進む前から分かっていた結末。
百人いたら百人全てが避けるか引き返していくような、破滅へと続く一本道。
それでも私は、この道を選んでいただろう。
愛も、夢も、希望も、私を縛ろうとするもの全て。
私には必要ない。
テーマ「もしも未来を見れるなら」
何時ものようにキッチンで何かを作っている君。
しかし、包丁の音等は聞こえず、なのに君の片腕は忙しなく動いていた。
何を作っているのか、気になってカウンターから身を乗り出して君の手元を見やる。
何時もの小鍋と、しゃもじ、それから乳白色のゲル状の何か。
火にかけられた小鍋の中、プシプシと音を立てているゲルを、君がしゃもじで練るようにかき混ぜていた。
それは何、食べるもの?食べられるものなの?
そう、目で訴えかければ、私の視線に気がついた君が
「うん?」と首を傾げた。
テーマ「無色の世界」
桜なんて一年中咲いているのに、春のほんの一瞬だけ有り難がるのは何故かな。
テーマ「桜散る」
こんな大人でも、子供の頃は公園の砂場でドラゴンボールを探していたんですよ。
走り幅跳びの時はライダーキックもしていました、水泳の授業では犬神家も水死体ごっこもやりましたし、鉛筆をプラプラゆらしてキャッキャしてました。
私のような堅物でも、そんな子供時代があったんです。
一番遊んだのは、かくれんぼでしたね。
そう言って、ふわりと笑った君が、目の前から消えた。
ぜんぜん見つからないんです、みんな私を見つけられない。
真っ暗な街を君を探して彷徨う。
きっと君も私を――。
バッと飛び起きて、バクバクと鳴る心臓を鎮めるように深呼吸を繰り返した。
時刻は午前四時四十四分、なんだか嫌な時間だ。
まだ少し煩い心臓と背中に浮かんだ冷や汗を不快に思い、寝起きの重怠い足で洗面所へと向かう。
汗で湿った下着を取り替えて、ついでに用を足し、キッチンでコップ一杯の水を飲んで寝室に戻る。
しかし、さっき見た夢のせいで、もう一度寝る気にはなれなかった。
温い布団の中、モゾモゾと動いて君の隣へ。
(はやく朝にならないかなぁ)
そう思いながら、頬杖をついて君の幸せそうな寝顔を眺めた。
テーマ「夢見る心」
どうせ言っても伝わらない、身近な人間にすら分かってもらえない。
結局は自分だけが傷付いて、ただ疲れるだけ。
なら、口を閉ざして適当に時間を潰す方が得じゃないか。
さもしい人間ばかりが跋扈する、こんな世界で。
誰とも繋がらず、誰かに愛されることも、誰かを愛することもなく。
暗く凍てついた深海を揺蕩う白い海月のように。
テーマ「届かぬ想い」