネタだ」
「またメタな感じの話をしてる」
「そう、今日は二つの点でメタな話をしよう」
「前置きがあるのは珍しいね」
「メタな感じで言われてしまった!……えーっと、まず一つはこのお題というよりお題に含まれる『やさしい』と『雨』をそれぞれについてメタな要素を話してみよう」
「みよう!」
「ミラーリング相槌のような。で、まずは『やさしい』これは後に続くものとセットの連想なんだけども、文学的な意味でいろいろと書けるようにする。そのために文字を開く、つまり漢字ではなくひらがなにしている」
「漢字だと優しい、易しいとかもあるしね。表現の幅が広がるって意味かな」
「そうだね。『易しい』は使わないだろうけど、『やさしい』と『優しい』ではニュアンスが異なるからね。読み上げを使っていると違いがわからないかもしれない。それは申し訳ないかな」
「あー、なるほど。よく分からないけど」
「説明が悪かったかな。それで二つめが『雨音』の『雨』。これはこのお題を選んだ選者が雨の季節を明確に意識した。ということかな。スケジューラーに入ってたら時期もののお題カレンダーに組み込まれているとも言えるが、どちらにしろ雨を意識したってことだね」
「つまり?」
「みんな雨に降られてるんだよ」
「わたしたちみたいにね」
「そう。お話するのにちょうど良い音」
「音が染み込むみたいな音」
お題『やさしい雨音』