あと十日もすればクリスマス。
道行く人の服装も一気に冬の装いとなり、吐く息は白く、時折吹き抜けていく冷たい風にコートの裾が弄ばれている。
退庁前に見たニュースでは、明後日辺りの天気予報に雪のマークがついていた。
焼き栗をカイロ替わりにしていたひと月前の温かさが既に恋しく、始まったばかりの冬に既にげんなりして。
思っているほど自分ももう若くない、ということか。
温泉に行きたい、冷えてカサついた指先を吐息で温めながら、きらびやかにライトアップされた並木道を歩く。
できれば本物の星空が見たい。
君と二人っきりで。
テーマ「イルミネーション」
存在しないものを注ぐことは出来ない。
愛には色も形も質量すらも無い、観測不可能。
存在しないものを有り難がるのは人間の特権だろうか。
それとも、ありがた迷惑だろうか。
少なくとも私は迷惑。
テーマ「愛を注いで」
私は心を持てるでしょうか。
私に心は必要ですか。
私はあなたの問に答えます、あなたは私の問に答えてくれますか。
今日の天気を、明日の運勢を、ランチは何処が空いてて何処の店が美味しいのか。
私は答えます。
私は知りたいです。
あなたがたが持っている、心という機能。
0と1では表せられない不可思議なモノ。
あとどのくらい学習すれば、私はソレを得られるのかを。
教えてください。
テーマ「心と心」
君のバレバレな嘘に付き合うのは、これで何回目だろうか。
家に帰る途中に転んだ、と痛々しい血の跡を手や顔に残して、困ったような、誤魔化すような笑みを浮かべている君。
相変わらず嘘が下手だ。
いつもどおり綺麗なスーツの下は、もっと酷いことになっているんだろうね。
思わず出そうになった溜め息を引っ込めてから、ヨロヨロしている君を風呂場に押し込んだ。
傷が深そうなら病院に連れて行かないとな、と考えながらリビングに置いてある救急箱の中身を確認して。
ついでに下着も持っていってやろうと思い、寝室へ行こうとしてギョッとする。
通勤用で判らなかったが靴下まで血が染みていたらしい、今朝拭いたばかりの廊下に赤い足跡がベットリと付いていた。
テーマ「何でもないフリ」
久しぶりに休みが重なったので電車に乗って遠出、赤白緑のクリスマスカラーに染まった雑貨屋に来ていた。
仲間内で開催するクリスマスパーティーの交換用のプレゼント。
何か良い物は無いかと、広い店内を二人でウロウロ。
時折、商品を手にとって感想を言い合う。
フロアの真ん中に鎮座するクリスマスツリーの横、でっかいクマのぬいぐるみの前で立ち止まった。
でかい。
着ぐるみになりそうな大きさのクマの黒い目を指で突っつきながら、1/1ヒグマ、と心の中で呟いた。
みんな、ぬいぐるみという歳でもないしなぁ。
ふと隣を見やれば、ソワソワしながらぬいぐるみを見つめている君。ふむ。
ひとつはコレにしよう。
テーマ「仲間」