しじま

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4/15/2024, 5:26:39 AM

 あの人は、何が好みだろうか?

物語を円滑に進めるための都合の良い現象。

 「一目惚れ」なんて、恋に恋する女子の思い描いたフィクションだと思っていたのに。

いつもどんなものを食べてる?

香水はどこのブランド?

お気に入りのお店は?

お休みの日は何してる?

猫と犬、どっちが好き?

 なのに最近は暇さえあれば、あの人のことばかり考えてしまう。

夢見る乙女の空想ならばご都合主義の連続で、あれよあれよと言う間に好き合う仲と成れるのだけれど。

 現実はそんなに甘くはない。

甘酸っぱい溜息一つ、午後も仕事だと行きつけの食堂を出て直ぐの角で。

出会い頭、よく知るスーツ姿のあの人とぶつかった。

テーマ「神様へ」

4/12/2024, 4:53:17 PM

 降りしきる雨の中、小さな子供が全身ずぶ濡れになりながら、白茶けた地面を素手で掻いていた。

楽しげに声を上げるでもなく、その年頃の子供には似つかわしくない無表情で、ただひたすらに。

 辺りを見回しても、親らしき人物は愚か人工建造物さえ見当たらない、辺鄙な山奥に子供が一人。

小さなその手では大して掘れないだろうに、擦り切れて血が滲み出した指先で、それでも子供は地面を掻き続けていた。

 なくしものかい。

子供の隣にしゃがみ込んで尋ねた、聞きたいのはそんなことじゃないのに、私の口から出たのは全く気が利かない、野暮な言葉だけだった。

子供はこちらには目もくれずに手を動かし続けて、黙ったまま一度だけ大きく頷いた。

 ぼくのおうち、みんな、もうないの。

『何処でも良かったんです、一人で生きられるなら、ね』

無感情な子供の声と、初めて会った時に君が発した言葉が何故だかダブって聞こえた。

テーマ「遠くの空へ」

4/11/2024, 3:37:58 PM

これからって時だったのに、早すぎるよ……

子供も産まれて、G1も勝って、ホントだったら

あの日、あの満開の桜の下で

砂の上じゃなくて、舞い散る桜の中を

駆け抜けていた、筈なのに。

テーマ「言葉にできない」

4/9/2024, 4:28:20 PM

 人間ならば誰もが一度は「不老不死」を願うだろう。

特に他者よりも秀でた才がある訳でも、腐るほど金を持っている富裕層でもないのに、何故か望んでしまう。

 死を忌避する、生物特有の本能だろうか。

それとも、飛躍的に進歩していく科学技術に心躍らせていたいからだろうか。

 確かに死ぬのは怖いし、生前は謎とされてきた現象や不可能とされていた技術が、自分の死後に解明されたり実用化したら、と思うと。

……うん、死にたくないかな。

テーマ「誰よりも、ずっと」

4/7/2024, 5:03:20 PM

 もうそろそろ冬物を仕舞っても大丈夫だろう。

明け方の寒さも和らいで、厚手のセーターよりも薄手のカーディガンの出番の方が多くなってきた。

出掛ける時もウールのコートでは、少し歩くだけで汗だくになってしまう。

 臭いがこびりついて取れなくなってしまう前に、セーターやコートを洗ってしまおう。善は急げ、だ。

セーターやコートを丁寧に一枚ずつ畳んでから洗濯ネットに入れて、浴槽に水を貯めて。

お洒落着用の液体洗剤を少なめに入れた冷水の中に静かにセーターやコートの入った洗濯ネットを沈めていく。

何度か優しく押して、水面から出てこないように重し代わりに水の入った洗面器を洗濯ネットの上に乗せた。

テーマ「沈む夕日」

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